#兄マンガ先生
VTuberの仕事をご存知だろうか。
俺はやらねぇけど身内が身内なだけに何かと情報が入る。
配信、動画の収録、歌ってみた、コラボの打診に企画立案。
ぱっと思い付くだけでもこれだけあるが、まだ序章もいい所だろう。
奇妙な冒険なら馬車からバァーン!!!した辺り。
配信準備は機材チェックから告知にサムネ、タイトル、タグ作成。
コラボなら事前の打ち合わせもあり、暇な時間で流行話題のチェックも欠かさない。
こう思うとかなり重労働だ。
そして今、リビングにいるバカは一心不乱に何かを書いている。
向かってる熱量的に勉強ではないだろう。
「何してんのお前」
「サイン書いてる〜」
「もうそのレベルの存在なのか」
「あ〜、これ疲れる〜」
「結構、量あるのか」
「200枚くらい〜」
「は?」
200って何。
その量の資料準備とか控えめに言っていじめだぞ。
しかもコピーじゃなく全て手書き。
もしかして嫌がらせ?
そこは流石に企業自体はホワイトなプリズムシフトさん。
CD発売の特典としてそれなりの数がいるのがこの色紙らしい。
は?CD?このダウンロードが主流の時代に?
というか誰のCD?
なんでツッコミ所が増えてんだ。
「ね〜あきた〜。あと兄者もなんかかいて〜」
「俺にサインはねぇ」
「違うくて〜、なんかかいてって〜」
「……描けと?描けと?」
「絵描け〜」
「いよいよダメだろ。色んな意味で」
「なんで〜?アタシもちょっと描いてるよ〜?ほら〜」
「いやお前のよく分からん謎キャラは知らんが」
「かわいいでしょ〜」
「なんでリンゴの被りモンしてんだ」
「ふるふるくんだもん〜。あとこれ頭だから〜」
「フルフルくんはむしろキモイの代表格だろ」
「キモくないけど〜!?」
ハントされる側のモンスターを見て「え、キモ……」とか言ってる愚妹を他所に、一応ボスに連絡を取る。
まぁ案の定OKが出たんだが、いいのかそれで。
許可が出たなら俺としては問題ない。
さてどうするか。
普通のサイン色紙ならそもそも絵を描く必要がない。
こいつが勝手に仕事量増やして苦労してるだけ。
やはりアホか。
「あれ描いて〜。パパのちっちゃいやつ〜」
「SDキャラか。お前の画像検索すんのなんか嫌だな」
「なんでだ〜。てかふつ〜に描けばいいじゃん〜」
「キャラデザ暗記するほど真面目に見てねぇわ」
「適当でいいのに〜」
「いいならこれだが」
「……めっちゃアホそうな顔してんだけど〜!?」
「だいたい合ってるし」
「これほぼカ○ビィじゃん!」
「お前が適当でいいとか言ったんだろ。これ描くぞー」
「ダメ〜!もうむっちゃ頑張って描いて〜!」
「は、めんど」
結局、春風桜のデフォルメ絵を描くことになった。
暇つぶしには丁度いいしな。
久しぶりに筆を執る。
たまにはこういうのもいい。
教科書に落書きしてる気分になる。
なんで落書きって楽しいんだろうな。
現実逃避だからか。
最近はもう何が現実かも分からなくなって来たな。
3D化してくれってなんだよ。
人間誰しも3Dだろうが。
【BPEX】ドS魔王と武者修行【甘鳥椿、紅上桃、兄者】
「まさか!まさか兄者先輩が来てくれるとは!いや〜絶対断られるだろうなとか思ってたんッスよ〜」
「別にお前に教えに来た訳じゃねぇんだが」
「ツンデレご馳走様です!」
「うるさいうるさい。ミュートしてくれ、二時間くらい」
「配信終わるじゃないッスか!」
コメント:珍しいメンバー
コメント:こいつらいつも喧嘩してんなw
コメント:実質ヤクザ二人
コメント:あぶねぇトリオ
コメント:ツンデレ兄者最高
今回のコラボ、主催は甘鳥だが俺の出演理由は姉御の方にある。
この前自己防衛の為にブロックしたのがバレた。
メッセージガン無視されりゃそら気付くわな。
裏で音無と既に色々話した後だったらしく、二郎に連れて行った事へのお咎めはなかった。
まぁそれでも圧を掛けられたが。
だから俺悪くねぇって。
「しばらく無視した埋め合わせはしてもらわんとな」
「ブロックはもうしねぇよ」
「反省してるんならええわ」
「次やったら自宅に凸られそうだし」
「せんわ!借金取りか!ウチは!」
「つか教えろって言われても、このゲームに関しては夜斗の方が上手いと思うぞ」
「敵になるメンバーに教えてもらうのも変やろ」
「敵?」
「大会メンバーが姉御は夜斗先輩と違うんッスよ」
「そうなのか」
「アンタとあんま絡んどらんメンバーやしな。知らんでも不思議ちゃうわ」
「甘鳥も違うのか?」
「ツバキは、夜桜コンビとッス」
「あー、夜斗ドンマイ」
「どういう意味ッスかね!?」
コメント:草
コメント:つばきちと姉御も敵では?
