#ライバースレイヤー
「あー、んじゃまぁ、大会おつかれさん。乾杯」
「おう!乾杯!」
「乾杯!」
夜斗と姉御が片手のジョッキを高らかに鳴らす。一応俺も。
元気のいい事で。
VTuber最強を決めるカオスな大会『天下一V闘会』から一夜が明けた。
ド平日だが、労うなら早い方がいい。
そんな訳で今回の苦労人枠二人と打ち上げをしている。
「すまんな兄者。全然勝てんかったわ」
「別に謝ることないが」
「そうだぜ?実際、参加チームは手練ばっかりだったしな!」
「せやけどなぁ」
「夜斗でも6位止まりな時点で相当だろ」
「オレ達の場合は、色々あったからな……」
「せっかく教えて貰ったのに勝てなかったんが悔しいわ。次までにはもっと練習しとかなアカンな」
「燃えてんな、姉御」
「モモは負けず嫌いなところあるからな!」
「お前が言うか」
「兄者も大概だろ!」
俺、負けず嫌いなキャラだったか?
そりゃ負けたら次は対策なりなんなりするけど、普通の事だろ?
姉御のチームは、良くも悪くも正統派なチームだったようだ。
夜斗みたいな突出して上手いやつがいるわけでもなく、愚妹みたいなイレギュラー枠でもない。
平均ステータスは高いんだろうが、その分地力の差が出る。
上手く噛み合って上位になるっていうのがなかったのが大きいだろう。
「安定感があり過ぎるのも問題か」
「せやな。作戦固めすぎて、逆に柔軟性が無くなるいうんかな」
「その辺は経験値がものを言うからな。どっかのゲーム廃人くらいやってないと難しいだろ」
「誰が廃人だ誰が!」
「お前とは言ってないが?心当たりあるんだな」
「どう考えてもオレを指してたろ!目合ってたぞ!」
「経験とか言うとるけど、まずアンタがそういうの上手いやん。あんまあのゲームやってない言う割に」
「まぁ、ゲーム脳なのはあるからな。他のゲームの考え方が活きることもあるんだよ」
「それはそれでムズいやろ」
「兄者もなんだかんだゲーム廃人みたいなもんじゃねぇか?」
「お前と違って人生とステータスをゲームに極振りはしてねぇよ」
「オレだってしてねぇわ!」
ラックをマイナス値にしてまでパラメーター盛ってるだろ。
そこはステ振りと言うより固有スキルか。
むしろギフテッドとか常時デバフみたいだが。
姉御はゲームセンスの無さを嘆いているみたいだが、夜斗が異常なだけだからな。
センスよりも練習量でカバーするような性格だろうし、気にしなくていいと思うぞ。
それに、姉御達も夜斗チームも総合的な結果を見れば悪くない。
大会の成績はともかく、話題性というなら間違いなくP.Sはトップクラスだった。
何せ大会後の切り抜きの量は他箱よりも遥かに多い。
らしい。甘鳥曰く。
「つーかゲーム廃人レベルのプレイしたのは兄者の方だろ!」
「いや、あれはだな……」
「せやな。なに?14キルって。ほぼ4分の1を一人でヤってるやん」
「いや、だからな、なんか色々噛み合った結果だ」
「読み合いとか噛み合いの範疇じゃねぇだろあれは!」
「ホンマ、あの試合、阿鼻叫喚やったで」
正直、反省はしている。
だが分かって欲しい。
俺はあんなことがしたかったんじゃない。
なんて、無自覚に世界を滅ぼした系主人公のセリフを言っても意味はない。
願わくば、あの惨状が笑い事で収まってくれ。
優勝はしてないから許してくれ。
【大会ふり返り】みんな天Vお疲れさま~!【春風桜、兄者】
コメント:お疲れさま!
コメント:6位おめ!
コメント:めちゃくちゃ面白い大会だった!
コメント:兄者視点の提供求む
「は~い、おはる~!わ、みんなありがと~!」
「スパチャもすげぇな」
「アタシがんばったからね~」
「お前は一回夜斗に謝って来いよ」
「アタシ大活躍だったじゃん!」
「そうだな、凄まじい活躍ぶりだったな。ネタ枠として」
「そんなことないから~」
コメント:ネタ枠www
コメント:芸人枠
コメント:大会でふざけることが許されたチームだった
コメント:あれまさか本気だったとかじゃないよな?
