下調べは重要
「…ファッ!?」
目覚めた。
自分の部屋だ。
本物の体を椅子型VRMMOシステムに固定していたバンドが緩む。
キャラと大差があった訳でもない普通に立てるはっ。
「うおっ、危なっ。
あれ?
………
あ、足か。」
自分の両足が在るのはゲーム内のことだ。
現実では膝から下と肺は右にしか無いのだ。
部屋の隅に放り出してあった義足を拾って装着する。
この分だとゲームと同じように運動してしまうかも知れない。
肺が片方しかなくても安静にしていれば大きな問題は無いが、普通の人に比べてすぐ息が乱れなかなか戻らない。
ゆっくりを心掛けなくては。
「はあ…
……………
…夜食でも食うか。」
時計を見れば20時15分だった。
向こうでは六時間程か。
カップ麺でも食おう。
腹が減ると思考も悪い方へいきやすい、腹一杯になれば気分も良くなる。
「ズズズズズズッ!」
カタカタと解析班さんの掲示板に書き込む。
36.名無しの解析班二号
領主軍の初日は訓練で終わります。
連携スキルとか陣形スキルは必須ですね。
無くても入れるけど一兵卒から上がるのは難しくなります。
まあ訓練でも少しはレベル上がるからそれで取ればいいかと。
37.名無しの飲兵衛
解析班さんサンクス。
しばらくは訓練を頑張るよ。
38.名無しの権兵衛
助けて!
解析エモン~
蜥蜴族の【鱗鎧】【長柄武器の才能】【急所攻撃の才能】【槍の天才】【投げ槍の才能】【狩人の眼】【見切りの才能】【勘】【槍術】【投槍術】【急所攻撃】【パリィ】【採集】【調合】【旅人の心得】【応急手当て】で冒険者になったけどキャラ作り直すかなと思うんだ。
何かオススメ種族とかアビリティとかあるかな?
39.名無しの解析班二号
まずどんな事したいのさ。
40.名無しの飲兵衛
索敵が狩人の眼しか無いwwww
狩人の瞳ならそれだけでも何とかなるけど……不意打ちでもされた?
移動能力が無いのも不味いって解析班じゃなくても分かるwww
41.名無しの権兵衛
ソロで旅人風のロールプレイでいきたいです。
42.名無しの解析班二号
ソロで旅人なら索敵、戦闘、逃走、金策、治療が出来ないと。
出来れば自給も出来ると旅がし易い。
とりあえず蜥蜴族は膝が前でなく左右に向いている上、パラメーターでも遅いので旅はし辛いです。
43.名無しの解析班三号
遠距離攻撃は近接攻撃より難易度高いから、リアルで経験者ならともかく初期は使いづらいよ?
44.名無しの権兵衛
パラメーターなんてあったんですか?
45.名無しの解析班二号
表示はされていませんよ。
ただ比較を重ねるとあるとしか考えられません。種族毎のパラメーターもおおよそ分かりました。
46.名無しの飲兵衛
初w日wでwかww
47.名無しの解析班一号
ソロ旅人なら獣人系の猫族馬族鳥族、甲殻系の飛虫族、精霊系のエルフ族ドワーフ族、魔人系の鬼族巨人族がオススメ種族かな。
ぬことエロフは索敵系と戦闘逃走を兼ねた隠密系が習得し易い。
特にぬこの不意打ちが決まれば同格はまず仕留められるし、エロフの索敵は群を抜くからね。
ぶんぶん丸とカトンボは飛べるから。
アクロバット飛行ならカトンボ、航続距離や最大速ならぶんぶん丸。
荷馬とアル中もぐらとシャア専用アル中とアンドレは荷物を大量に持てるからね。
荷馬は街道や平原なら馬車を引いて交易ができる。
アル中もぐらとシャア専用アル中は怪力だから重鎧を着たまま旅できる剛の者。
アンドレはデカい。
以上。
48.名無しのお豊
一号さん、相変わらず長文乙です。
私の場合はまずはともあれ【反応】や【集中】といった系列がオススメアビリティです。
49.名無しの飲兵衛
思考加速するアビリティだな。
反応はパッシブ、集中はアクティブだ。
これがあるって事は高レベルの戦いだと通常の人間の反応だと間に合わないなんて事があるかも知れんな。
50.名無しの解析班一号
現実と同じく遠距離攻撃は脅威だから対抗策は必須だ。
その点、隠密系は気づかれずに近づけるからいい。
気づかれたら?
