表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/35

01 気づいたら転生

 1539年9月中旬


 まだ朝の涼しさが残る中、僕は父に命じられて畑の近くにある森へ薪を集めに向かった。小鳥たちが楽しそうに鳴く音が響いている。その時、草むらの中で小さな動きが見えた。近づいてみると、そこにはヤマドリがいた。羽に傷を負い、飛べずに草むらに隠れている様子だった。


 「大丈夫、大丈夫だよ」

 僕はそっと話しかけるように言いながら、慎重に手を伸ばす。ヤマドリは恐怖で怯えているけれど、どうにかして捕まえることができた。その鳥を見ながら、僕はこれで久しぶりにお肉が食べられると喜んだ。


 薪拾いをつづけ、さらに森の奥へと進むと、畑仕事をさぼって木陰で寝ている兄を見つけた。


 (最悪だ)


 2歳年上の15歳になる兄・豊作は乱暴者で僕を一方的に虐めている。


 僕は静かに立ち去ろうと方向転換をし、忍び足でさろうとするが。


 バキッ。

 小枝が踏み折れた音が、静かな森の中に響き、思わず体が硬直する。


 兄・豊作が目を覚ますかもしれない…。

 恐る恐る振り返ると、木陰で寝ていたはずの兄が体を起こし、こちらをにらむように見つめていた。


 「おい、次郎…俺の眠りを妨げるとはいい度胸じゃねえか?」

 声には怒気がにじみ出ている。


 「ごめん兄さん…薪を集めてたんだ」

 兄を怒らせないよう必死に答えながら、紐で縛っているヤマドリを背に隠す。

 豊作の目が鋭く光り、僕の抱えているものに気づいたようだった。


 「なんだ、それは。見せてみろ。」

 豊作が立ち上がり、無造作に手を伸ばしてくる。


「これはヤマドリだよ。今晩みんなで食べるんだ」

 豊作は僕の言葉を聞くと、ニヤリと口元を歪めた。

「へぇ…ヤマドリか。いいもものを見つけたじゃねえか、よこせ」

「だ、だめだよこれは…ぐはっ」

豊作の拳が俺の腹に食い込んだ。


「お前が俺に勝てる訳がないだろ。逆らったら痛い目に合うといい加減覚えろ」

そう言って、僕の腕から無理やりヤマドリを引き剥がすように奪い取った。


「ちょっと…返してよ!」

僕は必死に懇願するが豊作はまるで聞いてない。


豊作は15歳ですでに村でも剛力で知られていて、将来は武士になる事が期待されている。僕が勝てるはずがなかった。


「はっはっは、これは俺が見つけたことにするんだ。それで親父に褒められるのはこの俺だ!」

「なっ、違う!違うよ! 僕が見つけたんだ!」

「うるせぇ!」

豊作の拳が再び僕の腹に食い込み、僕は地面に倒れた。


見ると、遠ざかる兄の腰にはヤマドリがぶら下げられ、まるで戦利品のようだった。

悔しさで涙があふれて来る。

クソックッソッくそー。


ーその瞬間。


僕の記憶にかつて同じように悔し涙を流した記憶が蘇った。


ーこ、これは前世の記憶!?


そうだ、かつて僕は日本のブラック企業で働いていた社畜だった。

そして30歳の誕生日に上司に押し付けられた仕事のせいで、終電を逃して歩いて家に向かう途中で、カツアゲするために、近づいてきた若者たちに刺されて死んだ。


ーそうだ! 俺はその時に、二度と虐げられる人生は送らないと、誓ったんだ!



次郎の記憶が蘇えりわずかな時が過ぎる。

しばらく混乱していた次郎だが、ある異変に気付いた。


それは次郎の目線の左上には体力とスタミナが表示されていた事だ。

豊作に殴られたため体力は3割くらい減っている。


「なんだ…どう言うことだ?」

次郎は右上のメニューと言う表示を見つけ、それをクリックするようなイメージをしてみる。


「おっ、開いた!」

そこにステータス表示と言う項目を見つけた次郎は、

同じようにクリックするイメージをしてみる。


【次郎】 13歳


 統率力 36

 武力  32

 政治力 36

 知力  50

 魅力  46


「えっ、もしかして低能!?」


(おいおい、これはダメだろレベルアップできないか?)


