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思い出レシピ帳〜お父さんの初めての自炊〜  作者: 地野千塩


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第26話 最強のタコライス

 あのお祭りで買ったじゃがいも。


 綺麗に洗い、芽もとり、目の前に置いてある。修司は、これをじゃがバターにして食べようと目論んでいた。


 あの祭りの翌日だ。


 この日はちゃんと自炊を頑張ったが、夜、風呂に入った後、小腹が減ってきた。ちゃんと夕食を食べたはずだが、突然グーッと腹がなる。


 散々迷った。夜にじゃがバターを食べるなんて、翌日体重計に乗るのが怖い。それでも小腹がグーグー叫び、逆らえそうになかった。


「もう、諦めるわ」


 修司は開き直る、じゃがいもをラップに包んでレンチンした。


 出来上がったじゃがいもに爪楊枝を刺す。問題なく柔らかくなっているようだ。皿にもりつけ、バターのカケラを落とし、醤油をたらした。バターは、ゆるゆると溶け出す。

ホクホクな芋は醤油に染みていく。


「うー、我慢できん!」


 修司はじゃがバターが乗った皿を抱えると、リビングのテーブルに置く。今日はDVDでも見ながら、じゃがバターを食べる事にしよう。あのDVDはもう二周目に突入しているが、何回見ても飽きない。しかも今日はじゃがバターつき。


「あー、楽しいなぁ」


 ホクホクなじゃがバターを食べながら、修司の表情も極限まで緩んでいた。


 このじゃがバターは、レンジで簡単に出来るから危険だ。妻のレシピブックにも「食べ過ぎ注意!」と書いてあったが、その意味がわかる。自炊をしている今は、てのかからない料理が余計に美味しく感じてしまうものだった。


 他に手間がかからず、美味しく、安く、その上見た目が良い料理はないだろうか。


 じゃがバターを食べ終えると、妻のレシピブックをペラペラとめくる。じゃがバターのように簡単に出来るが、カロリーと栄養素に難ありだったり、材料費がかかるものも多い。なかなか全て揃った最強の料理が見つからない。


 妻のレシピブックを見ると、おでんもなかなか栄養素はいいんじゃないかと考えたが、食物繊維が少ない。色んな具材を集めるのが手間がかかる。特にゆで卵を入れるのは、手間だ。なかなかこれといったメニューが思いつかず、時間だけ過ぎる。


「もう、寝るか」


 どうしても思いつかず、修司はこのまま寝る事にした。翌朝は町内会でゴミステーションの掃除当番もあるし、早起きしなければ。


 じゃがバターのおかげでお腹がいっぱいになった修司は、すぐに眠りに落ちていく。満腹の後、眠るのは最高に心地いい。まあ、明日だけは体重計に乗るのは、控えておこう。


 そして、翌朝。体重計はスルーして身支度を整え、朝食作り。今日はトースト、味噌汁で簡単にすます。やはり、まだ昨日のじゃがバタが胃に残っているような気がした。


「ご馳走さま」


 後片付けもささっとすませ、町内のゴミステーションに向かった。朝っだったが、今日は日差しが強く、暑い。じっとりと汗をかきながら、ゴミステーションの掃除をする。この辺りで酒でも飲んでいた人がいたのか、空き缶やスナック菓子のカスで散らかっている。面倒だと思いながらも、せっせと片付けた。


