答えは未来に置いて
この話では、
彼女が初めて、
答えを求める問いを口にします。
けれどそれは、
今を壊さないための問いでもありました。
五年という時間は、いつの間にか数えなくなっていた。
告白の回数も、断られた言葉の種類も、もう曖昧だ。
ただ一つ、変わらないことがある。
彼は今も、うかに触れない。
その日も、並んで歩いていただけだった。
夕方の空気は少し冷たく、会話は途切れがちだった。
このまま、また何も言わずに別れるのだろうか。
そう思った瞬間、胸の奥で何かが小さく音を立てた。
「ねえ」
彼が立ち止まる。
「もし……私が一人になったら」
言葉を選びながら、続けた。
「その時は、答えてくれる?」
彼はすぐには顔を上げなかった。
しばらく沈黙が落ちる。
その沈黙が、怖かった。
でも、逃げたくはなかった。
「その時は」
彼は静かに言った。
「責任を果たそう」
それだけだった。
言い訳も、補足も、未来の約束もない。
けれど、その声は揺れていなかった。
愛しているとは言われなかった。
好きだとも言われなかった。
それでもうかは、これが精一杯の返事なのだと理解してしまった。
答えは、今ではない。
未来に置かれたまま、触れられない場所にある。
それでも彼女は、問いを口にした自分を、少しだけ誇らしく思った。
第二話をお読みいただき、ありがとうございます。
答えをもらうことよりも、
問いを口にすることの方が
勇気がいる場合もあるのだと思いながら書きました。
次で、この物語は一区切りです。




