さよならだね。
涙が止まらなかった。
止まらないどころじゃない。
後から後から続いて行った。
昨日の事はもうまるで幻みたいだった。
あんなに嬉しい夜はもう二度と来ないと思ったのに…。
まさかこんな形で現実になるなんて…。
思いもしなかった。
何とか繋がったリュウタとの電話もとても味気ないもので、
私の(もしかしたら…。)なんて都合のいい期待もすぐに裏切られる。
リュウタは淡々と落ち着いた口調で話しだす。
「ごめん、やり直すって話し合ったんだ。もうどんな風に思ってくれても何て言ってくれても構わないから…。」
弱々しい口調…。
でもハッキリ感じられたのは、昨日までとは違う他人行儀なそっけない声だって事。
「嫌だよ…もう会えないなんて嫌だし、わけがわかんないよ。」
泣きながら何度も私は「会いたい」と言う。
リュウタは冷たくそれを突き放す様に、
「駄目なんだ。もう会わない。ごめん。」
そう繰り返すだけだった。
「あたしが電話切ってたからいけないの?エッチできなかったからいけないの?何で?」
何で?どうして??
疑問は膨らむばかりだった。
だってそうでしょう?
あんなに期待させておいて、
あんなに喜ばせておいて…。
全部あたしの勝手な一人よがりだったんだ。
みじめで、情けなくて、
消えてしまえたらいいのに…。
リュウタは言葉を濁すだけで、
あいまいで、気持ちがどこにあるかさえちゃんと教えてくれない。
ずるいよ…。
どんな理由でも、言い訳でもいいから、
納得できる説明が欲しいよ。
嘘でもいい、何でもいいから、
ねぇ、私から目をそらさないで…。
今、聞かなきゃ。
じゃなきゃもう二度…
解っていた。
でも、リュウタは、乾いた声で何度も「ごめん。」と言うだけ。
「解った…。」
小さく呟いて私も電話を離す。
何気ない夏の始まりの一日。
だけど私にとってあの日は、
人生が終わったって言ってもいいくらい、
悲しい一日。