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キャラメイク

椅子型のVRシステムに座り込む。


肘掛けのボタンを操作し起動すると、ギューンという音と共にランプが点灯し、動かないように手足がバンドで固定されていく。


さあ、いよいよだ。



どんな世界だろう?





どんなキャラに










「…ん、ふあ~~。」


再び目覚める。


すぐに眠気も消えて周囲を見れば、真っ白い正方形のブロックでできた部屋だ。



VR自体あまり慣れていないからか、正直さっきの眠気が眠りについたからなのか眠りから覚めたからなのか分からなくなってきた。


VRではなく、どこかの部屋で目覚めたと言われても信じられる。



正方形の部屋の一方の面のブロックが突然動き始め、アスレチックな通路が出来た。



同時に全てのブロックに矢印が現れて通路の奥にある赤いブロックを指している。



ポーン


「貴方の脳波と対応するためにデータが必要です。このアスレチックコースをクリアしてください。なお、現想世界の初期身体能力に慣れるという目的もありますので、満足するまで運動してください。」



言われた通りに身体能力を確かめながらアスレチックコースを進む。


どうも腕の力だけで体を上段に持ち上げたり二メートル近い幅を飛び越えたりできるようだ。


もはや現実ではまともに運動できない俺からすれば強化だが、人によっては弱体化していると感じるかもしれない。


総合すると身体能力は体を普段から鍛えていれば普段に届く範囲内といった所だ。


久し振りの運動を楽しむ。


左足がある事や呼吸を気にしなくて良い事だけで凄い解放感だ。


動いている内にズレが減っていった。



ポーン


「ありがとうございます。対応処理を終了しました。」

「キャラメイクに入ります。」

「種族を選んでください。選択可能な種族は獣人系の猿族犬族猫族馬族蜥蜴族鳥族、甲殻系の甲虫族飛虫族、精霊系のエルフ族ドワーフ族フェアリー族セイレーン族、魔人系の鬼族巨人族魔族、以上です。」



「…多過ぎ、何か説明ないのか?」


思わず呟く。


「猿族は可もなく不可もなくといった具合です。アビリティ【多才】があるのでどのような道も目指せる万能ですが、ナンバーワンには絶対に届きません。しかし手の多さを自分のものとし使いこなせればオンリーワンとなれるでしょう。巨大で複雑な社会を持ち、【多才】で、獣人らしく良く増え、道具を扱う事に長けたこの民族は嘗ては大陸全体に様々な国家を築いて繁栄していました。

必要ポイントは2です。」


「犬族は最前線を生き抜く優秀な戦士の素質を生まれながらに持っています。しかし最大の特徴は【遠吠え】系のアビリティです。城塞の防衛戦や魔物の巣の攻城戦、軍や大群との野戦において欠かせません。高レベルの【遠吠え・鼓舞】や【遠吠え・威圧】の効果は戦場全体を対象とし、救援要請や伏兵発見の報告も犬族同士なら【遠吠え・伝達】で良いのです。これらは基礎であり、さらに先もあります。犬族が本領発揮するのは連携です。戦闘以外としては遊牧や船乗り等連携プレーが重要視される職に向いています。嘗ては部族単位で狩猟採取の生活をして大陸全体に広がっていました。

必要ポイントは4です。」


「猫族の肩は骨で固定されておらず、筋肉と腱によって繋がれています。そのためログインとログアウトの際に10分の体操を奨励しています。猫族は暗殺者やスカウトとして優れ、真正面からの戦闘でも上位に位置します。生産は現地で罠や矢等の消耗品を補充する程度です。また、アビリティ【急所攻撃の才能】と【狩人の瞳】を持ちます。スキルの【急所攻撃】とアビリティの【急所攻撃の才能】は効果が重複する上、【狩人の瞳】は急所発見に役立つので、強力な敵も一撃で葬る可能性があります。嘗て猫族は家族単位で広大な土地を旅をし続け、狩猟採取の生活を送っていました。

必要ポイントは4です。」


「馬族は選んだ場合はログインとログアウトの際、肉体の変化に対応するために30分の体操の義務があります。馬族はケンタウルスの姿をしていて体格が大きいので様々なボーナスが入ります。しかし狭い場所では動きにくいです。足が四本あり、アビリティ【馬力】があるので体格を揃えても破格の積載能力と速度を持ちます。全身をクロスアーマーの上からフルプレートアーマーで守り、カイトシールドとランスを構えた馬族の突撃は鎧どころか陣形すら穿つ事でしょう。しかし実はその場での旋回や後退が苦手で背後の敵には蹴りがあるものの前進を封じられたり乱戦に持ち込まれた時は能力は平均以下です。嘗ては遊牧をさながら必要なものは農耕民族から奪う生活をしていたためか、生産者としても平均以下です。

必要ポイントは8です。」

「蜥蜴族は足の骨格が人間と異なるのでログインとログアウトの際に10分の体操を奨励します。蜥蜴族はアビリティ【鱗鎧】と【長柄武器の才能】を持ちます。【鱗鎧】の効果により素の肉体のままでスケイルアーマー級の防御力が全身にあります。足の構造上歩くのが遅く、防御力もあって自然と皆重装歩兵になりやすいです。泳ぐのは割と得意です。水中では刺突が抵抗が少なく使い易いので蜥蜴族は大抵長柄武器を使い、機動力に難があるので間合いを如何に征すかが強さに繋がります。生産者としては漁師に向いています。嘗ては漁と交易、海賊行為で栄えた民族でした。船大工や船乗りになる事が多いです。

