#兄者くんと7人のV
「兄者〜なんか欲しいものある〜？」
「五億ドル」
「お金じゃなくて〜！」
「お前、ドルが何か知ってんの？」
「分かんないけど五億ってあれでしょ〜宝くじのやつ」
「まぁ、それでいいや。うん、それ」
「だからお金以外で〜！」
欲しいものか。
ここ最近はあんまり金に悩まなくなった。
学生時代とは違ってちゃんとした収入があるわけだからな。
買おうと思えば買えないことはない。
国とかは無理だけどそもそも要らんし。
いきなり言われると出てこないもんだな。
「なんだろうな」
「こっちが聞いてるんだけど〜」
「そういや洗剤がもうすぐ切れそうだったな。あと麦茶のパックも終わるし、トイレットペーパーは、まだあるか。あ、ボックスティッシュもそろそろ」
「ママか！」
「お前にツッコまれるとは」
「も〜そういうんじゃなくてさ〜ゲームとかマンガとかバスケットボール〜とかあるじゃん」
「どこの小学生のほしい物リストだそれ」
「そういうやつはないの〜？」
ない。
贅沢は敵ですとかじゃなくて、もっと根本的な話になる。
自分でどうこうならないものは望まないし、でかい夢も目標も持ち合わせは無い。
俺はドラゴンボ○ルを集めても不老不死くらいしか叶える願いがねぇみたいだ。
いや、不老不死もなんか嫌だな。
そんな時間もらっても暇つぶし以外することねぇし。
無限1アップも考えものだな。
「つーか、今度はどうした。宝くじでも当てたか？」
「え？あ〜ネタ探し〜」
「配信の？」
「そそ〜」
「次のゲームは報酬でも出るのか」
「それもいいね〜。罰ゲームばっかだし〜」
「勝手に設けてるのはそっちだけどな」
「罰ゲームだから得してないでしょ。兄者バカなん〜？」
「バカはお前だ」
儲けるじゃねぇよ。
日本語って難しいね。
【二周年記念】兄者は絶賛凸待ち中【春風桜、兄者】
「まさか二回目が来るとはな」
「わ〜！アタシの記念配信より見に来てくれる人多いの腹立つ〜」
「腹立つってか、それはもう君、色々と終わりなのでは？」
「終わってないから〜！アタシのおかげで二周年なんだからね〜感謝しろ〜」
「お前のせいな。恨みこそすれ……」
コメント：またまた
コメント：兄者おめでとう
コメント：兄バーサリー
コメント：待ってたぜこの時をよぉ！
コメント：スパチャ投げたい
コメント：これでデビューしてないってま？
いや、まぁ、そうね。
俺も事情を知らなければ、こいつ何言ってんの？とは思う。
未だにボディが挿絵のまま不動なのがせめてもの抵抗か。
凸待ちとか突発で来た人の挿絵を貼る配信だと俺もゲストみたいな図になるけど、そもそもホストじゃないからな。
ならなんで企画が俺がいることを主として行われてんだって話だが、やめよう。
その先にある結論が碌なものにならないことだけは分かる。
「何人かはね〜プレゼント贈ってくれたから来てくれるって〜」
「まぁいつメンだろうが。いやプレゼントって何？」
「来たら開ける〜」
「来たらってか、既にスタンバってる奴がいるんだが」
「紅葉ちゃんだ〜！やっほ〜！」
『二周年、おめでとうございます！』
「去年も言ったけど、祝えるような周年記念じゃねぇよなこれ」
『めでたいことですよ。こんなにも応援してくれる人がいるって事なんですから』
「応援されて嬉しいものでもないんだが」
『ツンデレ乙です』
「なぁ切っていい？トークデッキとか色々あるけど切っていいよなこれ？」
『もう少し話しませんかね！？せめてトークデッキ分くらいは！』
「プレゼントも開けてないよ〜？兄者〜」
「ああ、八重咲からもあるのか」
『もちろんですよ。ということで、ダンボール開けちゃって下さい！』
コメント：八重咲はやいはやい
コメント：愛が重い
コメント：はやくデビューしろ
コメント：プレゼント開封企画だったとは
コメント：また八重虐が見れる？
「……え？マジで？」
『ふふ、マジです』
「ケーキじゃなくて牛肉とは」
『それわたしのじゃないですね！？』
「あ、間違えた〜こっちの重い方だった〜」
「お前ダメだろ。そこだけはダメだろ。もうこれ贈ったヤツのサプライズ性能ゴミカスだぞ」
『こっちがサプライズですよ』
「はいこれ〜今度はちゃんと合ってる〜」
「……え？マジで？」
『マジです。……大丈夫ですよね？合ってますよね？』
「アケコン？しかも結構良いやつだろこれ」
『そう、それです！これはもうクリティカルでしょう！』
コメント：マジ？
コメント：姫www
コメント：さすがのエンターテイナーw
コメント：何故そこで間違えるw