コメント:敵に教わってないからセーフ
コメント:夜斗が苦労する未来が見える見える
コメント:このチーム圧がすげぇ
そのままの意味だが。
暴走族二人連れてプロではないにしろガチ戦をやるとか。
うん、始める前から罰ゲームだわ。
なんとなく想像はしていたが、セレクトキャラからしてもう暴れる気満々だもん、このサイコ鳥。
BPEXにはキャラごとにスキルや特殊モーションがある。
索敵やバリアによる防衛、純粋な加速、ワイヤー移動など様々あり、その役割も変わってくる。
甘鳥の持ちキャラは煙幕など妨害系。
チームの援護などが主な役割だが、プレイヤーによってはスキルを離脱ではなく、奇襲や退路を断つといったテクニカルな動きでキルを狙うこともある。
愚妹が瞬足アサシンを使うための配慮だろうが、こいつは間違いなくキル職に使う気だろう。
「姉御は索敵か」
「兄者には立ち回りとか戦略みたいなこと聞こ思てな」
「そんな専門的なことは語れねぇって」
「兄者先輩!こっち居そうです!なんか影見えたッス!」
「だそうだが、姉御、どうする?」
「ウチが決めるん?」
「一応リーダーはそっちだろ」
「なら、ヤりに行こか」
「了解」
「了解ッス!」
「無闇に索敵は使わないようにな」
「そうなん?」
「とりあえず相手の方角は分かってるし、リロードもあるからタイミングを選ばねぇと効果が薄い」
「なるほどなぁ、結構ムズいな」
「突っ込んでいいッスか?多分まだバレてないッス!」
「姉御のサーチに合わせてな。サーチ入れたら敵の位置を教えてくれ」
「おっけい。うっしゃ、やったるか!」
コメント:連携やば
コメント:流石に上手いな兄者
コメント:これ本当に即席チームか?
コメント:これで大会出てくれ
コメント:結局兄者が指示出してて草
コメント:先生だから最初は見本だろ
コメント:強え!
