しめのことば
会合での最後の挨拶を『しめのことば』といいます。しめって何でしょうね。
繰り返してつかうと『しめしめ』になり、丁寧にいうと『おしめ』になりますが…
その森では榊の木が白い花をつけている。
木の根元に小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には、練り切りの生菓子が乗っている。
皿の横には湯気のあがる湯呑も置かれていた。
「んとね。白猿さん。友達とお食事をしたときに、最後に食べるものを『しめ』っていうの。あれってどういう意味だろうね」
「子狸くん。いい質問だ。会議やイベントの最後の挨拶でも「しめの言葉」とか言うな。物事の『終わり』の意味だ。『しめ』に関係のある漢字を三つ紹介しよう」
締 占 〆
「最後という意味の『しめ』は一番左なの。他のは全然違う言葉なの」
「実は三つとも神様に関係のある言葉だぜ。締の字を分解すると、糸へんと帝に分かれる。左側は撚り糸で、神事でのしめ縄やしめ飾りのイメージだ」
「ヒモとか、たばねた糸をくるくる巻いていく感じかな」
「それで合っている。で、『最後』という意味では、ほどけないように縛っておくイメージだな」
「締の右側の『帝』は王様ってこと?」
「帝の字は、神にお供えをする祭壇の形だ。締めは、ヒモ状のものを巻いて束ねる意味と、物事の結末という意味があるんだ」
「うらないの『占め』は、最後という意味はあるの?」
「占の字には『最後』という意味はない。大昔は支配者が占いをつかって政治をしていた。このことから、物や場所を自分のものにすることで『独占』とか『占拠』という意味で占めるという使い方をする。で、『占』の字は占いと同義語の『卜』という字と、口の字があわさったものだ」
「漢字の卜は、カタカナのトと同じ形なの」
「カタカナのトは『止』の簡略化だから無関係だな。で、卜が変形してできたのが、日本固有の漢字で〆の字だ。締切を〆切と書くように、これは『最後』の意味を含んでいる」
「『締』と『〆』が、最後という意味があるんだね。しめの前に『お』をつけると『おしめ』になるけど、最後という意味はあるの?」
「『おしめ』は湿った布という意味だから無関係。ちなみに『おむつ』は赤ちゃんに着せる『むつき』から着ている。おしめはおむつの一種だな」
「んとね。しめを繰り返すと『しめしめ』になるの」
「それは占いの字の『占め占め』だな。予想以上の幸運があったという意味だ。まぁ、今ではイタズラや悪事が成功したときなど、悪い意味で使われそうだが」
「んとね。余計なことを言わないように口を閉めておくことを『お口にチャック』と言うの。チャックにはファスナーとかジッパーとか別の呼び方があるの」
「チャックは、アメリカで『ファスナー』という名で発明されたものだ。元々はクツヒモを結ぶ手間を簡単にするアイテムで考えられたものだ。それが開け閉めする『ジー』という音から『ジッパー』という製品がでたんだ」
「ファスナーが元の名前だったんだ」
「ファスナーは、日本では『巾着』の言葉から、『チャック印』という商品が売り出された。これで日本ではファスナーをチャックと呼ぶようになったんだ」
「チャックは日本独自の呼び方なんだね」