コメント：肉とアケコン間違うわけねぇだろ普通！
コメント：兄者アケコン持ってなかったんだ
コメント：アケコンは意外すぎる
アーケードコントローラー。
通称アケコン。
ゲーセンの格ゲーでよく見るレバーとボタンがついているものだ。
昨今はアーケードゲームの家庭版が多く、家の中でガチャガチャとプレイしたい層も少なくない。
全てのゲームに互換性がある訳ではないが、格ゲーはこれでやりたい気持ちもなくは無かった。
俺も昔はゲーセン勢だったしな。
しかし、まさかこれを人から贈られるとは。
我ながらテンションが上がる。
「めちゃくちゃ嬉しいわ」
『ならもっと叫びましょうよ！』
「いや夜だし」
「いっつも深夜に騒いでるじゃん〜」
「それはお前らだけだ」
『テンション上げましょうよ！最高にハイになりませんか？』
「もう言っちゃってんだろそれ」
『ほら、こういう時言うセリフがあるんじゃないですか？』
「──愛してくれて……ありがとう！！！」
『エ〇ス！！！いや、待ってください死ぬ気ですか！？』
「さて、んじゃトークテーマだけど」
『切り替え速っ！？』
コメント：ワンピ〇スw
コメント：やっぱ上手い
コメント：これプレゼントすれば声真似聞けるシステムか
コメント：余韻がないw
コメント：落差すご
オススメの趣味とか俺ら兄妹への愚痴とかまぁ適当な雑談を数分。
後にも控えがいるので、八重咲には次に来た奴への質問というお題を提示してもらった。
お題は、兄者を動物で例えるなら？
それから時間が少し空き、スミレさんが連絡をくれた。
「ってことで、俺を動物に例えたら何だ？」
『動物……？ううんと、実在しなくてもいいのかな？』
「まぁ、いいが」
「魔王って言いそ〜」
「それを危惧して一瞬悩んだが、流石にスミレさんがそんな酷い回答はしないだろうしな」
『兄者くん、圧を感じるよ。その会話聞こえてるんだよ？』
「で、答えは？」
『えっと……ドラゴン？』
「本当にファンタジーな答えが来るとは」
「パイセン〜なんでドラゴン〜？」
『何でもできるから？ほら、兄者くん苦手なことってないし』
「無いことは無いが、これ褒められてんの？」
『褒めてるよ。え、褒め言葉になってないかな？』
「いや、ドラゴンて、うんドラゴンて」
『私の例えがあんまり良くなかったかも……』
「コメ欄はそれだ〜って言ってる〜」
コメント：兄者は一人で最強なんだ
コメント：逆鱗に触れたら最後
コメント：最強のイメージ
コメント：はかいこうせん
コメント：条件次第で願いを叶えてくれるもんな
コメント：キレたら手がつけれないやつ
コメント：上位存在は解釈一致
「ただ祭り上げられてるだけだよなこれ」
「ぎゃくれんにしょれた？」
「どんな読み間違いだそれ。雰囲気だけで読むな」
『あ、兄者くん、春ちゃん。プレゼントいこ？ね？』
「うん、別にキレてはねぇからな」
「パイセンのは〜メールのやつだよね〜。兄者〜スマホに送った〜」
「ああ。……ん。……ん？……なに、これ？」
『3Dモデルのデータだよ』
「はあ。……はぁ？」
『兄者くんが配信でも動けたら楽だって言ってたって、聞いたんだけど……あれ？』
「いたい！いたい！いたいいたい！兄者〜！耳取れる〜！」
「どこの誰だ悪質な戯言をスミレさんに送り付けた奴は」
「アタシじゃない〜！！！」
『兄者くん！春ちゃんじゃなくて、椿ちゃんから聞いたんだよ。兄者くんが欲しいものって何か分からなくて……』
「なるほど。なんでよりによってそいつに聞くかね……」
『ご、ごめんなさい……』
「謝らんでもいいが。はぁ……」
コメント：朗報 兄者3Dデビュー！
コメント：嫁の贈り物強すぎw
コメント：次回は兄者の3Dか
コメント：熱い！
コメント：ナイスつばきち！
コメント：さすがは自称舎弟
コメント：2Dすっ飛ばして3D化するの草
こうなるよなそりゃあ。
とんでもない速度でコメ欄が加速していく。
マッハか？
もう動体視力の限界超えてるって。
「つか、こういうのってそんなすんなり手に入るものなのか？」
『ボスに聞いたら、二つ返事だったよ』
「クソ、これだからふざけた会社のトップは……」
「ママもこういうのノリノリでやりそ〜」
「あの絵師さんも普通にイカれてるからな。予算管理とかどうなってんだよ」
『あー、えっと、あはは……』
「まさかとは思うが……いや、やめとこう。なんかもう色々と怖い」
『うん。ごめんね兄者くん。ちょっと困るもの贈っちゃって』
「まぁ、これはもうお互い被害者なんで」
「パイセン〜。トークデッキなんだけどね〜最近ハマってることある〜？」