諦めろ。
どんな作戦でも相手がそれを上回ったら失敗するのは当たり前。
後スタート地点によってオススメ能力や技術は変わるから街の名前を。
51.名無しの権兵衛
エスパルティアです。
52.名無しの解析班三号
確か街の周りの草原では武装したゴブリン達と狡猾な草原狼達が主な敵。
で、草原を越えると森林か山岳にでる。
人類側の森はゴブリン達の武装が良くなる程度だけど、外側の森はサイクロプスとオーク達と時にはオークに率いられたゴブリン部隊、運が悪いと飼い慣らされたサイクロプスが部隊にいる場合もあるという超強化。
山岳は飛行するハーピー達と、雷魔法と突進を繰り出すブリッツゴート、鷲と馬の混ざったピポグリフ、さらにワイバーンやグリフィンの目撃者も多く、稀に犠牲者もでる。
アラートバイパーとカナードイーグルは周辺部一帯に生息。
夜になると、草原ではブラックドッグ、山岳では梟と馬の混ざったピポオウルや黒いワイバーン、森では夜叉猿や百年世界蛇、夜の魔物はブラックドッグが数回倒された以外は未だに撃破の情報無し。
因みに夜の魔物は夜限定ではなく、夜になると行動範囲が変わって人前に現れる。
敵情報なら任せろー
(`・ω・´)バリバリ
52.名無しの飲兵衛
エスパルティアは外側と接しているのかwwwwwww
鬼畜ww
武装ゴブリンが最低レベルの敵かwww
出会っちゃいけない奴に先に気付いて逃げる能力は必須だね。
53.名無しの解析班四号
エスパルティアは地理的に見ると人類にとって天然の防壁を構成する山脈巨神の骸に三つある切れ目の一つで、丁度王都の真東に位置します。
この街を挟んで蛮鬼の領域があり、蛮鬼の侵攻を受け止めてきました。
巨神の骸の切れ目の反対側には蛮鬼の砦があり、偵察や牽制の兵だらけです。
要するに戦争状態です。
蛮鬼との本格的な戦争イベントが予想されます。
巨神の骸はその名から上部には巨人がいると考えられています。
エスパルティアは強力な敵が多いので死にやすいですが、大幅レベルアップのチャンスでもあります。
外側に接した街としては素材面で劣りますが、蛮鬼はスキルやアビリティの成長が早いので強くなりたい人が集まるはずです。
そういった街なので領主のレオニダスは屈強な武人であり蛮鬼との戦争で鍛え上げられた優秀な指揮官でもあり、その配下は外側と面した街の中でも最精鋭であると言われています。
そんな街なので戦闘重視のプレイヤーに優しいです。
以上、地理、政治担当より~
54.名無しの解析班二号
とりあえず飛行する敵や遠距離攻撃をする敵に対する対抗策として簡単なのはこっちも遠距離攻撃を持つことです。
飛行はとても困難ですからね。
またエスパルティアの敵はとても強力な部類なので真っ正面から戦うのは1対1にしましょう。
投げ槍は弾数が少ないのでオススメ出来ません。
槍の天才も槍の才能を育ててから進化させた方が最終的に強力になりますし、初期は大差ないので他の能力に回した方がいいです。
パリィも強力ですが防御方法が打ち払いに限定されてしまい難易度が高いので、まずは武器防御から慣れていく事をオススメします。
調合では毒物も作成出来ますので強敵にどうでしょうか?
