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#とある聖女の魔王攻略

 配信開始から、約二時間が経過した。


「教えてくれ。俺はあと何人殺せばいい?」


 また一人、無惨に散っていく。


「俺はあと何回、リスナーとリスナーのキャラを殺せばいいんだ?」


 ガ〇ンは俺に何も言ってはくれない。

 教えてくれ、リスナー。












 時を戻そう。

 そうだな、丁度配信開始前だったか。


『すまない。スミレの方が連絡がつかなくてな』

「あの、ウチの愚妹も一緒なはずなんですが……?」

『こっちでも確認してるんだが、どうもね。君には本当に無理を言って申し訳ないが、二人が来るまで間を繋いで貰えないかな?』

「本気で言ってます?間違いなく燃えますよ」

『こうなったのもこちらの責任、君に非はない。対応はこちらがするから、お願いします』

「……わかりました。どうなっても知りませんよ」


 珍しく、あの社長さんが礼儀正しい言葉を使った。

 それほどまでに異常事態だったのだろう。

 ったくあの愚妹、今度は何を仕出かした?

 スミレさんの家に泊まりに行った次の日にこれとか、もう共演NGだろそれ……。

 幸いというか、配信の準備はスタッフさん達がどうにかしてくれる。

 まさかスミレさんとの初スタジオコラボがこんな形になるとは……。

 まぁ、あれだけ世話になったわけだし、こちらとしても恩には報いたい。




【ス○ブラ】コラボ配信!大会に向けて魔王に弟子入りします!【吹雪菫、春風桜、兄者】


「……はい、どうもー、兄者でーす」


 コメント:珍しい入り

 コメント:どうもー

 コメント:おはるー

 コメント:兄者どーん

 コメント:あれ?兄者だけ?


「あー、まぁ、えっと、なんかスミレさんと愚妹が遅刻しました」


 コメント:マジかw

 コメント:姫はともかくパイセンは珍しいな

 コメント:兄者ドンマイ

 コメント:これは何かあったな

 コメント:姫……遅刻……24……うぅ頭が……

 コメント:これは兄者が24時間待つ流れか?


「いや、それは割と本気で考えた。流石にスミレさんがそういう形で復讐とかはしないと思いたいが」


 あれで実はブチ切れたとか?

 怒りの矛先が監督不行届で俺に来たって可能性も、なくはないか……。

 あの人に限って、な……。


「一応、二人が来るまで間を持たせって指示があったんだが、どうする?」


 コメント:こっちが聞きたいw

 コメント:兄者の声真似配信まだ?

 コメント:兄者の雑談が聞けると聞いて

 コメント:120円 高杉〇助

 コメント:1500円 坂○銀時

 コメント:2000円 キ○ト

 コメント:500円 エ○ル

 八重咲紅葉:ペテ○ギウス・ロマネコンティ!!!

 コメント:2400円 モンキー・○・ルフィ

 コメント:乗るしかないこのビックウェーブに


 なんかよからぬ方向に話が進んでるぞ。

 まて、俺は金を取れるほどモノマネ極めてないから。

 ほとんど雰囲気で誤魔化してるだけだから。

 しかしここで全否定して同接減らすのもなぁ……。


「んじゃあれだ。ス○ブラで俺が負けたらリクエストに応えるわ。視聴者参加型にするから、3対1で勝負な」


 コメント:キタコレ!

