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夏の樹  作者: 粥
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今日の朝は快晴で、槐はとても清々しい気持ちで学校へ登校した。

学校に着いてすぐに私は、長谷くんの席を見た。長谷は既に登校していて、いつもの様に肩肘をついて携帯を弄りながらめんどくさそうにしている。


「槐!おはよ」

「おはよ」

「何か楽しそうだね?」

「そう?良い天気だからかな?」

「あー!なるほど」


美咲は楽しそうに納得した。

危うく長谷を見ている事に気付かれるところだった槐は、ホッと一息ついた。


お昼休み、美咲は部活の友達と食べるという事なので槐はどこで食べようかと思案した。

槐は美咲以外の友達がいないので、一人で食べる事になる。


(庭行こ...)


槐は母の作ってくれた弁当を持って学校の中庭へ向かった。

天気が良く、暖かい庭はとても居心地が良かった。おまけに外に出てまでご飯を食べようと思うものは少ないらしく、人が全くいなかった。


「あ...」


否、前言を撤回しよう。誰かいた。

そしてそれは槐の知っている人間だった。

ていうか長谷だった。


「長谷くん...?」

「...大和さん?」

「ご飯、ここで食べてるの?」

「まぁ...」

「ふーん。...隣良い?」

「良いけど」


長谷は真ん中に座っていたので左にずれて右側にスペースを空けたので、そこに槐は座った。


「長谷くんはいつもここで食べてるの?」

「天気が良かったから、ここで食べてるだけ。いつもなら自分の席で食ってる」

「まぁ、よく見るよ」

「なんで聞いたんだ...」


二人は食べ進めながら話を続けた。


「長谷くんって、いつも家で何してるの?」

「は?何急に」

「気になったから、聞いてみた。答えたくないなら別に良いけど」

「...基本的には妹の世話してる」

「そういえば妹いるんだっけ、なんて名前?」

藍那(あいな)

「藍那ちゃん。可愛い?」

「可愛い、大人にならないで欲しい」

「溺愛してるね」

「家族だからな」


藍那の写真を見せてもらったり、さらに多くの雑談を交わして二人の距離は着実に縮まっていった。


「大和さんは、もっとクールな人だと思ってた」

「私も、長谷くんがこんな話しやすい面白い人だとは思わなかった」

「そうか?」

「そうだよ、というか私の方こそクールなんかじゃないよ。顔の作りがそれっぽいだけで」

「確かに結構かっこいい顔してる」

「それ男が言われて嬉しいやつだと思うな」

「ははっ、確かに」


長谷は初めて槐に笑顔を見せた。

あまりに長谷が可愛らしく笑うものだから、槐は驚いた。


(こんな風に笑うんだ...)


槐がじっくり長谷の笑った顔を見ているので、長谷は我に帰った。


「あ、悪い。嫌だったか?」

「え?あ、いや...嫌じゃないよ」

「そうか?でも今睨んでなかったか?」

「そういう風に見えただけだよ。ただ、初めて笑顔見たなって思って見てただけ。結構無表情なイメージだったから」

「そうか?いや、そうかもな。学校で笑う機会は無いし」

「え? 友達とかと喋ってて、笑ったりしないの?」

「友達いないしな」

「あぁ...」


槐は妙に気を使ってしまった。


「じゃ、じゃあ友達じゃないけど笑顔が見れたのは、むしろラッキーだったって事かな?」

「そういう事にしといて」


槐はプラスに考えて、その場を乗り切った。

昼休みも終わり、二人は教室に帰り各自自分の席に座った。自席でのんびりしながら授業が始まるのを待っていると、美咲がやって来た。


「槐〜ごめんね一緒に食べられなくて。一人で大丈夫だった?」

「うん、長谷くんと一緒にご飯を食べたよ」

「え?長谷くんって誰...?」


悲しいかな長谷の知名度はこのクラスにはないも同然であった。というか長谷の知名度はどこに行ってもない。

槐は長谷の席を指差して教えた。


「あ〜あの人かぁ。いつも一人だよね、友達いないのかなぁ?」

「さぁね」


槐は先程友達がいないと教えられたにもかかわらず、何故か美咲には教えなかった。


あともう少しで授業が終わるという頃、急に空がドス黒い雲に覆われ始めた。


(雨降りそうだな...午前はあんなに晴れてたのに)


その10分後、雨が降り始めすぐに大雨になった。


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