応急手当ては普通の手当てでも良いのでは?
後、テイム等の支配系やインタレクション等の交流系は従えたり契約したりする対象次第で他のスキルやアビリティの代わりにもなります。
55.名無しの解析班一号
キャラメイク自体のアドバイスとしては複数種族のハイブリッドは避けて純種がいい。
マザークリスタルの中でレベルアップ処理する時にアビリティやスキルもいじれるから。
例えばぶんぶん丸が鱗鎧を取ればちゃんと鱗が生える。
小さいな一枚から全身を覆って竜族ごっこまで変えられる。
でも一回取ったのを取り消す事はできないから三回保留にしてから実行すること。ついでに以外と気付いていない人が多いけどランダムはポイントの増減がない範囲でのランダムで、割と、と言うかかなり自然な姿になる。
顔いじろうとして挫折していたら試してみるといい。
カケラを何処に配置するかも決められる。
デフォだとカケラは心臓と背骨の間に配置、カケラを破壊されると即死で回収も不可能だから、体内に配置して守るのは分かりやすい。
だけど体内に配置すると抉り出さないと回収できない。
体表は簡単に切り出せる。
ソロでいくつもりなら回収しやすさより体内に隠した方がいいかな。
名無しの権兵衛
ありがとうございます。
解析班さん乙です。
他の人も助かりました。
「ズズズズズズッ!
ふう…」ちょうどカップ麺も食べ終わった。
次のキャラは…猫族の暗殺者って方向かな。
骨董品のゲームである鉄歯車で固体蛇や裸蛇を操作した事もあるし。
しかしアビリティやスキルは後から進化させられるのか、後から追加するだけだと思っていた。
武装はメインの短剣二刀流とサブの短弓またはメインの長弓とサブの短剣二刀流かな?
いや毒も考えると短弓で十分か。
でもスナイパーってのも好きなんだよな。
毒と言えば、出来ればあの呪毒も扱いたいけどあれは錬金術か魔術師の分野かな?
毒専門のスキルなら使えるかな?
いや、薬も必要だ。
…回復魔法は…器用貧乏になるか。
どうせ魔法は詠唱だの魔法陣だので一人では使いにくいだろうし。
後ランダムだっけ?
正直現実と同じだと現実を思い出す。
廃人のようだが、五体満足をかつてそうだったように普通に受け入れて幸せな気分の時に現実と同じ姿だと自然と「でも実際には無いんだよなあ。」と考えてしまう。
この事に関しては現実とはかけ離れている程いい。
……………
……………
……………
ふと時計を見ればすでに21時を過ぎている。
ログイン自体はできるが俺の参加しているセッションはもう終わっている。
あの部屋でのキャラメイクはできるかも知れない。
セッションより少し早めにログインしていたし。
試しに現想世界にログインしてみよう。
「はっ!」
急激に意識が明瞭になり、周りを見ればすでにあの白一色のブロックでできた部屋だ。
ポーン
「貴方は現在行われているセッションのアカウントを持っていません。」
「貴方の参加可能なセッションは明日午後八時からです。」
「新しくアカウントを購入して現在のセッションに参加しますか?」
「いや、キャラメイクをしたいんだけど。」
「キャラメイクを始めます。」
「現在のキャラクターを初期化しますか?」
「うん。」
「キャラクターを初期化しました。」
「先ずは種族を選んで下さい。」
「種族には獣人系の猿族犬族猫族馬族蜥蜴族鳥族、甲殻系の甲虫族飛虫族、精霊系のエルフ族ドワーフ族フェアリー族セイレーン族、魔人系の鬼族巨人族魔族があります。」
「猫族で。」
さて、先ずはアビリティか。
猫族を選んだので4ポイントを使い残りは16点ポイント。