『ハマってること？う〜ん、なんだろう』
コメント：さすがP.S
コメント：ボスがもう狂ってるw
コメント：まさかパイセンの自腹で作られたモデル？
コメント：これはつばきち来た時楽しみ
コメント：重すぎる贈り物
コメント：油取り神ママはノリノリで作りそう
最近ロックバンドの曲にハマっているスミレさんからは、兄者が苦手そうなことは？というお題を貰った。
ついでではないが、今のうちスミレさんにLIMEでメッセージを送る。
すぐに何個も出てくるかは微妙だが、ないよりはマシだろう。
そして案の定、今回の超ド級戦犯のつばキチガイが通話をかけて来た。
『ウィッス！つばきっすよ〜！』
「よくもまぁ顔を出せたな貴様」
『通話ッスけどね。兄者先輩の反応的に、スミレパイセンが来た後ッスね？』
「今から十分、お前に使ってやるから感謝しろ」
『なんか高待遇ッスね！でも今のつばきは画面の先ッスよ？そう簡単につば虐できると思ったら大間違──』
「甘鳥はコラボの時の集合は遅刻なしで、毎回一番最初に集まってる」
『はい？』
「企画書も打ち合わせも丁寧で、前日と開始前に必ず確認を取る」
『いや、あの、兄者先輩？』
「リアルで会う時も気を利かせて、他の人の分までお菓子だったり飲み物を準備してる」
『ちょ、兄者先輩？なんかおかしくないッスか？』
「マネージャーへの返信も早い。ボイスデータを提出期限の一週間前には必ず出してくれる。適度に休んでくれるし、その辺の自己管理が結構ちゃんとしている」
『やめろ！！！黙れクソ兄者！！！』
「まだ三分も経っていないぞ」
『やめろッス！つばきを褒めるなァ！！！』
コメント：いい子で草
コメント：めっちゃいい子やん
コメント：わからせられてるw
コメント：褒めてるのにつば虐になるの草
コメント：激しい営業妨害
コメント：つばきちムリすんなよwww
コメント：真面目な狂人
コメント：真面目に不真面目してたのか
きゃーこわーい。
ただ事実を述べてるだけなのにー。
多分事実だよな。
スミレさん目線だけじゃなくてマネージャーの話も出てるし。
甘鳥のいい子エピソードを教えて欲しいとは言ったが、即レスでここまで出せるスミレさんも大概いい子なんだろうな。
年上にいい子って言うのなんか違和感あるけど。
まぁ、それでいったら年上であること自体がもう違和感な奴もいるしノーカンってことにしよう。
五分くらい経ったところでネタ切れになったので、一時中断。
謝罪もそこそこにプレゼントの話になった。
「つばきちのはね〜これも重いんだよね〜」
「ちゃんと確認しただろうな」
「うん、大丈夫〜」
「……なにこれ？筋トレグッズ？」
『いや〜えっと〜3Dに必要な機材といいますか〜』
「いやー、甘鳥さんにはー本当に普段からお世話になってますからねー」
『待って下さい兄者先輩！せめて話を聞いて欲しいッス！』
「いやいやー、もう、ありがとうございますー。こんな、ねー、贈り物まで頂いてー」
『違うんッスよ！これはつばきなりに気を遣ってッスね！』
「よし、切れ」
「え、マジ？」
コメント：切ったwww
コメント：容赦ねぇw
コメント：これで3D配信ができるね！
コメント：これはひどいw
コメント：こうなるわな
コメント：つばきちの命乞い草
さて、あのアマどうしてくれようか。
既に執行した刑とは別で罪状増やしやがって。
色々と論外すぎてあいつだけ別枠になっちまったぞ。
次からはフォーマット戻さねぇとな。
その後、プレゼント予約があったいつメンは全員顔を出した。
音無からはマイク付きヘッドホン。
姉御からは包丁を貰った。
夜斗の贈り物はネタバレ済みの肉だった。
てかくせ強いな。
姉御の包丁とか、意図は分かるけど怖ぇよ。
普通に刃物を送り付けんな。
あと、何かとシナジーのある物が送られて来てるのは偶然か？
それともP.Sライバーの絆か？
前者の方が有力だな。
しかし、八重咲だけやたらと解像度の高い物を選んでいる気がする。
誰かにアドバイスでも貰ったか。
アケコンなんて選択肢出すのは、正直親でも無理だと思うんだが。
貰い物の肉を貰い物の刃で捌く。
ほどよい大きさで、味付けもシンプルに塩コショウとにんにく醤油のみ。
変に凝るよりもこれが美味い。
それがいい肉のいい所だ。
「飯、できたぞ」
「わ〜！……兄者。これなに」
「夕飯」
「それは？」
「焼いただけの牛肉」
「これは？」
「焼いただけの豆腐」
「アタシの肉は〜！？」
「腹と二の腕と太腿と顎と」
「いやだれがデブじゃい！！！」
