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#さよなら兄者先生

「なぜいる」

「ゲームしよって誘われたので来ました!」


 リアル八重咲紅葉はキメ顔でそう言った。

 金曜の夜、DVDをレンタルした帰り、帰宅後すぐに起きたできごとである。

 意外というか、予想外というか、予想をしようとも思わないことだった。

 いや、あるいは予想がつきそうなものだったのかもしれない。

 なぜなら今日、ここで配信が行われるからだ。

 そしてその配信に、愚妹が彼女を飛び入り参加させるとしても、何も驚くことはない。

 どうしようもなく、そうするだろうなと納得してしまう。納得させられてしまう。


 ……なんて、長ったらしく物語を語ってる場合じゃないな。


「愚妹から話は、聞いてるのか?」

「配信するんですよね!突然のオフコラボですけどよろしくお願いします」

「内容については?」

「ゲームだって聞きましたけど、詳しくは何も」

「おい」

「……」


 愚妹よ。そっと目を逸らすんじゃねぇ。

 その手に持ったプリン今すぐゴミ箱にプッチンするぞ。


 来てしまったものは仕方ない。もう告知もしてるだろうしな。

 とりあえず、勉強もせずプリンを食っている愚妹はしばこう。

 デコピンで。




【オフコラボ】教えて!兄者先生〜!アタシがバカじゃないことを証明せよ【春風桜、八重咲紅葉、兄者】


「いえ〜い、みんな〜おはる〜。P.S二期生、春風桜だよ〜」

「…………」

「ほら、紅葉ちゃん、あいさつあいさつ〜」

「どうも。同期に騙されて来た八重咲紅葉です」

「なんか酷くない〜?」

「聞いてないよ!なんで勉強会!?ゲームするんじゃないの!!!」


 コメント:荒れてんな

 コメント:姫やりやがったな

 コメント:これはキレていい

 コメント:グーパンでも許される

 コメント:むしろ推奨

 コメント:さくやえてぇてぇ

 コメント:ここでその米は草


「ま〜ま〜、ホントに勉強はしないから〜。ね〜、兄者〜?」

「今からお前らには殺し合いをしてもらいます」

「いやだー!!!」

「兄者?え、兄者……?」

「ってのは冗談だ。あぁ、兄者でーす」

「兄者さん!どう思いますかこれ!桜ちゃんひどくないですか!?」

「いや、割とマジで殴っていいぞ。許可する」

「ちょ、え、兄者……暴力反対!ね、謝るから!紅葉ちゃんごめんって〜!」


 コメント:姫虐てぇてぇ

 コメント:八重咲が兄者と手を組み始めたな

 コメント:ついに同期にすら虐待される姫

 コメント:これからも殴られてどうぞ


「と、愚妹はあとでちゃんとしばくとして」

「アタシの扱いが最近ほんっとに酷いよ〜!?」

「八重咲も巻き込んで申し訳ないが、愚妹の学力がいかに大変かを自覚してもらいます」

「兄者さん、わたし勉強したくてここに来たんじゃないんですよ」

「騙された自分が悪いと思って付き合ってくれ。ほら、冷蔵庫にプリンあるから」

「それアタシの〜!!!」


 コメント:餌付けw

 コメント:やっぱ仲良いな

 コメント:この前の凸待ちも仲良かったもんな

 コメント:kwsk

 コメント:凸待ちという名の兄者声真似配信な

 コメント:一人で30分間声真似し続けたのヤバめ

 コメント:八重咲ほぼフルタイムでザ・ビーストしてたわw


 あー、あれね。誕生日のやつ。

 うん。あれは酷かった。

 無茶ぶりというか、もう無茶の強要よ。

 あの時、なぜか最初機嫌悪かったな。なんでさ。

 あと俺とスミレさんがイチャついてるという噂を流したやつは誰だ?

 まぁ、後にしよう。


「まぁ、そんなわけでお勉強だ。つっても、中身は小学生レベルの問題を用意してる」

「兄者、それ舐めすぎじゃない〜?」

「もちろん満点が前提だ。国数英理社の5教科をそろえた。あ、算数な」

「兄者さん、わたしもやるんですか?」

「予定外なんだが、受けてもらう。あれだ、得点で勝負な」

「流石にさ、アタシ負けないよ〜?」

「つっても、普通にやったら八重咲が圧勝するな」

「ねぇ、兄者聞いてる?ねぇ」

「ってことでだ。八重咲には特別ルールを設ける」

「ハンデってことですか」

「あとは、八重咲自身の課題ってのかな。八重咲は、ザ・ビーストするたび減点です」

「え……」


 コメント:算数は舐めてるw

 コメント:八重咲の圧勝じゃん

 コメント:各20点の100点満点か

 コメント:各教科二問!

