番外編短編・午後のクッキー
ある日、テレビを見てたら昆虫食が取り上げられていた。
綺麗な女優がコオロギラーメンを食べていたが、おいおい正気か……。修司はコーヒーとクッキーという優雅な午後を楽しんでいたが、絶句してしまった。
ちなみにクッキーは瑠美から手作りのものをお裾分けしてもらった。その代わりゴミステーションの当番を代わりに一回引き受けたが、無添加でバターたっぷりなクッキーは、サクサク&しっとり濃厚でうまい。それでもこの昆虫食ニュースは食欲をなくすのに十分な威力があった。
「う、気持ち悪い」
一方、クロ子はそんな事は無視し、リビングで自由に寝っ転がっていた。ふくふくしい顔を見ていたら、テレビの事は忘れてきた。肉球もどいしてこんなに可愛いんだ……。
昆虫食なんて一部のマニアが盛り上がっているだけで、一般的に流通はしないだろう。もっとも戦争とか食糧危機になった時は、何でも食べないと生きていけないが。
そう思うと、自由になんでも食べられる今は幸せだ。八十年前の戦時中も食べ物がなく、粗末な材料のすいとんを作って食べていたと両親に聞いた事がある。
美味しいクッキーとコーヒーを噛み締めながら、幸せだった。




