SAVE ME
その日私は多香子の家に居た。
その日…と言うか、最近よく多香子の家に来ていた。
「見て!!コレ!」
ミクは自分の携帯を多香子に見せた。
リュウタからの【おやすみ】は昨日も入って来た。
「すごいじゃん!あいつがこんな物入れてくるなんて笑える!でもすごいじゃん!」
多香子はリュウタの事知ってるから、良かったねって言ってくれる。
ミクはそれがとても嬉しかった。
最も他の友達に見せたら、なんて言うだろう?
彼女がいるのにこんな物入れてくる奴をバカだと思うだろうか…。
それとも私の事を可愛そうに思うだろうか…。ミクは自信がなかった。
それからその【おやすみ】は日に日に変わって来ていた。
字に色が付いていたり、点滅したり、絵文字が付いたり、リュウタの遊びの一つ一つに期待は高鳴っていった。
昨日のはついに語尾にハートマークが付いていた。
何がしたいのかはさっぱり謎だったけど、そーゆう変化の一つ一つにミクは振り回されていたんだ。
「やっぱり、お祈りしたかいがあったー♪」
「まだそんな事言ってるの?バカだなぁ。あんた頑張って来たじゃない。」
多香子は優しいなぁ…でもやっぱりミクはお祈りのせいだと思う事にしていた。
何かのおかげだって思うのは気持ちが楽だった。
それを続けてさえいれば、リュウタとの関係も切れない様な気がするから。
実際はそんな単純な事じゃないんだろうけど…。
その頃からミクは聞く音楽の趣味も変わって来ていた。
恋愛とは不思議な物で、自分の趣味や物の好みまで左右してしまうのだ。
ミクは昔から元気でノリのいい歌が好きで、バンド時代もずっと、ジュディマリやヒスブルの歌を歌ったり、自分で作る歌もそれに近かった。
その頃の女子高生って言ったら、皆やっぱりあゆとか聞いてて、
「あゆの歌って歌詞がいいよねー」なんて話してたけど、ミクにはよくわかんなかった。
切ないとか、解んない程子供だったんだ。
「最近さぁ、あゆとか、愛内里菜とか、古いけど、華原朋美とか聞くよー。」
「あんたが?どーしたの?」多香子が笑って言った。
自分にも解んないけど、その頃から、今までよく解んないと思っていた歌の歌詞とかに共感を覚える様になったんだ。
何か女の子が心の中でぎりぎりの所に居る様な歌に気持ちが重なっていた。
当時、私が好きだった歌は皆、どことなく辛くてもちゃんと戦おうとしてる女の子の歌ばかりだ。
たぶんそーゆう風になりたい、ならなきゃいけないと思っていた。
【誰にも言えない、誰かに言いたい、あの人が誰より大切って。】
【あの人じゃなければ、駄目だと言い切れる。それは君だと気付く時、昔どんな悲しい別れをした人も、忘れるものだと気付いたよ、後にはもう引けない…for your love この手がもし君から離れてしまったなら、解らない何処に行けばいいのかさえ、何一つとも、これ以上この世界に守りたい物なんてないのに。明日は私の中に優しさ強さ、ありたいsave me】
【一晩が終わるやるせなさと、そして一日が始まる不安との挟間で、一瞬よぎる優しさに、君と感じ合いたいと甘い夢を見てしまう。】
【あなたのイニシャル、砂場に書いて、また消して、時間のネジ回して、次の約束がノートに書いてあるから、それを見て、それを抱いて今日はいい夢見よう…。】とか…。
柄にもなくそーゆうのばっかりギャルとかに借りて聞きあさってしまう自分。
あー恋愛、いや、恋とか片思いとか、昔の彼とか…問題があって、ハードルが高い程、私はそのアリ地獄の様な呪縛の中に吸い込まれて行ってしまう。
こんなに誰かを好きだと思い込んで、こんなにコントロールが効かなくなる事が私の一生の中にこれから先あるんだろうか?
彼の気持ちも解らないままこんなに彼の事を好きになっていいんだろうか?
だいたいもう既に一度終わった2人がもう一度なんてあるんだろうか?
ミクの頭の中はリュウタの事でいっぱいだった。
次のテストを落とすと留年する…。
でも勉強の事とか嫌な事は全部忘れていたかった。
結局ね、若かったんだ…あの頃。
ミクは今でも思うのです。
とにかく若かった。頑張れば何でも手に入ると思ってたし、
何でもかんでも根性で何とかしようと思っていたし、
辛いけど、若いっていいなって思うミクなのでした…。
(まだまだ次回へ続きます。)