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diary

リュウタが会いたいって。

大樹からのメールが頭の中をぐるぐる回っていた。

菜穂に言われた事もあって、私はすごく興奮していた。

(リュウタが会いたいって言ってくれた。やっぱり私リュウタの事好きなんだよな。付き合いたいなんて思わない。でも、彼と再会したら、せめていい奴だな…とかかわいくなったなとか思われたい。)その頃の私と来たら、一日中そんな事ばかり考えていた。

そしてその頃から少しずつ昔の日記を読み返しては、リュウタとつき合った中学時代を思い出し、ドキドキして眠れない事が多くなった。

何冊にも及ぶ、淡くて子供じみた想いが、私の中に再び染み渡っていく。

日記にはリュウタとの始まりも、終わりも細かく毎日しるされていた。


〈平成9年4月3日〉

今日は中学の入学式。女子は皆かっこいい男の子に夢中で、でも…何人かいたけどコレと言ってきになる人はいなかったなぁ。リュウタっていうすっごい嫌な奴がいたけど。ぶつかった時「邪魔」とか言って足踏まれた!初対面なのに態度デカイ。あーゆう人嫌い!あ、でも顔は結構かっこ良かったかもしれないな。色白で、目が細くて、唇はぽってりしてて、髪が長い…いや、やっぱあんまりかな。


〈平成9年5月6日〉

席替えしたらリュウタの隣。嫌な奴と思ってたけど、意外と笑った時とか、かわいいの発見した。私のピンクのシャーペン気に入ったらしくて、買ってきてあげたら喜んでやがった。あと、給食のみそ汁こぼした時「豆腐が一番飛んだ!」と叫んだ。あと自転車で電信柱に突撃してた。アホだな〜。可愛い。そう言えばマコと、ヒナがリュウタの事好きとか言ってた。あいつ意外とモテルんだな。あいつ好きな人いるのかな?


〈平成9年6月20日〉

リュウタに国語の教科書借りたら筆記体の練習なんかしてて、ローマ字でびっしりタマちゃんの名前が…。リュウタの好きな人解っちゃった。最近誰かがリュウタはミクの事好きだなんて言ってたけど違うじゃん。何かがっかり(かも?)


〈平成9年7月18日〉

夏祭りにリュウタを誘ったけど、断られたからタマちゃんも呼んだし結局大人数。何か微妙だったけど、いたしかたない。リュウ達、他校の男子と喧嘩した。全然一緒におれん。


〈平成10年3月1日〉

最近リュウタとずっと話してない…。何かドキドキするしな。最近告白ブーム、クラス変わって誰かがリュウタとつき合ったらどうしよう死んじゃうな。


〈平成10年4月2日〉

リュウタとクラス離れた。どうでもよくなって「好き」って告白した。電話で。でも「つき合って」が言えなくて、私の事どう思うって聞いたら、「嫌いじゃない。」だって。これじゃ解らない。つき合ってって今度ちゃんと言おう。


〈平成10年5月29日〉

何とかリュウタにオッケーもらったけど、つき合ってる自信ない。誕生日も何も言ってくれないもん…と思ってたんだけど!!一人で帰ってたら自転車で来てくれて指輪くれたんだ♪もう死んでもいいとか思う☆


ここまで読んで、私は思わず吹き出してしまった。

何だ?この甘酸っぱい感じ。

彼との恋というよりも私の片想いの記録。

野球部の彼にわざとテニスボールを転がして投げ返してもらうとか、観覧車のてっぺんでキスをしたりとか、修学旅行の夜、部屋まで来てくれたけど、結局何もできなかったりとか、ささいな事が全部、全部がドラマの様に胸に残ってる。

一年後も二年後も、彼を隣でみていたい…。幼い少女の初恋の記録が今の自分の中に入ってくる。

世界がキラキラと輝いている。

あの頃の奇麗な想い出が心の中に溜まった灰色の空気を浄化してくれるような気がした。


しかし、高校に入って学校が離れると、私の気持ちは次第に新しい世界へと引き寄せられていく。リュウタとの距離が少しずつ離れていったのはその頃からだ。


〈平成11年4月20日〉

軽音楽部の見学で、ドラムのサヤと出会う。念願のバンド活動を始める。楽しい。そう言えば最近のリュウタ嫌だ。高校入ってから、エッチな事ばかりだ。きっと新しい友達とかの影響なんだろうな。ただやりたいだけみたいに思えてくるよ…。それにバンドも男の子いるけどどう思ってるかな?口では賛成してくれるけど、本当は嫌だろうな。何かしんどいな。一人になれたらもっと気楽に好きな事できるかな?


それから私はリュウタと別れる事になる。

その後彼から電話をくれた事もあったけど、(1人に慣れたらきっとすぐリュウタの事なんて

忘れられる。今は少し寂しいだけだ…)私は彼よりも、目の前にある新しい生活、夢、これから出会うであろう、沢山の人との出会いや恋に憧れていった。

大切な物は今、目の前にある幸せだって事に気付く事ができずに…。

それから沢山の人と恋をした。

バンド活動も盛んだった。週2回の練習に、月1回のライブ活動。

沢山の歌を歌ったけど、恋をする度に、相手をリュウタと比べ、歌の歌詞に浮かぶのはいつもリュウタとの恋の想い出だった。

子供だったと後悔したけど、その頃には彼はもうずっと遠い存在だった。


日記を閉じてミクはベットに横たわる。

(今、彼ともう一度繋がりを持てるチャンスが目の前まで来てるんだ。

後悔を重ね、臆病になっていた私だけど、このチャンスだけはやっぱり譲れない。絶対に。)

リュウタからのメールはまだ来ない…。

私は決心した。(もう一度賭けをする。)もし、今から送るメールがリュウタの彼女にみつかっちゃったらもうすっぱり諦める。もし見つからずに届いて、彼が返信してくれたら、もう一度彼に好かれる努力をしよう。


【元気?いきなりメールしてごめんね。久しぶりに話してみたくなっちゃった。】

たったコレだけのメールを送信するのに一体どれくらいの時間がかかっただろう?

でも、意外にもリュウタからの返信はすぐに私の元に届いた。


【久しぶりだな。大樹に話聞いて会ってみようかと思ってたんだけど、今足がないもんでお前ん家遠いしバイク買ったら行こうかな〜と思ってた(^^)】

普通に普通のメールで何か拍子抜けしたけど、このたった一通のメールが、今までの空白を埋めてくれた様な気がしたんだ。

【バイク!?免許なんか取ったの?すごいじゃん!絶対見たいんだけど☆買ったらソッコー見せてね!】

【おう!また電話するわ〜。】

この何気ないメールから、私の迷いは一気に吹き飛んだ。

(キタイしないなんて無理だ。絶対に彼の事あきらめない。)

私の心は決まった。

彼がバイクを買ったらとか、彼が彼女と別れたら…なんて待てるわけが無かった。

(今すぐ会って、彼との新しい関係を築くんだ。)

バイクなんていいもんじゃないが、私も当時原付きくらい持っていた。彼の家への行き方だって、まだしっかりと頭にインプットされてるし、いつでも迎えにいけるんだから…。


もう待っているだけじゃいられなかったんだ。







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