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思い出レシピ帳〜お父さんの初めての自炊〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・パン屋

 同じ県内に新しくパン屋ができたという情報を手に入れた。見た目はおじさんな修司だが、SNSも普通に使いこなし、美味しい食べ物の情報を仕入れてうた。


 福音ベーカリーというパン屋で、美味しい焼き立てのパンを売っているらしい。ちょっと遠いが、SNSにある動物パンや猫型の食パンが気になる。特に猫型食パンはウチのクロ子とそっくりだ。チョコペンで顔を描いたものの写真は、クロ子とそっくりで、是非食べたい。


 少々遠いが足を伸ばし、福音ベーカリーに向かった。一見、住宅街にある小さなパン屋だが、看板犬がいるようだ。店の前には大変可愛らしい芝犬が座っていて、思わず修司の目尻が下がる。クロ子を飼い始めてから世界中にいる動物が愛おしい。クロ子が一番だが、他に動物も異様に可愛く見える様になっていた。


 さっそく店に入ると、ふわりと良い香りが鼻をくすぐる。メロンパンが出来立てのようで、店員が並べていた。


 まだ若い店員だ。顔もハーフっぽいイケメンだったが、髪の毛をまとめていないのが気になる。確かにフワフワな栗毛は彼の雰囲気によく似合っていたが、気になってしまい、ちょっと助言をしてしまった。


「いえ、ウチのパン屋は見た目重視で」

「うん?」

「大丈夫です。髪の毛一本も落ちないよう、神様に設計してもらって地上に来てますから」


 何を言っているんだ?


 この店員は少々不思議くんかもしれない。それでもニコニコと笑い、全く嫌な気分にならないから不思議なものだ。


 まあ、いいか。


 店内にあるパンもどれも美味しそうだ。メロンパンはもちろん、ジャムパン、あんぱん、チョココロネ……。種無しパンという変わったパンも置いてあったが、修司はなんのパンだがさっぱり見当がつかなかった。


 とりあえずおお目当ての猫型食パンが買えたから満足だ。さっそく家に帰ってクロ子に自慢し、適当に切り分ける。そこにチョコペンで顔を描いてみた。大きな目、綺麗な髭、ぷっくりほっぺ……。


「うーん、クロ子にそっくりだ。可愛いなぁ」

「みゃー」


 クロ子は修司に同意するかのように鳴いていた。

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