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マボロシ

寝不足の目にしみる朝の太陽。

どうでもいいけど、どうして朝はこんなにだるいのか…。


ミクは考える。

真夜中は本当に不思議。

まるで魔物でもいるんじゃないかってくらいあまりにもドラマティックな感覚。


それなのに、太陽が顔を出したとたん、夢は終わって現実に戻されると、

髪もボサボサだし、何だか間抜けな顔の二人…(現実なんてこんな物か…。)


「眠い…。」

「俺も…。」

二人は重い体を起こして、乱れた髪を直す。


「そんで、今日学校行くの?」

リュウタが聞いた。

「まぁ、今日行かないとヤバいから。終業式だし。」

そうは言ったけど、課題さえなければ絶対さぼりたい…。


時計を見ると、もう朝の六時近くだった。

「そろそろ母さん起きるかも…。」

「マジで?」

「うん、そろそろね〜。」

リュウタは布団を頭までかぶってもう一寝入りしようとしてる。


一足はやく夏休みに入っていたリュウタの学校が疎ましい。


(本当はもっと一緒に居たいのにな)


でもやっぱり、現実には恋だけじゃなくてやらなきゃいけない事が沢山用意されている。

それに、彼はもう彼女と別れたんだもん、焦る心配はないか…。


自分にそう言い聞かせると、

制服を着て化粧を直し、散らかっている課題を乱雑にカバンに詰め込んだ。

彼は布団の中からその様子を見ている。

ちょっと腹立たしい。…でも、こんな時間が何だか愛しいと思った。


「ねぇ、本当に行くの?」

リュウタが甘えた声で聞いてくる。

「行くよ。これで学校休んでたら今度こそ親に殺されるって。それに、リュウタのお母さんにはち合わせるのもさすがに嫌だしね。」

「そりゃそうだ。」

リュウタはいたずらな子供の様に目を細めて笑った。


あーなんて幸せな朝の光景だろう…。


私は何だかうれしくて仕方なかった。

彼は、余韻に浸っているミクの腕を、ベットの中から掴んだ。

「ねぇ、今夜また会える?」

無邪気な彼の笑顔に、自然と笑がこぼれる。

「じゃあ、学校終わったらまた来るから、ちゃんとそれまでに起きててよ。」

思わず口元が緩む。

「はいはい。」

リュウタも笑顔を返してくれた。

「あー、あと昨日やってたゲーム私が来るまで進めないでね!!」

「解ったよ。」

ミクは急いで彼の家を出た。


何でもない普通の会話を交わす。

当たり前の幸せ。


私はこの時何も疑わなかった。


彼から次の約束をしてくれたし、こんな日がこれから続くんだなって素直に信じてた。

安心してしまった…。


でも…実は、この夜には一つだけ問題があった。

だけど、明日もリュウタとの関係が続くと信じているミクにとって、

それは焦る必要もない事だったんだ。


(今日が駄目でもこれから毎日会えるもんね。大丈夫…。)

そう思ったんだ。



「で、その問題とは何!?」

学校へ着くなり、さっそく菜穂達と机を取り囲んで会議が始まる。

「えーと、まずコレはどーゆう事ですか?ミクさん?」

未織がミクの首元を指差した。

首元にはくっきり赤いあざができている。

「うわっ!!いつの間にそーゆう事になっちゃうわけぇ!!!キスマーク付けるなんてやらしい!」

菜穂が頭を抱えてる。

「本当だ。」(自分でも気付かなかった…)

「一人だけずるいよ!!」

「で、彼と最後までしたんでしょう??どーだった?」

皆朝から好きな事ばっかり言ってる…。

「別にどーって事ないよ。」

私がそう答えると、

「余裕ぶるなって!!あんた処女のはずでしょーがー!どうって事ないわけないでしょう!」

菜穂が何だか興奮ぎみになっている。


でも実は…。


「最後までしてないんだよね。」

「え?!」

黙って聞いていた亜子も、何だかフに落ちないと言った感じでこっちを見た。


そう、最後までしてない。


要するに、処女だし痛いし、朝来ちゃうし、

中途半端な状況で…。

ミクとリュウタはまだ一線を超えていなかった…。


「えーーー!!!!」


あんのじょうそんな反応…。


「そんな驚く事?」

「そりゃ驚くでしょ!!あんたバカ?」

菜穂が切れている。

「なんで今更拒むのよ〜。」

「違うよ本当に!あたしだってしたかったよ!でも、何か朝になってたし、痛いし。」

不機嫌そうな菜穂に今度は亜子が口を挟む。

「ミクは菜穂と違って純粋なのよ☆いいじゃない、今日じゃなくたってコレから時間はあるんだから。」

私もそう思う。

だけど菜穂は納得いかない顔でこちらをにらむ。


「やってない上、つき合うって約束したわけでもないんでしょう?それって大丈夫?」

「大丈夫、だって別れてくれたって事は私とつき合ってくれるって事でしょう?」

「まぁ、そうだけど、そんな簡単にあの女と切れるかな?」

「そ…それは…。」

「男はやっぱり気持ちだけじゃ繋がっていられない生き物だと思うよー、ちゃんとした事実を作らなきゃ、いつでも前の女のとこ行っちゃえるんだから、次はちゃんと最後までした方がいいよ!」

「そっかぁ」(確かにって思った…。)


ミクは決心した。

今夜リュウタと昨日の続きをして、

ちゃんとこの先の答えを聞こうって…。

大丈夫、彼を信じてる。

もう少しで、私達、恋人同士に戻れるよね。


ミクはこの時まだ気づいていなかった。

彼の心が今、どこにあるのかを…。






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