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初戦闘

所々にある灌木の陰に隠れて様子を伺う。


大型犬ぐらいのサイズのウサギだ。


地面が盛り上がった所に巣穴があり中から時折、土が掻き出される。


目の前の群れは大人が三匹と子供が五匹。


距離はだいたい20メートルだ。


灌木の陰で初期装備の錆びたジャベリンを構える。


葉の隙間から狙うウサギを選ぶ。


一番手前のウサギを狙う事にする。


落ち着くためにため息を深くしたその時、ウサギの耳がピクリと動いた。


そのウサギは踵で地面を打ち、音を鳴らす。


それを聞いたウサギの群れの大人は周囲を警戒し始める。


踵で打つ音は大した音では無いが、地面を伝わってウサギの聴覚ならかなり離れていても聞き取れると聞いたことがある。


やばいな、気付かれたか?


その瞬間、今隠れている灌木よりウサギに近い灌木から茶色い肌の二人の小人が飛び出した。


「バルギャギギ!」

「ギョボドゥ!」


ファンタジーで初期に出て来る小人だし、たぶんゴブリンかな。


二股になった枝に石を括り付けた手斧を手に持ったゴブリンが突撃し、木と蔓でできた短弓を持ったゴブリンが矢を放つ。


ウサギはゴブリンが出てくるや大人も子供も巣穴に駆け込む。


だが大人の一匹の足に矢が当たった。


手斧ゴブリンは転んだウサギが立ち上がる前に手斧で頭を打ちのめしてとどめを刺した。


ちょうどいい。


不意打ちで一人、タイマンで一人、ウサギはタダで貰える。


飛び出すと狩りの成功を喜んでいるゴブリン達の内の短弓ゴブリンにジャベリンを投げる。


ついでに叫んで威嚇する。


「頭ぶっ飛ばして逆ゆっくりにしてやる!」


叫ぶのは投げるのとほぼ同時だし避けられる所か反応して動きが止まるから効果的なのだ、決してテンションが上がって勢いで叫んだ訳では無い。


距離が20メートルはあるとは言え、【投げ槍の才能】【狩人の眼】【勘】【投槍術】の効果か短弓ゴブリンの脇腹にジャベリンが突き刺さった。


「ギョエエェェェ!!」


「バギィ!

ギョボドゥ!」


アレか、ギョボドゥってぶっ殺すとかやってやる的な意味なのかな?


手斧ゴブリンがこっちに走ってくる間にもう一度ジャベリンを短弓ゴブリンにぶち込む。


今度は本当に頭を狙うので【急所攻撃の才能】【急所攻撃】の効果も上乗せされるはずだ。


まだ距離があるし手斧ゴブリンは棚に上げて投げる事に集中する。


《アーツ・狙撃者の心構えlevel1が発動》


アナウンスも気にならない、手斧ゴブリンが妙な動きをしたのも気にならない、只短弓ゴブリンの頭に命中させる為に。


肌で風を感じ、目で距離を測り、投げる。

狙い通り頭に当たった。


不思議なほどだった集中が終わる。


なるほど、こういう風に条件を満たすとアーツが発動するのか。


確かにやれば分かる、だな。


うん、細かい事はともかく上手く当たったな!


「大当たりだガッ…クッ…つぅぅぅ…」


いつの間にか投げたのか手斧ゴブリンの手斧を右の二の腕に食らってしまった。


【鱗鎧】がスケイルアーマーほどの防御力を発揮するとは言え、初めての実戦だ。


まったく育っていない能力値と【鱗鎧】では一応は捕食者であるゴブリンの一撃を無効化する事は難しい。


手斧は直撃した部分の鱗を割っていて、肉に食い込んでいる。


痛い、骨折した時程じゃないがそれでも痛い。


手斧ゴブリン改めゴブリンはうずくまる俺に近づくと無理矢理手斧を俺から抜いて晴れて再び手斧ゴブリンになった。


当然無理矢理抜いたら痛い。


痛ければむかつく。


原因も幸い目の前だ。


「クソッ調子に乗りやがって!!

うおっ!