「にゃー」


 そこに見た事もない野良猫がやってきた。小さな黒猫だった。いや、足の先は白いので靴下を履いてるみたいな猫だった。


 よく見ると、顔立ちは良い猫だった。飼い猫かと勘違いしようになったが、首輪もしていない。野良猫は修司を見ると、さっとどこかへ隠れてしまった。


「なんだあれ?」


 別に猫好きではないが、なんだか気になってしまった。ただ、野良猫には安易に餌をあげるのはダメだ。そんな無責任な事はできず、もやもやとしてくる。


「修司さん!」


 そこにゴミ袋を持った美加子が現れた。今日はジョギング姿ではない。白シャツのチノパンだった。さすがにこの暑さでジョギングをするのは、自殺行為だろう。


「はい、ゴミ」

「自分で出してくださいよ」


 美加子からゴミを受け取り、ゴミステーションの中に入れた。


 そういえば。


 美加子だったら手間がかからず、美味しく、安く、見た目も良い料理を知っているかもしれない。ちょっと聞いてみる事にした。


「えー、そんな料理ないわよ」


 最初は美加子もそう言っていたが、何か思い出したらしい。ハッとした顔を見せていた。


「タコライスよ、タコライス!」

「タコライス?」

「沖縄のご当地グルメね。ご飯の上にタコスの中見、トマト、チーズなんかと一緒に食べるのよ。一皿で野菜、肉、ご飯も全部取れるわ。しかも見た目もいい!」


 確かにそんな料理もあった記憶がある。沖縄に物産展か何かで食べた。確かに見た目もよく、肉も野菜も全部取れる料理だった。


「でも手間は? 難しくないですか?」

「ところがこれも簡単なのよ。玉ねぎと挽肉をいためて、ケチャップ、コンソメ、ソース、カレー粉で味つけるだけ。挽肉だから火も通りやすいしね。トリティーヤチップスつけたら、見た目も派手でいいじゃない」


 ここまで聞くとタコライスを作らない理由は見つからなかった。さっそく美加子から詳しいレシピを聞き出し、スーパーに買い出しに行く。タイミングがいい事に挽肉やトマトも安かった。トルティーヤチップスやチーズはちょっと高いが、たまには良いだろう。


 ホクホク顔で家に帰り、作る事にした。もちろん、手洗いうがいもし、エプロンもつける。


 トマトや玉ねぎを切る。玉ねぎのみじん切りは辛い作業だが、これさえ乗り切ればあとは簡単だ。


 フライパンで玉ねぎのみじん切りと挽肉を炒め、カレー粉、ケチャップ、ソース、コンソメで味付けする。


 それができたら、ご飯を少し大きめな皿に盛る。レタス、出来上がった肉、トマトと盛り付け、最後にチーズとトルティーヤチップスをトッピング。


「あ、あれ?すごい」


 手間の割には見た目が豪華ばタコライスが完成した。確かにチーズやトルティーヤチップスは割高だが、こうして綺麗にトッピングするとパーティーメニューのように映える。値段以上に豪華で派手な料理に見えた。


 さっそく写真を撮り、SNSにあげる。すると、タコライスに限っては、すぐにいいね!がいっぱいついた。いつもはこんな事はなかったが。


 すっかり機嫌が良くなった修司は、タコライスを食べる事にした。


「いただきます」


本当にこの皿一つで栄養価オッケー? 


少し不安になりながらも、まスプーンですくって食べた。


「おぉ、美味しいじゃん! スパイシーだ、癖になる」


 食べると、そんな不安は吹っ飛ぶ。スパイシーな肉の味、ご飯、野菜、チーズとそれぞれの味が引き立ち、満足感もある。


 頭の中には、沖縄の綺麗な海が見える。栄養素なんてどうでもいい。楽に行こうじゃないか。食べていると、なんだか気分が開放的になってくる。


 ちょっと味が飽きてきたら、トルティーヤチップスも齧る。れっきとした料理なのに、これは楽しいお祭りメニューだ。ザクザクとした食感も楽しみ、嬉しくなってくる。いつもの料理では決して味わえない開放感がこの料理にはある。


「ふふふ」


 なぜか食べていると気分は、楽観的になってきた。修司の顔はに限りなくユルユルになっている。


 手間の割に見た目は豪華、野菜も肉もとれる。タコライスを食べながら、これ以上最強な料理は思いつかなっかった。次はチーズの代わりに温泉卵でも落としても美味しそうだ。手間はかけたくない、でもちょっと見た目が良く、栄養素の高い料理を食べたい時は、タコライスが一番だ。


 何より洗う皿が一枚というのに感動してしまった。サラダを食べる時は、どうしても洗う皿が増える。やはり、これ以上最強な料理が思うかばない。


 美加子に教えてもらったレシピだ。あの重いフライパンを振り回していた。振り込め詐欺の犯人も捕まえていた……。


「うん、あの美加子さんには逆らえないな」


 洗い物を終えた修司は、あの美加子の顔を思い浮かべる。あの人には逆らえそうにない。改めてそう思った。

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