コメント:P.SゲーマーズじゃななくてP.S芸人ズだろ
コメント:大活躍はしてた
「ほれ見ろ、満場一致でボケ扱いだぞ」
「みんなひどい~!ちゃんと勝った試合もあったじゃん~」
「ああ、余計質悪いよな」
「言い方~!てか、兄者試合見てた~?」
「いや、切り抜き回って来たんだよ」
「じゃああれ見た?兄者のやつ~」
「俺視点のプレイ映像ほぼないだろ。あの時、俺声だけのはずだし」
「うんん、なんか反応まとめ、みたいなやつのこと~」
コメント:あれはすごかった
コメント:めっちゃ笑った
コメント:推しが褒められてる動画はいいぞ
コメント:敵視点の兄者怖すぎwww
コメント:同時視聴しよ
「あ。いいね~!今から見よ、それ~」
「マジかよ」
ぶっちゃけ、切り抜き動画の存在自体は知っている。
あまり見たいものじゃないからスルーしていたんだがな。
だってなぁ、見方によってはほぼ放送事故だぞあれ。
なんか関係ないやつ交じって来た挙句、大量に被害者だけ出してどっか行ったみたいなもんだし。
まぁ、やっちまったことへの責任を取ると思えば丁度いいか。
これ誰の反省会だよ。
【切り抜き】エキシビションで無双する真・魔王への反応まとめ【天下一V闘会/兄者】
「じゃあ行くよ~?スタ~ト~」
──作戦会議──
『よーし、今からワンキルごとに愚妹の黒歴史晒してくぞー』
『やぁめぇてぇぇぇ~!!!』
『代わりに、回復系持たねぇから安心しろ』
『兄者すぐ死ぬじゃんそれ~』
『相打ちでもキルはキルだからな』
『この人やばいって~!キルのことしか考えてない~!』
『コメント:兄者より早くキルすれば回避できるね』
『頭いい付き人さんいた~!アタシがキルすればいいんじゃん!』
『今の俺が言うのもなんだが、脳筋かよ』
『兄者~、今なんか変なことしてんの~?』
『今、持ち物全部弾丸なんだわ』
『怖っ!』
コメント:殺人鬼w
コメント:殺意マシマシ兄者
この後、速攻で2キルした。
愚妹が相手に爆速で近付きまくるおかげでこっちのヘイトがほぼゼロだからな。
もはやいつも通りの流れでキルパクができた。
あと作戦会議ってか、もう即興企画説明みたいなもんだよなこれ。
「兄者のスナイパーさ~当たるのおかしくない~?」
「実質十字砲火だからな。相手からすりゃ位置的に避けにくいんだろ」
「ジュウジ、ホウカ~?」
「そのままの意味だ。前と横から物飛んで来たら避けらんねぇだろ」
「あ~たしかに~」
コメント:連携うますぎ
コメント:通りすがりの魔王
コメント:もはや災害
──5キル──
『わわ、ちょちょ、え、え?死んだ?わたし死んだ!?』
『マジッスか!?』
『どこから!?どこから撃たれたかわかんないよ!』
『これ、兄者先輩かもしれないッスね……』
『先輩?だれだれ?P.Sの人?』
『実質P.Sライバーと言っても過言じゃないんッスけど、桜先輩のお兄ちゃんッス』
『え?え?どういうこと?どういうこと!?』
『フッ……任せるッスよ。相手が分かればこっちのもんじゃぁ!!!』
『おー心強い!頑張れ!頑張れ!』
『兄者先輩ってことは!こういう所から狙ってくるんッスよね!!!』
『あ』
『あ……』
『ツバキちゃん……』
『普通に考えて、兄者先輩にタイマンで勝つとかムリッスね!あっはははははは!』
『兄者先輩強すぎ!強すぎだよ!』
このアマ……誰がP.Sライバーだこら。
あの時、何故か直進で突っ込んで来たから撃ち抜いたけど正解だったな。
てかもう一人の方が誰か分かんねぇ。
ある程度覚悟はしていたが、もうそういうところまで話広まってんのか……。
コメント:さすが兄者
コメント:容赦ねぇw
コメント:この人の狙撃精度おかしくない?