フゥン!!」


槍は右腕に食らった時に落としたので最後のジャベリンで代用しよう。


手斧ゴブリンの一撃を【見切りの才能】と【勘】でジャベリンで手斧の刃では無く柄の部分を選んで受け止める。


恨みを込めて腹を蹴って転ばせると足元の槍を取った。


格闘系の能力を持っている訳では無いので手斧ゴブリンはすぐに立ち上がってきやがった。


こっちは槍だ。


長柄武器の最大の利点は近接武器の中で最長のリーチによって先手を取れることだ。


最良はこの一手で殺す、駄目でも足は止めさせる、後は死ぬまで突く。


《アーツ・一の突きlevel1が発動》


「くたばりゃあ!!」


さっきのような集中は無いが案山子を刺した時とほとんど同じ動きでしかしはっきりと分かる程より速く力強く正確に貫く。


手斧ゴブリンの喉に体重の乗った穂先が突き立つ。


手応えからして今度は中の芯、つまり骨の真ん中を捉えた。


すぐに手斧ゴブリンは少し痙攣してから死んだ。


右腕がどんな具合か見てみる。


斧が突き刺さっているショッキングな状態だったせいで実際の感覚以上に痛がってしまった。


今更ながら冷静になれば我慢できない程じゃないな。


協会で貰ったノートを見る。


LP■■■■□

SP■■□□□

MP■■■■□

出血level1

(感染level1)

【鱗鎧】【長柄武器の才能】【急所攻撃の才能】【槍の天才】【投げ槍の才能】【狩人の眼】【見切りの才能】【勘】


SPとMPは見ている間に回復し始めている。


LPと状態異常を回復させる為に初期装備の袋の中から包帯とアルコールの強い酒を取り出す。


酒を傷口にかけてから包帯で圧迫して止血する。


ノートを見ると感染と出血が消え、LPが回復し始めた。


手当てが終わると自然とさっきの戦闘に思考が向いてしまう。



手斧を投げられたのに気づかなかったのはアーツの効果であろう不思議な集中のせいかな。


狙撃者の心構えは本当に狙撃に集中してしまう。


不用意には使えない、か。


一の突きは名前からして最初の一撃を強化するのかな?


それか全身を使った突きを強化するのか?


案山子の時は発動しなかったのは何故?


敵じゃないと発動しないのかな。


とりあえずウィキで聞いてみるのもいいかもしれない。



さて獲物は解体しなければならないらしい。


【採集】【調合】【旅人の心得】によればウサギは普通に毛皮と肉を取るべきのようだ。


ゴブリンは牙と大腿骨が売れる。

牙は魔法の触媒として使えるらしい。


幸い【旅人の心得】は解体まで効果がある。


まあ解体とは言うが、大分省略されているが。


そこそこ良い収穫だったのでは?


意気揚々とエスパルティアに帰る。


もちろん草原の灌木等の物陰には注意する。


ゴブリンが待ち伏せをしてくる事は分かった。


何か動いた気がした時は試しにジャベリンを投げ込んだ。


結局当たりは一つだけだったし、隠れていたのは短弓ゴブリン一匹だけだったが。

けど、二匹かそれ以上の数に不意打ちされたらかなりの確率で一瞬の内に詰むだろうし。


ちなみにゴブリンは一人では無く一匹と数える事にした。


隠れていた短弓ゴブリンもバラして持って帰る。




エスパルティアについた。


出て来る人は俺が出る時と同じで素通りだが、入る人は荷物検査が必要のようだ。


「この台に荷物を置け。

何か取り扱いに注意の必要な物は?」


入るは今の時間は少なく、列にならばずに済んだ。


ダルそうな門兵の指示に従う。


「ガラス製の物があるな。」


「おう。

割らないようにか。

それぐらいは心得てるよ。

……………

………ん?

む。

おい、養生鈴蘭の根と黒花紫藍の花は有毒で許可が必要だ。

薬師の証しを持つ奴に渡すまではこの貼った紙を取るな。

薬師の証しも書類も無く持っていたら罰金刑だし、なんかあったら最初に疑われる。

次からは最初に言えよ。

タグって事は協会のもんだろう?

自由に使いたけりゃ協会で薬師の証しを貰え。


「ああ、分かった。

済まんな。

なんせ初めてでね。」


「ああ?

クリスタリアか?

協会で講習会やってなかったか?

なるほど、すっぽかして外行ったのか。

明日もあっから行け。」


「…ホント手間かけたな。」


有ったのかそんなの。


気づかなかったのかな?

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