だが次郎がどんなに探しても、レベルアップするボタンはなかった。

「……ない。いや、きっとどこかでレベルアップ出来るはずだ…あっ、これって!」


次郎の目にスキル取得とアイテム購入と言う項目が目に入る。

次郎はさっそくスキル取得を開いてみた。


1石斧の作り方

2石ピッケルの作り方

「おい! ゲームの〇〇〇かよ!」


次郎は目に入ったスキル一覧は、どれも原始的すぎて笑えて来た。


石斧? 石ピッケル?

おいおい、ここは原始人の世界じゃないぞ。

いや、待てよ…この世界の技術レベルって、実は俺の前世よりずっと低いからな。

「石斧でも役に立つかもしれないな!」


俺は石斧の作り方を選択してみた。

【石斧の作り方:知識Lv1】

価格:1文   (所持金20文)

効果:伐採効率+10% 一部クラフトスキル開放


「…すこし高いな」

現在俺の持ってるお金は銅銭が20枚。つまり20文だ。金は豊作に奪われないように家の近くの木の下に埋めてある。

だが確かに画面では所持金が20文になってる。


「これって、ここで使うと隠してる金も無くなるって事かな?」

意を決して購入ボタンを押すイメージをすると、頭の中に石斧の構造と作り方、石の形状、木の柄、紐の巻き方などの知識がどんどん入って来る。


「…すげぇ。これが“スキル購入か!」

俺は周囲を見渡し、使えそうな石と木の枝を探した。

森の中にはちょうどいい平たい石が落ちていた。


「よし…やってみるか」

石を削り、枝にくくりつける。

紐は腰の縄を少し切って代用した。

不格好だけど、確かに“斧”っぽい形になった。


「できた…! 俺、斧作ったぞ…!」

手にした斧は軽く、だけどしっかりとした重みがある。

試しに近くの細い木に振り下ろしてみる。


ーバキンッ!

「おおっ! 切れた!」

斧の刃が木の表面を割り、少しずつ削れていく。

「これって、薪を拾うより自分で薪を作れるんじゃね! そうだ、一部クラフトスキル開放って書いてあったな!」


スキル一覧を見ると。


NEW 薪の作り方 

「ホントにあった!」


【薪の作り方:知識Lv1】

価格:1文   (所持金19文)

効果: 薪が作れるようになる。一部クラフトスキル開放。


俺は迷わず「薪の作り方」を購入する。

またしても頭の中に知識が流れ込んでくる。

薪に適した木の種類、乾燥の仕方、割り方、束ね方まで、まるで職人の記憶をダウンロードしたような感覚。


「…これ、マジで便利すぎるだろ」

直ぐにさっき切った木を使って、薪を作ってみる。

斧で割り、乾いた枝を選び、縄で束ねる。

見よう見まねだったはずなのに、手が勝手に動いていく。


「できた…! これ、村で売れるんじゃないか?」


そして次郎は閃いた。

「そうだ! この薪の品質、分からないかな! 鑑定とかで…あった!」


【薪の鑑定眼:知識Lv3】

価格:9文   (所持金18文)

効果:薪の良し悪しが分かる。薪の作成品質+1


「うっ…かなり高い。9文って、ほぼ俺の小遣い1年分だ」


次郎は悩んだあげく「薪の鑑定眼」を購入した。


その瞬間、またしても知識が頭に流れ込んできた。

薪の色、香り、割れ方、水分量、そして火持ちの良さを知るための知識。


「…すげぇ。薪の良し悪しがわかるようになったぞ!」


目の前にある薪の束を見つめると、

次郎の頭の中に自動的に評価が浮かび上がった。


【薪(低)】

 品質:D

 火持ち:少し悪い

 煙:やや多め

 売却価格:2つで1文


「なるほど…これが“低”の値段か。じゃあ、もっといい薪を作れば!」


次郎は周囲を見渡し、より乾いた木、節の少ない枝を選び直す。

斧の使い方も、しだいに正確になっていく。

薪を割り、束ねる。

そして再び鑑定。


【薪(良)】

 品質:B

 火持ち:良好

 煙:少なめ

 売却価格:2文

「よっしゃあああー!!」


次郎の喜びの声が森を駆け抜けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