プロローグ
今まで書いてきた小説の再編したバージョンです。たいして読者がついていなかったので初見の人は是非読んでみてください!
戦闘は終わった。空は赤く染まり、平原に転がった骸達
には冷たい雨粒が落ち、朱に染まったそれらの顔を少しずつ洗い流して
いく。雨は血塗られた丘に落ち、多くの死体達の転がる戦場に落ち、
多くの人々の苦しみや恨み、みじめさなどを癒していった。
骸には個性など無い。そのどれもが苦しみ死んでいった・・・ある者
は若く、ある者は歴戦の戦者のように古傷を抱えて・・・
辺りには死体、死体、死体の山だ。極東から遠く、いくつもの空を
越えた、ここアフリカの戦いの場・・・そこは勝者と敗者の骸で
いっぱいだった。彼らは結集して戦い、あるものは勝ちながら倒れ
あるものは負けて死んでいった。
そんな死体でいっぱいの平原を二人の人物が歩いている。それは
一人の男と一人の女である。
男の名はアルフレッド・ランドロック。女の名は紅千波。
二人は共に極東からこのアフリカの地まで戦いに来て、辛くも共に
勝利した英雄だ。しかしこの世界大戦・・・・二人は古参の者として
最初から戦いに従事してきた。
第三次世界大戦。この「長く暑い夏」と言われた戦争は突如として
起こった。発端はまたしても例の赤い石だった。
力の石、赤く輝きを放つ魔法の石、一般には広く賢者の石と言われ
ている。もっとも力を持っていたグランドマスター、、、彼の持つ赤い石
が奪われると、三か月もしないうちにこの世は暗黒に覆われた。
暗い時代には、それを照らす明るい光が現れる。彼らの時代も例外
では無かった。新たに現れた、三人の英雄によって赤い石は奪還され
世界は再び、秩序を取り戻した。そうして三人の中のもっとも功績の
あった魔術師が、新しい赤い石の所有者に選ばれた。
紅千波もランドロックも、師匠である、とある魔術師に従って今回の
戦争に従事した。途中、もう駄目かと思われるまでに思えた、今回の
戦いも最終的には旧世界連合の勝利に終わった。アフリカの地で
の戦争はもっとも重要な戦争では無かったが、敵の中の一人のグラン
ドマスターが関わった重要な戦いであった。
戦いの終わった戦場・・・そこを二人は歩いていた。
「お前の部隊は何人、死んだ?俺の所は九人、部隊長である俺以外、
全員だ」
「私の部隊は六人だ。皆、勇敢だった。今頃は空にいるだろう。
ああ、本当に・・・・長い戦だった。煙草を吸うか?」
「ああ、禁煙していたがな・・・今日くらいはいいだろう」
そうして二人は煙草を吸った。煙は消えていった。頭上の赤い赤い
空に・・・・