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永遠に、刹那に  作者: 塔子
本編
2/19

【2】

「――ミラ、愛してる」



頭がおかしくなったんだろうか?


耳も?


言葉の意味が理解出来ない。


私を、誰が、愛してる?


誰が、私を、愛してる?


私は誰?


ミラって、誰?



「――ミラ、明日には、お前は俺の妻になるんだ」



明日?


妻?


それって、どういう事?


誰か、説明して。


ううん、説明なんていらない。


だって、こんな事――。



「――う、……」



レグルスが片眉を上げた。


胸の前で両手を強く握り締め、俯いたままのミラは少し身体を震わせている。


表情が解らない。


レグルスはミラの顎に指を添え、顔を上げさせた。


レグルスの瞳には、涙に濡れる少女の顔。



「ミラ」

「――う、……そ」

「ミラ?」

「そ、そんな、――う……そ」

「嘘だと?」

「誰も、し、信じ――ませ…ん」

「ミラっ!」



ミラは、レグルスを愛してる。


例え嘘でも、この上ない喜びが身体中を駆け抜けていくのを感じる。


それと同時に、絶望と自分の儚さが痛みを持って胸を引き裂く。


それはミラにとって唯一受け入れられない言葉だ。



「ミラ!信じないというのは、どういう事だ!」

「イヤっ!イヤです!!私は、私は――!!」



私は――そんな事は、望んでいない。


私は貴方を愛してる。でも、愛されたいなんて――。



「ミラ!」



ミラは両手で耳を塞ぎ、もう何も聞きたくはないと頭を振り続ける。



「お前は、俺の気持ちなど……――」



ミラには、レグルスの言葉は何一つ届いていない。


もう、届かない。


レグルスが掛けた魔術の金色の粒子がミラを包み込む。


息が苦しい。


息が出来ない。


私はレグルス様を拒絶してしまった。でも、これだけは、何を言われても、何をされても――!!


レグルスの妹デネボラに拾われ、レグルスに救われ育ててもらった命だ。


私の命は、レグルス様のもの。


このまま息を引き取っても、構わない。


涙で揺れる視界の中、レグルスの姿をミラは瞳に焼き付け、ゆっくりと目を閉じた。










目覚めた時、そこは父と母が居る天国なんだろうと思っていた。


きっと、迎えに来てくれている。


再会出来るのだ。そう思えば死ぬ事も決して不幸な事ではない。


ミラは、目を開けた。


見慣れた天井に、憶えのある部屋。


眠り心地の良いベットの上に居る自分。


ミラはゆっくり身体を起こす。


いつの間に、自室に戻ってきたのだろう?


そう思いながら、起こす身体はいつも以上に重く、僅かに腰に痛みが走る。


泣いたからだろうか、視界がぼんやりとして見え難い。


何気にミラは自分の両手を見る。



「っ!?」



自分の手じゃない。皺の多いくたびれた手がそこに在る。


まさか、重い身体に無理を言って、この部屋にある姿見の前に立つ。


鏡の中には、白髪の、顔中皺だらけの、腰の曲がった老婆が居る。



「ど、どういう…」



声も変わってしまっている。


自分が誰なのか、本当に自分はミラなのか、解らなくなる。


かさついた手で顔を触っても、老婆の姿は変わらない。



「――っ!?まさか、レグルス様の、魔術!?」



これは、罰だ。


レグルスの言葉を嘘と言い、妻になれと言われて拒絶したからだ。


鏡の中の老婆となったミラに、ミラは嗤うしかない。


レグルス様は、どうして、私なんかに「愛してる」なんて。


「妻に」などど言う理由がミラの中には、どこをどう探しても見つからない。



「これが、私の60年後の姿なんだろうね」



ミラは受け入れる。


レグルスが与えてくれるものなら、何でも、どんな事でも。


寝てばかりもいられない。


午前中は無駄に過ごしてしまった。


昼食の準備とお屋敷の掃除と庭の手入れもいなくては。


ミラはエプロンを手に取り、厨房に向かった。







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