 コメント:待て今から準備する

 コメント:ちょっとス○ブラ買ってくる

 コメント:ビギナーでどうにかなる相手じゃないぞw

 コメント:そこじゃねぇw

 コメント:参加型ねぇ……ちょっくら準備しますか

 コメント:600円 俺らの身代金

 コメント:それただの命乞いで草


 つーわけで、スミレさんにゲームを教えるはずがリスナーと殴り合う企画になった。

 なんでよ。



 そして、二時間が経った。

 そろそろ何連勝してるかも分からないとこまで来てる。

 誰か俺を止めてくれ。












【ドッキリ!】兄者ならパイセンがどれだけ遅刻しても許す説【春風桜、吹雪菫、兄者】



「ってことでね〜、別室で兄者の配信見てるんだけど……」

「大丈夫なのかな?兄者くん、すごく怒ってない?」

「いや〜、兄者はあれくらいするよ〜」

「でもほら、あの黄色いポ○モンさん、何もしないうちに落ちちゃってるよ?」

「離れて見ても兄者ヤバい〜、超ドS〜」


 コメント:そろそろ二時間やで

 コメント:パイセン引いてるじゃんw

 コメント:待ち続ける兄者のメンタルやべぇ

 コメント:やべぇのは裏でこの企画つくる姫のセンスw

 コメント:わざわざチャンネル2つ使ってるからな

 コメント:Twitterとかフル使用で準備してたわ

 コメント:パイセンのチャンネルに兄者を呼んで姫のチャンネルでドッキリ視聴か

 コメント:デュアル前提の企画なの草

 コメント:これで兄者キレなかったら尊敬

 コメント:むしろキレて姫虐

 コメント:1200円 身代金


「わざわざ兄者がTwitterとか確認しないよーに色々頑張ったからね〜」

「そうなの?どんなことしたのかな?」

「めっちゃゲームした」

「ゲームしたんだ」

「うん……めっちゃボコボコにされた……」

「ボコボコにされたんだ……」


 コメント:姫虐助かる

 コメント:この企画のためにボコされる姫w

 コメント:自ら姫虐されていくの草

 コメント:この話で銀シャリがすすむ


「私もボコボコにされないかな?」

「兄者パイセンに対してだけ超甘いからね〜」

「甘いの?」

「なんかめっちゃパイセンのこと好きそうなんだよね〜」

「へっ!へ、へへ、へぇー……」


 コメント:パイセンw

 コメント:動揺が抑えきれてないw

 コメント:照れスミレ尊い

 コメント:なんか一生からかいたい

 コメント:からかわれ上手のスミレさん

 コメント:ただし姫は素で言っている模様


「そろそろネタばらしした方いいかな〜」

「そ、そうだね!兄者くんが本当に怒る前にした方がいいかも」

「うん、だよね〜。ほんとに怒ったら笑えないからね〜……」

「そんなに、怖いの……?」

「怖いっていうか〜、いじわる」

「いじわる……?」

「アタシのプリン無くなっちゃう……」

「あれ?プリンの話だったっけ?」


 コメント:いじわるは草

 コメント:結局プリンなのかよw

 コメント:姫プリンのことしか考えてない?

 コメント:兄者第2形態はマジで強い

 コメント:夜斗をボコしたあれな

 コメント:ゲームではなくリアルであのエグめのプレイをすると

 コメント:400円 身代金

 コメント:2200円 身代金

 コメント:130円 プリン代

 コメント:キレられるの確定してるw


「てなわけで〜、ネタばらししてきま〜す。リンク貼ってあるから、みんなスミレパイセンの配信に急げ〜」

「アーカイブは残しますから、安心して下さいね」


 コメント:いってらー

 コメント:その先は地獄だぞ定期

 コメント:地獄への片道切符

 コメント:その先は姫虐だぞ

 コメント:天国だったわ
















 配信始めてから、どれくらいたった?

 わりと本気でゲームしてたから時間感覚がおかしくなって来た。

 あとたまに来る『だいまおうヤト』と『やえさき』は本物じゃないだろうな……。


「てか二人はまだ……──」


「「ドッキリ、大成功〜!!!」」


「…………」


「い、いえ〜い……」

「ど、どうもー……」

「…………」

「……」

「……」


 コメント:ドッキリ大成功!!!

 コメント:いえーい

 コメント:いえーい?

 コメント:兄者ー?姫ー?パイセンー?

 コメント:放送事故w

 コメント:何が起きてるw

 コメント:兄者は立ち絵だけど二人は3Dだから動けるだろw

 コメント:あれ?画面固まった?

 コメント:俺が時をとめた

 コメント:ザ・ワールド


 すまん、ちょっと思考が止まってた。

 えーっと、なに?ドッキリ?


「あー、つまりあれか。コラボ配信で遅刻してみたドッキリか」

「そ、そーそー。そーゆーこと〜。兄者のことはずっと裏で見てたよ〜」

「んじゃあ、スミレさんが愚妹のせいで事件に巻き込まれたとかそういうことはないと」

「うん、ないよ〜。……ねぇ、なんでアタシのせいで事件に巻き込まれるの?」

「そうか。いやー、よかったわー」

「ごめんなさい兄者くん!騙したりして」

「気にしてないですよ。スミレさんに大事がなくてよかったです」

「へ!?あ、う、うん。ありがとう……」


 コメント:パイセンー!!!

