心に広がる魔物
遂に事件は起こった…。
ミクの頭は後悔でいっぱいだった。
よくある話、後の祭りってやつ。
あの時あんな態度取らなきゃ、あんな事いわなきゃ、
あんな物見なければ…!!!
そう、それは忘れもしない7月のある暑い日の事。
学校では菜穂がまた騒いでいた。
「あの宗教ぜってーインチキ!!!!」
いつになく取り乱す菜穂。
それをなだめる亜子達…。
聞けば、司くんが宗教にハマリ過ぎてトラブルを起こしたらしい…。
優しかった幹部の人達もすっかり態度が変わって、
今となってはタチの悪い取り立て屋の様な物だった。
「もーあの人達の事は忘れなさい!幸せはそんなんじゃ手に入らないんだから。」
亜子の意見はもっともだった。
何かにすがってないとやってられない私達…。
別にマジだったわけじゃない。
ただ、なんとなく頑張れない時、勇気をくれる魔法の様なおまじないの呪文だった。
あーあ、やっぱり世の中ってうまくいかない。
菜穂も私も少し凹んだ。
根拠のない“大丈夫”って気持ちはもうすっかりなくなっていた。
最近は補習ばっかりだし、暑いし、何かかったるい時期だった。
その夜リュウタからの久しぶりの電話が来る。
でも内容を聞いてまた凹む。
「明日、彼女がうちに来るって聞かないんだ。この前のメールの件もあるし、気つけてな。」
…。
(はいはい、解ったよ。)
わかっちゃいるけど、ちょっと寂しい気分になる。
所詮、私はリュウタにとっての友達でしかないって思い知らされる。
変だよね、2人は恋人同士なんだから、家に来たってどこで一緒に居たって普通なのに、
ちゃんと解ってるのに、
なんだろう?
リュウタの口からあらためて言われると急に彼女の事が〈リアル〉に気になった。
(彼女とリュウタ、どんな時間を過ごすのかな?)
こんな時の想像は良くない事ばかりが浮かぶ。
友達と彼女の違い、リュウタもきっとちゃんとわけてる。
友達の私とはタマにメールしたり、何でもない時間を過ごす。
彼女とはきっと…。
次の日私は何となく落ち着かなくて、やっぱりうわの空だった。
あの部屋にはベットとTVしかないし、やっぱり今頃2人はキスしたり抱き合ったしてるのかな?
私の触れられない彼の体に、千理は簡単に触れて、自分の物だと確認するんだろうな。
気になって仕方がなかった。
久しぶりに大樹に電話して、何となくもやもやを打ち明ける。
「確かに、気になるけど、当たり前の事じゃん。今更気にするなよ。」
大樹にさらりと言われた。
「うん。」
それから何となく冴えない私を大樹が励ましてくれた。
「でも、リュウタはミクとつき合いたいって言ってたよ。期待しない方がいいとは思うけど、いい方向向かってんじゃないの?」
「それ、リュウタが言ったの?」
「うん、だから頑張れ。」
少し励まされた。
もちろんそんなの期待しちゃ駄目って解ってる。
でも彼を待つしかないし、こんな事はこれから沢山慣れて行かなきゃって思った。
でもやっぱりその夜はなかなか寝付けずにいた。
毎日来ていた「おやすみ」のメールが来なかったから…。
ミクの胸に不安な影が広がる。
何でもないリュウタと彼女の一日が、
何だか特別な日に思えた。
そして次の日また見ちゃったんだ…。
リュウタと彼女のメール。
やめとけばいいのに…なんてバカなんだろう?
ミクの心を汚染する嫉妬と言う魔物。
あの時あんな事言わなければ、
あんな物見なければ…。
ミクの頭にハッキリと芽生え始めた気持ち。
せめて“浮気相手”くらいにはなりたいよ…。
あまりにも切なくてはちきれそうな願いだった。
ミクの心は揺れていた。
時計の針は狂い出している。
もう昔には戻れないの?
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