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拝啓 地獄でお待ちしております!!  作者: 刀伊槌 蓉真


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人事調査課

どこの世界でも人間関係で悩み苦しんでいる人はいる。私もその一人だった。

ストレスで体調が悪くなることが度々・・・。とくに胃痛が慢性化していた。

それでも朝早くから夜遅くまで四十年間、毎日12時間労働をしていた。

有給休暇も消化できなかった。

現在ここ地獄で人事調査課に配属されている。


地獄には現世の会社と同じように総務課、営業課、技術課、人事課などの配属先がある。

私の所属している人事調査課は現世の人事課とほぼ同じ仕事内容だが一部違うところがある。

現世で悩みを抱えて苦しんでいる人間が地獄へ助けを求めてくると閻魔大王より人事調査課に調査命令がくだされる。

その後、人事調査課は現世に行き調査を開始する。数日から数か月、数年に及ぶこともある。

私たちの調査方法は通常、姿が人間に見えないので気にせず調査ができる。時には対象者の周囲で一人の人間となり調査をすることもある。最終的に対象者に憑依して過去のことも全て調査する。

私はこの仕事に向いていると思っている。


 今日は久々の休日だ。朝食を食べ終え、3日前に調査を終了した対象者のことを思い出していた。


 60代で体格のいい高圧的な話し方をする男、

『ここに置いていたダンボールはどこにある?』

「先ほど、田中さんが倉庫に持っていきました」

『なんで俺が置いていたダンボールを勝手に移動するのかっ!!』

「さぁ、わからないです」

 30代の小柄な女が答えていた。


 40代の小柄な男が倉庫から事務所に入ってきた。


『田中君、ダンボールは倉庫のどこにある?』

「あーさっき、カタログを入れてお客さんに渡しました」

『どうしてか!中に書類が入っていただろっ!!社内用の回覧版だったんだ!!』


 ボカッ


 60代で体格のいい高圧的な話し方をする男が田中の頭をゲンコツで殴った。


「・・・いい加減にしてください。いつもいつも殴らないでくれっ」

 田中が傍にあった箒を持って殴りかかろうとした。


 慌てて別の大柄の40代の男が止めにはいり箒を取り上げた。

 確かに田中の不注意であった。


 結局、田中は我慢できず退職した。


 60代の体格のいい男は散々、パワハラをしていた。

 高圧的な話し方、暴力をふるう、いまさらもう治らないであろう。

 これも一種の病気ではないかと思う。

 いったい何人の社員が辞めていったのであろうか。


 60代のパワハラ男の背中に地獄行きのタイマー付チケットを貼りつけた。

 3年後に地獄にくる。カウントダウンが始まった。


 上司の(ぼく)部長から連絡がはいった。


「おはよう。赤貝(あかがい)さん、休みのところ電話して申し訳ないねぇ」

「おはようございます。朝食を終えたところだから大丈夫です」

「早速で申し訳ないが鯵島あじしまさんが調査中に体調が悪くなってね。早急に交代してくれないだろうか?休暇は別の日に振り替えてください」


 墨部長は物言いが柔らかいので、頼りなさそうに見えるが部下思いで何かと頼りになる上司である。

 これまでに私を含め多くのものが何度も助けてもらっている。嫌っているものはいないだろう。

 こういう上司は昨今、現世にはいない。皆、自分のことで精一杯の世の中だから。


 私は電話しながら右手にキャリーバックを持ち、靴を履き終えた。


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