必要ポイントは5です。」

「鳥族を選択した場合、肉体の変化に対応するため、ログインとログアウトの際に30分の体操の義務があります。鳥族の特徴は翼による【飛翔】です。空からならば索敵も逃走も容易です。また、高度からの攻撃ならば重力を味方に付けることが出来ます。しかし飛ぶために骨は脆く、重い物も持てません。更に空中では踏ん張りが効かないので勢いをつけなければ攻撃は貧弱で体勢も崩しやすいです。飛行を何処まで使いこなせるかが重要です。安定して空を飛ぶためにも重りにならず、風に煽られない服装を選ぶ必要があります。嘗てはその機動力を武器に特に山岳部で繁栄していました。鳥頭と馬鹿には出来ません。鴉や梟が頭が良いように鳥族も他の人類に劣るものではありません。ただ、誤解される理由として、飛べる為か開放的で楽天的な民族なので頭は良いのに馬鹿と思われていました。

必要ポイントは10です。」



「此処までが獣人系です。次は虫族です。」



「いやいやいや、もういい。

ちょっと整理する時間くれ。」


正直返答があるとは予想外だった。


種族が多いのはともかく、説明がさらに多いのも予想外だった。


どうしよう?



取り敢えず鳥族からして飛行能力がある種族はその分弱いっぽい。


「虫って外骨格だけど防御力がフルプレートアーマー級に何の?」



「なります。しかし外骨格だからこそ、骨折し易いというデメリットがあります。」


「そっかぁ。」


虫族は除外、格上や攻撃力重視には弱そうだから。


「設定された最低限の情報が伝えられてはいません。」

「キャラメイクにはポイントが必要です。貴方の肉体ポイントは20です。肉体ポイントはアビリティの習得にも使います。」

「種族はハーフ等が可能です。」

「容姿などステータス的に有効でない調整はポイント無料で行えます。ステータス的に有効な調整はポイントを消費します。」



正直説明を全部聞くのは時間が掛かりすぎる。


今聞いた獣人系で決めちゃおう。



「…決めた。」


基本は蜥蜴族、足腰の骨格は猿族にする。


あくまでも骨格なので【鱗鎧】は足までカバーしている。


顔はポイントを使わないようにリアル顔を少しイケメンにしようとしたが断念し、リアルのままの顔にした。


顔や頭が【鱗鎧】でカバーされなくなったが、デメリットだからか1ポイント増えたのは嬉しい誤算だ。


身長はリアルと同じ178センチだ。


リアルの身長と同じならポイント無料で調整できた。


残りは14ポイント。


始めからあった【鱗鎧】と【長柄武器の才能】の他に

【急所攻撃の才能】3ポイント

【槍の天才】4ポイント

【投げ槍の才能】1ポイント

【狩人の眼】4ポイント

【見切り】1ポイント

【勘】1ポイント

を取った。


【長柄武器の才能】と【槍の天才】が重複する事もちゃんと聞いた。



「肉体の作成が終了しました。」

「肉体データを保存しています。」

「スキルを習得してください。」

「貴方のスキルポイントは20です。」

スキル一覧が目の前に現れる。


種族もそうしてりゃ良かったんじゃないか。


まあ、とにかくスキルは全てアビリティと重なっても機能するらしいし、槍に特化して急所狙い、ある程度の生産技術も備えたい。


という事で

【槍術】2ポイント

【投槍術】2ポイント

【急所攻撃】3ポイント

【パリィ】3ポイント

【採集】1ポイント

【調合】2ポイント

【旅人の心得】3ポイント

【応急手当て】4ポイント

を選んだ。


イメージは、旅を続ける熟練の槍使い、である。



「キャラメイクが終了しました。」

「種族、スキル、アビリティに応じて初期装備を支給します。」

「ゲームを開始します。」

「セッション開始時間になっていません。」

「セッション開始時間まで待機してください。」



気が付くとごわごわした服を着て、腰の後ろにジャベリン?を三本、右手に一メートル半ぐらいの…長さからしてショートスピアを握っていた。


スピアとジャベリンは柄は木製で、穂先は錆びた鉄だ。


さらに左手で袋を担いでいる。

袋の中を見てみると、砥石、擂り鉢、目盛りの入った木のコップが幾つか、大きさの違う匙三つ、コルクで蓋をされた空の試験管が十個、大小の鍋が二つ、火打ち石、干した肉や果物、炒って軽くした米、竹の水筒、頑丈さ重視のゴツいナイフ、藁の縄、包帯、アルコール濃度が高そうな消毒用の酒が入っていた。



その後待機している間に槍と投げ槍を使ってみたが、槍は一端の槍使いを名乗って良いのではないか?というほど上手く使えた。


投げ槍も初めてとは思えない。


授業でしか触った事のないボールよりよっぽど手に馴染む。

思わず嬉しくなって心の中で「三段突き」とか「スナイパースロー」考えながらしばらく遊んでいた。










「セッション開始時間になりました。」

「ようこそ現想世界に」



変わらぬ合成音声の歓迎を聞きながら



視界が暗くなった。

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