 コメント:照れスミレ定期

 コメント:兄者はこれ素でやってんのかな

 コメント:からかい上手の兄者さん

 コメント:弄んでんな〜

 コメント:実はブチ切れ兄者だったり

 コメント:2000円 身代金(二人前)

 コメント:スミレパイセンを虐待するのは許さん

 コメント:ガチ恋勢が来たか

 コメント:1400円 もっと照れスミレを


 つまりこの2時間、マジで俺にドッキリを仕掛ける為だけの企画だったと。

 撮れ高があったかは知らんが、まぁ企画として成り立ったならよかった。


「んじゃそろそろ終わりますか」

「ふっふ〜、何を言ってるのかな〜兄者〜?」

「なんだその安っぽいニヒルキャラ」

「アタシがただ兄者にドッキリすると思った〜?アタシはバカじゃないんだよ〜」

「いやバカだけど」

「今!兄者はリスナーさん達とゲームしまくって疲れてるはず!」

「で?」

「今ならアタシとパイセン二人で戦っても勝てる〜!」


 コメント:こすいw

 コメント:漁夫の利作戦で草

 コメント:天翔○閃はスキのない二段構え

 コメント:弐撃決殺w

 コメント:姫は二度刺す

 コメント:ここまで3対1で無敗の兄者だぞ……


 別室でずっと見てたってのは、俺の動きを研究してたってことか。

 ……ないな。

 スミレさんならまだしも、こいつにはそんな思考はない。

 純粋に、「ゲーム二時間もしたら疲れるじゃん」みたいな考えで動いてるな。


「じゃあゲームすんのかよ」

「するよ〜。ほら、この動画のタイトルは嘘じゃないから」

「弟子入りして真っ先に師匠倒しに来んのな」

「弟子は師匠を超えるものだよ〜!」

「八重咲辺りに教えられてそうな言葉だな」

「兄者くん……」

「はい?」

「こんなドッキリとかした後だし、多分嫌だとは思うけど、お願いできないかな?」

「構いませんよ。ただ、スミレさんこのゲームやったことってあります?」

「うん!実はね、今日のために猛特訓したから!」


 コメント:したな

 コメント:それはもう猛特訓したわ

 コメント:一体どれだけのガ〇ンと試合をしたか……

 コメント:パイセンゲームうまいん?

 コメント:つい先々週まで素人

 コメント:今は姫より若干弱いくらいじゃね?

 コメント:パイセンが強いのか姫が弱いのか

 コメント:ここ最近の配信が全部ス○ブラになるくらいには本気でやってたぞ

 コメント:打倒魔王って言ってたしな

 コメント:P.Sの魔王は夜斗じゃないのかよw


 そこから、さらに追加で一時間。

 愚妹とスミレさん相手にス○ブラ対戦に興じた。

 スミレさんの使用キャラはル〇ナ。初心者向けというか、クセがなくて使いやすい近接キャラって印象。

 ゲーム慣れしてないのかよく分かるプレイングだったが、ちゃんと基本は押さえているようで。

 まぁ一応弟子入りってタイトルだったし、ちょくちょくアドバイスとか入れながら配信を続けた。


「あ、そうだ!」

「どうしたんですか?」

「リスナーさん達に教えて貰った技があるんですよ」

「コンボとか?」

「えっと、そうじゃなくて……。次の試合でできたらやりますね!」

「兄者……ハンデぇ……」


 コメント:あれが出るのか

 コメント:オラわくわくすっぞ

 コメント:ついにあれを出す時が来たか

 コメント:やっちまえパイセン

 コメント:あれは最終奥義だぞ……!


 なにやらコメントの方が盛り上がってんな。

 取っておきってことは、俺も知らん裏技みたいなのか?

 少し楽しみだな。


「じゃあ、やりますか」

「はい!」

「兄者ァ〜!アタシだけ狙うの無しにしてぇ〜!」


 まぁ、確かにコンビプレイ説も否定できんし、ちょっと様子見するか。

 …………。

 ………………?


