タケシという男
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「タケシ、なんで近くに寄ると逃げるのだ?」
「いや、条件反射というか・・・。」
俺何したっけ?タケシの近くに居たのは、たしか中学2年の時、あのときは・・・・そうか、学校で流行っていたスカートめくりで滅茶苦茶怒られて、暇になった時だよな。
・・・代わりに誰が言い出したのか、ズボン下げが流行ったんだっけ、そうそう、しょっちゅう、タケシのクラスに行っては、タケシのズボンを下げていたよな。
時たま、ズボンといっしょにパンツまで下げて、良くタケシを泣かしたんだった・・・。
それも、教師の目に止まり、再び叱られて、今度は、くすぐりに行ったんだけ、タケシの反応が良くて、泣くまでやったな。さすがにそこまで教師は叱らなかったから、もう、しょっちゅう、タケシのところに行っては、泣かしてた・・・。
「そうか!これだな!」
俺は手をワキワキさせて、タケシに近づくと、襲い掛かる。うーん、なんでか、こういう時のタケシって、うまく抵抗できないっていうか。しない?んだよな。そして、いつも、やり過ぎちゃうんだ。
ガツ。
「調子にのんな!」
なんだ抵抗できるじゃないか。痛ったぁい。モロ、ワキ腹に入った。
「なんだぁ。抵抗できるじゃんよ。なんで中学のときは、出来なかったんだ?」
「さあ、でも、確かに中学2年の冬、だったかな、暴力を振るう奴に噛み付いたら、ピタっと暴力がなくなったよ。」
「へえ、タケシって、くすぐりに弱いんだ。」
今度はミラーが手をワキワキしながら、タケシに迫っている。ピンチ、タケシ。さあ、どうする。
案の定、今度はミラーにやられ放題、まあ、こういう奴だよな。女子供には、絶対手を上げられない。
俺はその姿を見て、つまんないことを思った、もしかして、タケシを虐めてた奴らって、タケシを虐めてたわけでは無くて、タケシを好きでイジってたとか?
さあ、俺も参戦しよう。それにしても、いい声で鳴くよなタケシって。癖になりそうだ。
「はははは、や、あん、や、め、・・・やん・・・あ、あ、やん・・・。」
・・・・・・・
どうも、やりすぎたらしい。こっぴどく、腕に『ファイア』で火傷を負わせ、『治癒』で治しを15回くらい繰り返し、やられた。もうすこしで、心が折れそうだった。
さらに罰として、ざる蕎麦を要求された。タケシが言うには、俺は料理人という職業を選択していて、レベルがMAXになっているそうだ。そういう料理人は過去に食べたことがある料理ならば、材料が簡単に見分けられ、まるで作ったことがあるかのように作ってしまうそうだ。
俺は、ざる蕎麦を思い浮かべながら、市場を歩き回った。お金は、タケシから貰った。蕎麦粉もあったし、塩も乾燥昆布も、辛味だいこんも見つかった。
・・・・・・・
調理場を借りると、大きなボウルに蕎麦粉と熱湯と塩で手早く練りこむ。うどんと違い、腕の力だけで練りこんでいく・・・・俺ってこんなに力強かったっけ?
蕎麦粉の塊を暫く寝かせて、その間に乾燥昆布から出汁を取って行く。昆布出汁はじっくり煮出せばいいんだっけ、こういった手順も予め知っているかのようにスラスラと出てくる。
料理人は楽だ。この能力を使い、暫く同級生の飯係でもするか。
ぐらぐらと湯気がもうもうと上がる鍋に、包丁で切った蕎麦を投入する。一瞬、鍋の中の温度がさがり、ぐらぐら言わなくなるが、直ぐにぐらぐら言ってきた。
1回差し水をしたあと、再びぐらぐら言ってきたころに、さっと、網に麺をあける。あとはゆっくりと流水で締めるだけだ。
・・・・・・・・・
「どうだ、タケシ?」
「うん、美味しいよ。日本の蕎麦屋にも負けないよ。」
俺はその言葉を聞き、満足した。
できれば、ずっと、ほのぼの路線で行きたいと思っております。
ざるそばは、現地の人々には不評で、後世には伝わらなかった模様。