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夏の樹  作者: 粥
30/64

三十

「宗介、おはよう」

「おう、おはよ〜」

「何してるの?」

「携帯弄ってただけだけど?」

「ゲーム?」

「いや、漫画読んでた」


朝、教室にて秋穂が話しかけて来た。

この前の『閉じ込められイベント(仮)』があった日から、俺達は仲良く?というか多少話すような関係になった。

最初みんなにマジかっ!って顔された。


「どんな漫画?」

「知らね、俺も読み始めたばっかだし」

「そう」


秋穂と仲良くなって分かったことがいくつかある。

俺以外のやつと喋る時は、全然喋ってない。あっちが喋り終わるのをずっと待っていて、返事をしても、


「うん」

「んーん」


と言葉と一緒に首を振るだけだった。

大体窓の外を退屈そうに見ている。一人が好きと言うわけではないのか、やたらと俺の席に来ては喋ったり喋らなかったりとやっぱりよく分からない。


でも最近そんな秋穂を放って置けない理由が分かった。


「那月に似てんだよなぁ...」

「何?」


思わず口に出てしまっていたのか、秋穂は俺の方を見て首を傾げた。

とりあえず何でもないと適当にあしらっておいた。


「宗介、今日一緒に帰ろ?」

「あ?まぁ良いけど。なして急に?」

「なんとなく、一緒に帰りたかった」

「へぇ〜良いよ別に。俺もどうせなら女の子と帰りてぇし」



放課後、俺と秋穂は二人で帰った。

ここで俺の家の帰り道というか、所謂通学路を紹介しよう。


俺の通学路はほとんどが海沿いの道だ。帰り道では波の音を聞きながら潮風に打たれて歩いていく。

もちろん学校を出る頃には夕陽が沈んでいる丁度良い時間。

何が言いたいかと言うと、綺麗な海に沈んでいく夕日を見ながら帰り道を歩くのだ。

正直何度も見て歩いているが全く飽きない。部活などで遅くなればただただ暗い海沿いの道を歩いているだけだが、部活の無い日に疲れて歩いている退屈な通学路のせめてもの癒しである。


今日はもちろんその道を秋穂と一緒に歩いて行った。どうやら秋穂は方向は同じだが違う道を歩いて居たみたいで、この綺麗な道を知らなかったらしい。


「綺麗...」

「だろ?やべぇよなぁ〜冬は沈むの早くてさ、少し急いでここに来ちゃうんだよ」

「分からなくもない」


さすがの秋穂もこれには感嘆の声が出ていた。

沈んでいく夕日を二人で見つめること10分、そろそろ歩こうと歩き始めて雑談も始まった。


「秋穂って、何か趣味はあんのか?」

「趣味?」

「そ、 バトミントンやってる以外イメージねぇから」

「甘い物、好き」

「甘い物...パンケーキとかそこら辺?」

「和菓子も」

「ははーん、なるほど全般な」

「宗介は?」

「俺もめっちゃ好き。和洋問わずどっちも」

「美味しい」

「美味いよなぁ〜」


甘いものの話をしていると段々と食べたくなって来てしまった。


「ちょっと寄りたいとこあっから、一緒についてこい」

「........?どこ?」

「まぁまぁ、着いてこいて」

「........(コクリ)」


俺は秋穂を連れて行きつけのたい焼き屋さんに向かった。


「たいやきだ」

「ここのたい焼き生地がモチモチしててめっちゃ美味いんだ〜食べたことある?」

「無い」

「じゃあ食ってみ!マジで美味いから」


俺はほとんど無理矢理秋穂におすすめのたい焼きを食べさせた。

秋穂は一口食べて咀嚼した。その間俺は自分の分を受け取っていた。


「どーよ?」

「美味しぃ」

「だ〜ろぉ!?あんこも美味いんだよ!チョコもうめぇんだ」

「チョコ?」

「そ、俺が買ったやつ。食うか?」


俺は自分の頼んだチョコクリームの入っているたい焼きを差し出した。ついでに一口齧ってある。


「いただきまふ」

「言い終わってから食えや」


いただきますの「す」の辺りで既にかぶりついていた秋穂は、そのまま味わって食べた。


「美味しぃ」

「だろ!ここ種類がいっぱいあってさ〜もしまた一緒に来れた時は気になってたやつ一緒に食べようぜ!」

「うん...」

(また一緒に来れる...)



その後俺と秋穂はたい焼きを食べ終わって、また海沿いの舗装された帰り道を歩いて帰った。


『へぇ〜それで、仲良くなったんだ?』

「いやぁ、美形って大抵性格悪いって思ってたから意外だったけど、何か仲良く出来そうだわ」

『わざわざ電話してまで伝えたい事か?俺今槐と一緒にご飯作ってんだけど』

「邪魔したのは悪かったよ。じゃ、槐ちゃんと美味しいご飯作ってろよ〜」

『はいはい。...え?あぁうん、今まだ繋がってるから言っておけば?』

「どしたぁ?」


帰ってから俺は那月に電話してみたのだが、今は大和さんとご飯作ってたみたいだ。

そろそろ通話を切ろうとしたところで大和さんに変わった。


『赤石くん?久しぶり大和です』

「お〜久しぶり〜相変わらずお綺麗な声をなさって」

『あはは〜ありがと。今度一緒に遊ぼうね〜それだけ伝えたかったの』

「あ〜嬉しいんだけど、俺彼氏持ちと遊びたくはねぇんだよなぁ〜」

『俺を含めた三人に決まってんだろバーカ』

「しししっ!わーってるよ。また今度な」

『じゃ〜ね〜』


そう言って通話を切った。

とりあえず仲良くやってるみたいで良かった。

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