「あの?動かないんですか?」

「えっと、攻めてもらわないとできないんです……」

「カウンター系なのか……?じゃあこっちから行きます」

「どうぞ!」


 コメント:草

 コメント:攻撃のない平和な世界w

 コメント:カ〇ビィは暴れてるけどな

 コメント:絶対にパイセンに攻撃しない意志を感じたわ

 コメント:早くも残り1ストックのパイセンw

 コメント:そろそろ見れるぞ


 1ストック限定の技とかないよな……?

 カウンターも打つタイミングは結構あっただろうし……。


「あの、そろそろ出ますか?」

「はい、もう少しでできます!」

「……えっと、スミレさんの負けですけど……」

「ここでですね!えい」ポフッ!

「あー……」


 コメント:台パン成功

 コメント:これ台パンか?

 コメント:めっちゃ可愛い音が聞こえたぞ

 コメント:練習してよかったなパイセン

 コメント:台パンってか台ポン

 コメント:もう少し姫を見習ってもろて


 いや、リスナー共……。

 お前らスミレさんに何を教えてんだよ。


「それが、リスナーに聞いた技ですか」

「ゲームで負けた時はこうやるんですよね?」

「そうすることもありますけど、あー、とりあえず一回終わらせます」

「いえ〜い、兄者もう95%まで行っ……たァァァ!?ちょ、兄者ァ!?」

「こういう風にジャンプして浮いた敵を攻撃すると連続でダメージが入ります」

「な、なるほど……。なんだか可哀想……」

「まぁお互い殴り合うゲームなんでお相子ってことで」

「お相子……」

「クソ兄者ァァァァ!!!」ドゴンッ!!!


 コメント:姫虐助かる

 コメント:3210円 身代金

 コメント:姫の台パン音でけぇw

 コメント:台パンの格が違う

 コメント:ゲームする度叩いてるだけあるわw

 コメント:台パンの達人

 コメント:もう一回遊べるドン


 まぁ、そんなこんなで長丁場のコラボ配信は幕を閉じた。

 今思い返せばあの社長の電話すらグルだったのだろう。


 配信後、改めてスミレさんと話す機会が作れた。

 土下座は途中で止められたので、普通に誠心誠意頭を下げる。

 ドッキリのこともあってか、すんなりと謝罪を受け取ってくれた。


「よかったですよ。正直裏ではブチ切れてるかもとか思ってましたから」

「そんな。私も今日は兄者くんがキレてないか心配でしたよ?」

「あれくらいじゃ怒りませんよ。それに今日は念願叶ってスミレさんにお会いできましたし」

「あ、あー、えっと!そ、そういうことは本人の前で言わなくても……」

「ああ、すみません。ようやく謝罪ができて肩の荷が降りたもので」

「そ、そっかぁ……。……謝罪……?」

「はい」

「私に会いたいって、謝りたかったから?」

「まぁ、そうですね。流石に通話だけでっていうのは失礼かと思いましたし」

「兄者くんって、……その、恋、とか、してる?」

「いや、特に」

「じ、じゃあ……私の、勘違い?」

「え、何がですか?」

「その、兄者くんが、ガ、ガチ恋勢……だと、思ってたんだけど……」

「えっと、そもそもガチ恋勢ってなんですか?」

「……──────っ!!!」


 その後、何故か顔を真っ赤にしたスミレさんに怒られた。

 というか叱られた?っていうより文句を言われた?

 俺は何をされてるんだろうか……。

 乙女心をとかスケコマシとか、全くピンとこない単語で罵られてんだけどなんで?

 何を謝ればいいのか全く分からないが、気分を害した理由が俺にあるのは明らかだな。

 頭を下げて、無礼があった(恐らく)ことを謝罪する。

 で、なんかポカポカ両手で殴られた。

 痛くないし、なんならHP回復するかと思った。

 怒ってんだろうけど、無意識の優しさが滲み出ちゃってるんだよなぁ。



 後日談というか今回のオチ。

 ドッキリの企画者は愚妹だったので、食い飽きたプリンは八重咲に送り付けた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 女神かわいす(〃ω〃) [一言] そしてプリンは旅立ったのだ。ボケマスの旅に……紅葉師匠の元へと。
[一言] 100万円はらえばもう一回遊べるドン!(留年)
[良い点] 愛が愛が愛が愛が! [一言] 脳が、震える
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