 コメント:10点ずつなのな

 コメント:えぐいルール追加されてんな笑

 コメント:これマイナス値あるぞ

 コメント:素の赤点と大量の減点どっちが上か

 コメント:底辺争いが確定してるの草


 普通にやって八重咲が暴走することはないからな。

 ところどころで俺がアニメの話を振ろう。


「ちなみに、勝った方にはご褒美があります」

「いえ〜い!」

「プリンは要らないですよ」

「はい、今ご褒美が無くなりました」

「えぇ〜!!!」

「プリンだったんですね……」

「まぁあれだ、罰ゲームも用意してるから問題ないな」

「ホラゲーは無しだからね〜!」

「ホラゲーは無しですからね!」

「借りて来たアニメ1クール耐久で見てもらいます」


 もともとは目標点数に届かなかった場合のやつだったんだが、いいだろ。

 それにこれは、そんなキツイもんでもないし。


 コメント:良心的だな

 コメント:朝までコースか?

 コメント:寝られないのは罰ゲームらしい

 コメント:ちな何見るん?


「アニメ!何ですか!?バトル系!?日常!?」

「学園モノだな。まぁ詳しくは後でで」

「これわたし勝つ理由ないじゃないですか」

「これに負けるのは屈辱だろうから勝ってくれ」

「兄者ァ!どういう意味だァ!」

「さっそく始めるぞー。まずは国語な。若干小学生難易度超えてるかもしれんが、まぁ常識の範囲内だからいいだろ」

「大丈夫です」

「よゆ〜」


 問1

 次の字を漢字で書け。

『しょくいんしつ』


 まぁこれは二人とも正解。

 よかったわ。これ出来ないとか、流石の俺でも引くな。


 コメント:職員室

 コメント:これは余裕

 コメント:さすがに分かるだろ

 コメント:毎日目にする

 コメント:呼び出しくらってんのか?


「ホントによゆ〜じゃん」

「そら小学生の問題だもんな」

「まずは序の口ですね」

「次、第二問な」


 問2

 次の言葉の意味を答えよ。

『虎穴に入らずんば虎子を得ず』


「え、これなんて読むの?えび?」

「この漢字はトラな」

「とらあなに、はい……ラズンバって何?」

「駄目だこいつ早くなんとかしないと」

「デスノ○ト!!!」

「はい減点」

「えぇっ!?」


 コメント:エビってwww

 コメント:そもそも読めないの草

 コメント:これ小学生向けか?

 コメント:一般常識

 コメント:八重咲w

 コメント:まずは1ビースト

 コメント:単位になってんの草


 マジでいい勝負になったりしねぇよなこれ。

 一応一回につき5点マイナスで付けてるけど、大丈夫か?

 愚妹にテストで負けるとか、俺なら暫く引きこもるぞ……。


「よし、答え見てくぞー」


 八重咲紅葉。

『リスクを負わないと目的のものは手に入らない』


 春風桜。

『子供は穴の中で遊ぶ方がいい』


「いや、どういうことだよ……」

「え、何が〜?」

「何が?じゃねぇから。なんの教育理論だこれ」

「だって分かんなかったもん〜!というかこれ小学生読めないよ!」

「高校生で読めてないのはダメだろ」

「兄者さん、答えはなんですか?」

「てか〜、兄者意味知ってる〜?」

「知らなきゃ問題出さないよな舐めてんの?それとも喧嘩売ってんの?」

「わ〜早く答え聞きたいな〜」

「はぁ……正解は『危険を冒さなければ、大きな成功は得られないこと』。ってことで八重咲正解」

「やったー!」

「アタシは?」

「どこをどう見たら正解だと思えるんだよ……」


 コメント:10対15

 コメント:いい勝負になってんの草

 コメント:いい勝負なっちゃいけないやつ……

 コメント:八重咲正解はしてるんだよな

 コメント:500円 あと6ビーストはしそう

 コメント:七回やって願い叶えるん?