【狩人の瞳】【急所攻撃の才能】は猫族に始めからある。
【猫耳】1ポイント
【猫足】2ポイント
【反応】3ポイント
【運動神経】2ポイント
【両手利き】3ポイント
【勘】1ポイント
【見切り】1ポイント
【隠密の才能】2ポイント
【バランス感覚】1ポイント
を選ぶ。
猫耳は猫族を選んだ時点であったが【猫耳】を選ぶと自分で動かせるようになった。
さらに【猫足】を選ぶと手足の指に肉球ができ、指が少し大きくなって猫に近づいた。
【猫爪】もあったが武器で戦うつもりなので取らない。
他は特に外見の変化はない。
次はスキルだ。
コンセプトは忍者でいこうと思う。
忍者となればやはり投擲は外せないが… 弓も使いたい。
弓道部の練習を見てかっこいいと思う質なのだ。
悩んだあげく投擲を諦めた。
【採取】1ポイント
【調合】2ポイント
【旅人の心得】3ポイント
【手当て】2ポイント
【短剣術】2ポイント
【隠密】2ポイント
【二刀流】3ポイント
【急所攻撃】3ポイント
【弓術】2ポイント
さて、これで合計20ポイント。
さて、後はランダムで容姿を決めよう。
「ランダム。」
「ランダム、実行します。」
何だか男らしいと言うか渋いと言うかとにかく濃い顔になった。
体も数値的には変化がないが大分逞しく、古参兵といった具合に傷だらけだ。
そして一部千切れた猫耳と筋肉で少しゴツゴツした尻尾を備えている。
どうしてこうなった。
「ランダム。」
「ランダム、実行します。」
「ギャアアアアア!!」
皮膚は人なのに骨格は猫という、正直直視に耐えられない容姿(凶器)が生み出された。
皮膚が人とはいえ毛皮と人肌の中間かと考えるほど毛深い。
骨格も人の面影があるが、だからこそ酷い。
「な、な、どうしてこうなった…」
「ランダム処理を実行しました。」
「猫族に該当しないものを除外しました。」
「ランダム処理によってカテゴリー【敵と間違えそう】が選ばれました。」
「カテゴリー【敵と間違えそう】からランダム処理に従い【人と猫を足して二で割ってみた】が選ばれました。」
「以上が履歴です。」
「いや、どうしてこうなったってのはそういう事じゃなくてだな。
……………
……………
カテゴリーに猫族の忍者に該当するのある?」
「該当なし。」
「似たようなのは?」
「カテゴリー【猫耳くのいち】が該当します。」
「開発者ェ……」
現実とはかけ離れている程いいと思っているが流石に女になるのはなぁ。
いや、画面上のゲームではよく女キャラを使っていたけど。
なぜかと言えば、大抵のゲームでは一番よく見るものの一つは操作するキャラの尻で、どうせなら男のケツを見るより女のお尻を見る方がいいからだ。
でも中身が男だとちゃんと言っていればネカマだ何だと面倒事にはならないだろう。
うーん…
「性別をランダムで選んで。」
「女性が選ばれました。」
「うおおぅ……
まあ、ゲームだし楽しきゃいいか。
じゃ猫耳くのいちの中からランダム。」
運試しだ。
一発でいこう。
「カテゴリー【猫耳くのいち】、ランダム、実行します。」
「おおっ、いいじゃん。」
黒く艶のある毛とジト目が特徴的な美女だ。
結構ボンキュッボンな体型、肌は白いがあくまでも黄色人種の範囲内だ。
この巨乳、バランスをとるのに始めは苦労するかも知れない。
でもこの顔で、さらに素顔をマフラーやフードや仮面で隠していたらかなり忍者っぽい!
まあ、要するに猫耳くのいちのカテゴリーのデザイナーはいい仕事をした。
結構嬉しい。
自分が男であろうが女になろうがやっぱり美人がいいのは当たり前か。
キャラメイクも終わったし、明日に備えてログアウトして寝よう。