コメント:敵だらけで生きてる時点でおかしい
「そうだな、この辺から狂い始めたんだよな」
「つばきちのこと〜?」
「あいつは最初からとち狂ってる」
「兄者が勝ってることが狂ってると思う〜」
「その通りなんだよな。普通ここまで生き残ることねぇんだよ」
「兄者、チートした〜?」
「するか。どっちかつーとチートなのお前だし」
「アタシが強いってことか〜」
「あー、そーそー、つよいつよい」
「棒読みうっさ!」
「めっちゃ静かに言ったんだが」
「うざいってこと〜!」
まぁ、実際チートキャラだよな。
運が。
やたらと敵に会うのに何故かヘイトが全て愚妹に向くとかいう超常現象の原因は間違いなくこいつだろう。
まぁ、エキシビションだし、大会本編ほど気合を入れてやってるやつがあまりいないのもあるだろうが。
──8キル──
『なんじゃ!?何が起こうとる!?』
『兄者だな!間違いねぇ!』
『誰じゃ?』
『兄者!ってラップしてる場合じゃねぇ!』
『そんな気なかったんじゃが……』
『くっそ、なんでこんなにチーム集まってんだよ!兄者に近付けねぇ!早く片付けねぇとやべぇのによ!』
『のぉグランツ?兄者ってそんなにやばいのかの?』
『さっき撃たれたのは狙撃銃だろ?ってことは、残しておくと無限にマップ兵器みたいな事してくるぞあいつは!』
『なんなんじゃ、その邪悪な奴……』
『コメント:真の魔王』
『コメント:戦略兵器w』
『コメント:乱戦で相手にしたら死ぬ』
『すまん、グランツ、儂もうムリじゃ!』
『仇は取るぜ!逃がさねぇぞ兄者ァ!』
『おお、行けグランツ!』
『うおおおおお!……へ?』
『え?』
『ここでナイフとかやるか普通ぅぅぅ!?』
「うわ〜兄者やば〜」
「まぁ、シールド割られたらそりゃ逃げると思うよな。すぐ横に建物あるし」
「てか、兄者〜?ナイフ持ってたの〜?」
「甘鳥の死体から拾った」
「あ〜弾撃ったから枠空いたんだ〜」
コメント:瀕死で近接やるのヤバすぎw
コメント:やぶれかぶれで草
コメント:常時捨て身だから怖いものないの強い
コメント:夜斗の持ち物で回復してるの悪役過ぎるw
これに関しては本当に運が良かった。
夜斗は俺が回復持たずにやってることは知らなかっただろうし、普段ならもっと安全第一で動くからな。
身内メタというか、そら予定外の動きをされれば不意もつかれる。
乱戦のせいで夜斗自身も相当削られていたのもあるがな。
──12キル──
『きゃああああああ!!!』
『ぬぅああああああ!?』
『なんや!?どうした!?』
『何!?もう分かんないよ!?』
『明らかにやべぇ相手いるって!プロ!プロがいる!』
『落ち着き!何があってん?』
『見えないところから弾飛んでくるんだよ!敵どこ!?』
『紅上さん、逃げよう。つか逃げてくれ!なんか縛りプレイで10キルしてる奴がいるっぽい!』
『なんやそのバケモン!?』
『あ、この人!?コメントで兄者って呼ばれてる……』
『兄者!?』
『知ってる人なのか?紅上さん』
『知ってる相手やけど、アイツ、こんな強かったんか……』
『桃さん!敵来てるよ!』
『ああ、な、くっそ……これ、キル相手……クソ兄者!!!』
コメント:地獄絵図
コメント:ひでぇw
コメント:姉御ブチ切れで草
コメント:やっぱ兄者おかしいよ
コメント:縛りプレイで大会メンバーボコすのやばい
「姉御、怖ぇよ」
「これは兄者の方が怖いって〜。てかキルし過ぎじゃない〜?」
「お前にも責任はあるけどな」
「アタシが頑張ってるのに兄者がキルパクするんじゃん〜!」
「いや、お前が前衛してるから俺が死なねぇだけだろ」
「え、どゆこと〜?」
「俺がやられたらそれ以上キル数が増えることねぇだろ」
「……そうじゃん!ね〜!先に言ってよ〜!」
「実質言ったようなもんなんだが」
コメント:姫ェ
コメント:頑張れば頑張るほどキル取られる
コメント:結局黒歴史あんまり話してなくね?
コメント:あの回忙しすぎ
コメント:情報が多い
そういや途中からチームが集まりすぎて企画どころじゃなくなったんだよな。
あれも愚妹の運のなせる技か。
いい機会だし当日出せなかった奴を話すかと思ったが、盛大に泣きつかれた。
なんでこいつ命乞いしてんだ?
泣きてぇのはこっちだぞ。
この動画だけでもまた変な噂立つだろ。
縛りプレイではあるが、これはキル特化なだけだからな?
それでもやりすぎなのは当事者の俺でもわかる。
まぁ、元を辿れば愚妹が誘わなければこの惨状も生まれなかったわけで。
したがって、愚妹が悪い。
QED。
「よし、これで心置きなく八つ当たりができるな」
「八つ当たりすんな〜!」
「まずは、『未だに倍数の意味が分からない』……え、嘘だろ……?」
「え、分かんない」
「これ黒歴史じゃなくて黒現在じゃん」
「なんだそれ〜!」
俺も分かんねぇよ。
お前どうやって生きて来たんだ?
LIME
甘鳥『打ち上げしたんですか!?』
甘鳥『ツバキ以外のやつと!?』
俺『夜斗と姉御だな』
甘鳥『ツバキには何かないんですか?』
甘鳥『大会頑張りましたよ?』
俺『じゃあ打ち上げてやるか』
俺『どこまでがいい?大気圏とか?』
甘鳥『まさかの物理ッスか!?』




