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メール

突然の事。


…でも私は嬉しかった。

だってずっとその一言が聞きたかったんだもん。


〈リュウタはその日ミクを好きだと言ってくれた…。〉


彼の単なる気まぐれかもしれないし、

私の中の好きって気持ちとはもっと違う意味だろうけど…。


だって“人は100人100通り…。”

だからたった一言の「好き」って気持ちを皆が皆同じ意味で使ってるわけじゃない。

夜も眠れないくらいリュウタの事を考えてるミクとは違う。

うまく言えないけど、リュウタの言ってくれた好きって気持ちは、

一緒に居て楽しいとか、好きって言ってくれたからとか、

つまりまだ、ミクを気に入ってるって程度なんだってちゃんと解っていた。


それでも、照れ笑いを浮かべる彼の態度は、やっぱり今までとは違うから、

私は満たされた気持ちでいっぱいになれたんだ。


「ねぇ、雨ひどくなるといけないから、もう帰るよ。送って。」

リュウタはさっさと帰る用意を始めた。

なんだかごまかされた感じだったけど、たぶん彼なりの照れ隠しだった。

「うん。解った。」

ミクもベットから立ち上がった。


もっと一緒にいたい…。


そんな気持ちでいっぱいだった。

でも、この後また彼女の話を聞くのは嫌だと思った。

今はただ、余韻に浸っていたかったから、私もすぐにリュウタを送る事にした。


雨はひどい音を立て、激しさを増していた。

リュウタはミクにくっついて、

「超寒い〜!!死んじゃうって!」とか叫んでた。

こんな風に2人の距離をくっつけてくれる雨ならいくらだって平気だった。


家に帰った頃、びしょぬれの体を暖めていると、リュウタからのメールが届いた。


【雨、大丈夫だった?ごめんな。】


彼の優しい言葉にまたドキっとした。


どうして彼はこんなに私の心を知っているんだろう…。

彼の行動や、言葉は全部ミクの心を持って行った…。


好きって気持ちがどんどん増加していくのが解る。


リュウタはずるい。


いじわるな言葉や優しい言葉で、私を振り回して、

焼きもちを焼かせて、いつもミクの頭の中を占拠する。

じれったい態度は、ますますミクを夢中にさせたし、

何よりそれを天然でやっちゃう彼の事を私は憎めなかった…。


もっと私を好きになって…。


あいまいな気持ちじゃなくて、

ちゃんと私を見て…。


彼女と重ねないで…私だけを好きになってほしい。


悔しいけど、私はしばらく“待つ”事にした。


リュウタがいつか彼女と別れて、

私と同じ気持ちで、「好き」って言ってくれる日を…。


もう後には戻れないって確信した。


その日も【おやすみ】のメールは来たし、

数日後も普通に2人で遊んだ。


変わらない態度、

いつもの何でもない会話と時間。

何も変わらない2人の関係。


でも、私は期待していた。


そのうち彼女の事が頭からどんどん消えて行った。

もう考えたくなかったんだ。

側で見てるわけじゃないから、2人の絆の深さを想像仕切れなかった。

いや、考えるとどんどん悪い風にしか考えれなくなるから、

彼女の事、もう知りたくなかったし、忘れたかったんだ…。


現実逃避に都合のいい期待感。

周りが見えなくなって一人よがりになる。


忘れちゃいけない事沢山あったはずなのに、

夢中になるにつれて、ミクは大事な事をどんどん忘れていった。


そして私はある日最大のミスをおかした。

最初で最後…。

ミクからリュウタへの初めてのメールだった。


【今何してんの?】


そう…たったこれだけ。

その日リュウタは「今日は学校ないし彼女とも会わないから家でのんびり過ごす。」なんて

言ってた。

私は放課後ちょうど予定がなくなって暇だった。

すかさずリュウタを思い出してメールしちゃったんだ。

でも戻って来たメールを見て血の気が引いた…。

だって…。


【誰ですか?】


それを見て、私は急に我に返った。

(コレ、リュウタじゃない…。)

そう、それは最も恐れていた存在…。

彼女の千理ちゃんに間違いない。


【間違えました。】


それからメールは来なかった。

リュウタに夜電話で聞くと、

「そんなの聞いてないし、お前からの受信も送信も履歴ないよ?!」

…と驚いていた。

黙り込む私に対して彼は結構ノー天気に構えて言った。

「あいつは怪しいと思ったら問いつめるはずだから、本当に間違いか迷惑メールだと思って消したんだろ?勝手に見たのバレナイ為に消しただけだよ。大丈夫だって!」

リュウタはあんまり気にしていなかった。

「そうかなぁ…。」

「たぶんそうだよ。気にすんなって。良くあるんだって勝手に携帯見るからね〜あいつ。」

「勝手にメールしてごめん。」

「いいよ…もう。」


私はリュウタに怒られなかった事でホッとした。

でも、何だかリュウタが彼女の事を何でも知ってるって口調だったから悲しくなった。

今更だし当たり前だけど…。


でも本当はリュウタもミクもまだ彼女の事良く解ってなかったのかもしれない。

「好き」は100人100通り。

私がリュウタの気持ちが解らなくて、リュウタが私の気持ちを理解できないように、

私達も彼女の事、良く解ってなかったんだ。


その後、忘れた頃にそのメールが大変な事を引き起こす。


ミクもリュウタも、まだそれに気づかづにいた。










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