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夏の樹  作者: 粥
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大和さんに連れられて、俺は大和さんのバイト先に来た。

俺がバイトしたいと大和さんに教えたところ、彼女がバイトしているところに、『長谷くんもどうだ?』と誘われた。

急に行ってお願いしますというのも何か申し訳ないのでとりあえずは見学という事で客として来店した。


「じゃあ私はバイトだから、そこら辺の席座ってお茶でも飲んでててよ」

「ああ、頑張ってな」


俺はとりあえず長時間居座る事になりそうなので、邪魔にならない様に店の端っこの席に座った。

アイスコーヒーを頼んで大和さんや他のスタッフも仕事を見ていた。


(大体は接客か...まぁそうだろうな)


席まで案内して注文を受けて、料理が出来上がったら席まで持っていく。後は空いたテーブルの掃除くらいだった。


(酔っ払いに絡まれる心配もない、店も落ち着いてて、和気藹々としてる...。良いなここ)


俺はすぐにこの店が気に入った。

今は忙しそうだし、また日を改めて面接しにくることにした。

帰りに大和さんが店の外まで見送ってくれた。


「じゃあ、帰るわ。ありがとな、今度面接しにくる」

「ほんと?別に断っても良かったよ?」

「本当に気に入ったから大丈夫だって。それよりほら、仕事あんだろ?早く行きや」

「うん、バイバイ。気を付けてね」

「おー」


家に帰ると、玄関で藍那に抱きつかれた。


「おかえりおにーちゃん!」

「おぉ〜ただいま藍那、良い子にしてたか?」

「うん!あのね、今日ね、おかーさんといっしょにね、すーぱーにいったらね、おかしかってもらったの!」

「へぇ〜どんなやつ?ただいま〜」

「おかえり〜遅かったね」

「これ!これおいしーやつ!」


藍那を抱っこしたまま居間に行くと、母親が台所でご飯を作っていた。


「今日の夕飯何?」

「今日はお刺身、今はサラダを作っています」

「なるほど、何か手伝うことはありますか?」

「無いです、まだ時間がかかるので着替えて藍那をお風呂に入れて下さい」

「了解です、大佐」


訳の分からない会話を母親としたところで、部屋着に着替えてから藍那をお風呂に入れた。

藍那はお気に入りの湯船に浮かぶ人形を浮かべて遊んでいた。


「おにーちゃん、どうしてあいなたちはおふろにしずむのに、このこはぷかぷかうかべるの?」

「んー、水の比重よりその子の比重が小さいからだよー」

「わかんないよー」

「俺たちの方が重いからだな」

「あいなもだいえっと?すれば、ぷかぷかする?」

「藍那はダイエットしなくても可愛いよ〜」

「いまはかわいーはなしはしてないよ?」

「んぁ?もうお風呂気持ちくて何の話してるか分から〜ん」


もう頭がボーッとしてるので藍那の言葉が頭に入ってこない。お風呂から上がった時、藍那はちょっとだけ怒っていた。


テレビに夢中で箸の進んでいない藍那を注意しながら三人でテーブルを囲んでご飯を食べる。長谷家ではいつもの光景だ。


「そういえば、今日どうしてちょっと遅かったの?寄り道でもしてた?」

「うん、友達のバイト先を見に行ってた」

「友達!?あんた友達いたの?」

「いる、出来た最近」

「へぇ〜何て子?良い人?」

「大和っていう人、良い人だよ」

「へぇ〜大和。かっこいいね」

「?...あぁまぁかっこいいな」


何だろう、今すごい誤解を母親がしている気がしたが、気にしないでおこう。


「で、バイト先見に行ったって何?あんたバイトするの?」

「しようかなと思ってる」

「へぇ〜」

「藍那を迎えに行かなくて良い曜日にしようと思ってるんだけど、いいかな?」

「まぁあんたも年頃だし欲しい物の一つや二つあるでしょうから良いけど。気を付けなさいよ?無理しないように!」

「ん、分かってる」


母親は勉強よりもバイトよりもまず俺を心配してくれた。本当に優しい人だとつくづく思う。


「何のバイト?」

「創作料理屋っぽい、酒は出ないから酔っ払いもいないし、子供づれの客も来るらしい」

「へぇ〜美味しいの?」

「評判は良いみたいだけど」

「そっか〜じゃあ今度行こうかな。あんたのバイト姿も見に行きたいし」

「別に良いけど、なんか恥ずかしいな...」


母が授業参観に来るくらい恥ずかしい。いやまぁ来たことは無いんだけど。


ご飯も食べ終わったので、部屋で明後日の授業で小テストがあったのを思い出し勉強を始めた。


(xに代入...ん?いや、yか?)


問題に四苦八苦しつつも、頑張って0時まで勉強した。



次の日、少し寝不足の状態で学校へ登校した。


すると、後ろから大和さんが肩を優しく叩いて来た。


「おはよう、長谷くん」

「おはよう、大和さん」


毎回毎回こんな風に笑顔で挨拶されたら、その日良い事があるんじゃないかと勘ぐってしまうから、大和さんは不思議だ。

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