 コメント:七つの大罪

 コメント:強欲の罪

 コメント:ビースト・シン


 言いたい放題言われてんな八重咲。








 その後も、何故かデッドヒートを迎えてしまった。

 ほんとになんでよ……。


 問

『2+5×(4+6)=』


「70〜!」

「バツ」

「えぇ〜!なんで!?」

「なんでは俺のセリフ」

「52ですね」

「正解です。はぁ……絶望した!実の愚妹の頭の出来に絶望した!」

「糸色望先生!!!」

「はい減点」

「はうぅ……」


 コメント:52だろ常考

 コメント:なぜ間違う

 コメント:八重咲ええ加減にせえよw

 コメント:オバカとオタクの対決草

 コメント:3ビースト

 コメント:算数の一問目は勝手になってた

 コメント:兄者も困惑してたw


 問

 和訳せよ。

『I want to see the temple』


 春風桜

『わたしはエビの天ぷらを食べる』


 八重咲紅葉

『俺は……俺は、寺が見たいんだ!』


「どっからツッコめばいい……?」

「わたしは合ってますよね?」

「意味は合ってるけどなんでジャンプ漫画風?」

「全然答えちがった〜……」

「天ぷらは、まぁ何となく分かったわ。どっからエビが出て来た?」

「だってシーって海でしょ?海の天ぷらって言ったらエビ天じゃん〜」

「なんでseeを知らねぇのにseaは知ってんだよ……」


 コメント:私はお寺が見たい

 コメント:エビwww

 コメント:海老の天ぷら→sea the temple

 コメント:ダジャレのセンスたけぇ

 コメント:驚くべきは真面目に考えてこれなこと

 コメント:恐怖だわw

 コメント:普段何考えて生きてんだ

 コメント:何かを考えていると思うか?

 コメント:あっ……(察し


 もう少し考えて生きて欲しいよ。

 人が考える葦ならこいつはもう人間やめてる。


 問

『重さ10kgの鉄球と、全く同じ大きさのプラスチックの球を地上5メートルから落としたとき、どちらが先に地面に着く?(ただし空気抵抗は考えないものとする)』


「超簡単じゃん〜」

「もう一度考えてから答えかけよ」

「え、これ引っかけ〜?」

「引っかけというか常識問題なんだが」

「兄者さん!地球でやった実験ってことでいいんですよね?」

「なんで八重咲は物理法則から抜け出そうとする……」


 春風桜

『てっきゅう』


 八重咲紅葉

『同時に着く』


「引っかけじゃん!!!」

「知ってるか?これ小学生の問題なんだぜ」

「これは問題が悪い〜!」

「お前は頭が悪い」

「うなァ〜!!!」

「どんな感情の咆哮だそれ」


 コメント:落下速度は重さに比例しない

 コメント:解説ニキ乙

 コメント:八重咲が常識人に見える動画

 コメント:八重咲が常識人じゃないのが前提なの草

 コメント:あ、ビーストした

 コメント:鱗滝○近次w

 コメント:相変わらずのクオリティ

 コメント:5ビースト目w

 コメント:あと2回で予言達成

 コメント:これで30対35か

 コメント:点が動かねぇw


 八重咲、判断が遅い。

 これで喜ぶのこいつくらいじゃね?


 問

『1575年に起きた長篠の戦いで、織田信長率いる軍が初めて有効活用した兵器は何?』


「兄者、ながしのの戦いって何〜?」

「戦」

「そういうことじゃなくて!」

「ヒントはやらん」

「ちっ……」

「おい舌打ちやめろ」

「兄者さん、戦国BAS○RAなら誰が好きですか?ちなみにわたしは真田幸村が──」

「減点覚悟でリクエストすんな。そういう企画じゃねぇから」


 春風桜

『しゅりけん』


 八重咲紅葉

『鉄砲』


「戦の中に忍者がいたと?」

「サムライが初めて使ったんじゃないの〜?」

「お前もう帰れ」

「ここアタシの家なんだけど……」

「真田っ!真田っ!」

「コールするな、やらねぇから。あと減点」

「横暴だァ!!!」


 コメント:草

 コメント:1200円 身代金(八重咲代)

 コメント:888円 八重虐助かる

 コメント:あれ?ラスト問題終わった?

 コメント:同点やん

 コメント:八重咲後半怒涛のビーストラッシュだったな

 コメント:半分諦めてたしw

 コメント:アニメ1クール耐久とか実質ノーダメだもんな


 なんでこうなるんだか……。

 まぁ、八重咲は今日泊まるらしいからな。

 罰ゲーム執行は特に問題ないだろう。どうせ二人ともやる訳だし。


「つーわけで罰ゲームだ」

「兄者〜、両方勝ちってことにしない〜?」

「赤点共にかける情けはない」

「えぇ……」

「まぁプリンは普通に食っていいけど」

「わたしは要らないです」

「そんな嫌いだった?」

「いや、まぁ、最近食べ過ぎたので……」


 あぁ、飽きたのか。

 気持ちは分かるわ。なんで腹をさすってるのかは知らんが。


 という訳で、三人でアニメ鑑賞だ。

 著作権的な問題があると悪いので、接続したヘッドホンでそれぞれ視聴となる。

 リスナーにはアニメの映像も音声も入らないので、ここからはマジのリアクション配信になってしまうな。


 ちなみに、タイトルは『An○ther』。

 いわゆるホラーアニメである。


「「いやァァァ!!!」」





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― 新着の感想 ―
アニメ、まあ予想はついてたww
[一言] 空気抵抗を考えないなら、密度も重量も関係ないのだぞ
[気になる点] 愚妹が職員室を書ける…だと? [一言] プリンプリン
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