とりあえず甘鳥が突っ込んで、逃げる方向に先回りする。
予め敵の位置が分かれば2対1を作りやすい。
あとは枚数有利でシールドを削るだけだな。
「アハハハハハハ!!!死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!!」
「ねぇ、この子怖いんだけど。笑い方も怖いし、あとセリフが物騒なんだけど」
「ツバキ、楽しそうやなぁ」
「楽しいッスね!全員蜂の巣にしてやりまッスよ!」
「もう相手のライフはゼロだぞ」
「次どこッスか!早く次行きましょう!」
「誰だよこのトリガーハッピー連れて来たの」
「ウチらのチームやけど」
「他人のフリしてぇ」
「そらそうと、やっぱ上手いやん兄者」
「だいたいのダメージはそこのキル中毒者だぞ」
「いや、その前の詰め方言うの?その辺やっぱゲーマーなんやなって思ったわ」
「そうでもないと思うが。姉御も普通に上手いし」
「歴はそこそこあるからなぁ。大会メンバーの中でも平均くらいはあるらしいで。リスナー情報やけど」
コメント:甘鳥やばすぎw
コメント:トリガーハッピーは草
コメント:姉御は上手くなった
コメント:最初期に比べると雲泥の差
コメント:努力の人
コメント:初めは殺されまくってブチ切れてたな(遠い目)
コメント:向上心がすごい
コメント:改めて兄者のセンスがおかしい
なんだろう、すげぇやりやすい。
甘鳥が突っ込んで姉御がフォローするって流れが既にある分、俺が自由に動けるのがいいな。
これでこの二人、大会だとチームじゃないのか。もったいない。
いや、姉御のチームメイトも暴走族二人の可能性がある。
甘鳥みたいな奴が何人も居るなんて思いたくないが、天下のP.Sだからな。
やべぇことが基本だし、一見やばくないやつはスイッチ押すと半狂乱するってことを散々見て来た。
なにより、そのやべぇ奴らに慣れて来たのが本当にやばい。
まじやべぇ、語彙力死んじゃうくらいやばい。
「順調過ぎて教えることねぇぞ」
「そんなことないやろ。普通に何するとか指示貰っとるし」
「最小限の連携だと思うが」
「これが最小限とか、レベル高すぎじゃないッスか?これはツバキ達、大会じゃ無双ッスね!」
「お互いレベル上がっとるの忘れんなや、ツバキ」
「いいッスね姉御!撃たれても文句はなしッスよ!」
「返り討ちにしたるわ!」
「バチバチなのはいいが、ここでやんなよ。巻き込むな俺を」
コメント:つばきちはためらいなく撃てる
コメント:姉御の圧に負けない数少ない女
コメント:覇気使いか
コメント:兄者は出ないの?
コメント:本当に無双してしまう
コメント:パワーバランス上出禁
コメント:大会の兄見たい
「姉御、ちょっと気になったんッスけどいいッスか?」
「なんや?」
「ゲームアイコンの絵って、もしかして姉御が描いたんッスか?」
「ああ、せや。ちょっと気に入って色んなとこで使っとるな、これ」
「そういえばLIMEのホームもそれだった事あったッスよね」
「しとった時期あるなぁ」
「いや〜、絵上手いのすごいッスね。兄者先輩もめっちゃ上手いし」
「いやいや、姉御とかと比べたら全然だろ」
「いやいやいやいや。そんな事ないッスよ。ね?姉御」
「せやな。前見た時も兄者うまっ!って思ったし」
「嫌味にしか聞こえねぇ」
「素直に褒めとるんやけど。普段から描いてるん?」
「昔ハマった時期があるんだよ。今は全然だ」
「へ〜独学なんッスか?」
「実質そうだな。見本があったから真似はしてたけど」
「漫画とかそういうん沢山持ってそうやもんな」
「まぁな」
コメント:模写だけであのレベルか
コメント:やはり強い
コメント:兄者できねぇ事なさすぎ
コメント:敗北を知りたい
コメント:兄者スペックおばけかよ
コメント:強すぎる
見本は親父だけど、あいつ感覚派だから教えるのが致命的に下手なんだよな。
日本語話せよってなってたわ当時。
そのせいでガキながらにひたすらマネる事ばっかしてたな。
愚妹が親父にリクエスト出して、それを俺が真似て、ヘタと笑う愚妹をシバく。
そんな永久機関を作ってた気がする。
「うわ、やば!すいません、やられたッス……」
「前出過ぎたな甘鳥」
「面目ないッス」
「かまへんかまへん。しっかし相手強いなぁ」
「そうだな。でも距離が結構空いてるし、多分チーム歴はそんな長くないだろ」
「そこまで分かるもんなん!?」
「これはほぼ直感みたいなもんだけどな。向かって右の方の敵釣ってくるわ」
「ウチが左端を相手すればええねんな」
「姉御が止めてる間に兄者先輩が2キルするんッスね」
「普通、逆だろ」
「ウチがタイマン勝つから見とき」
コメント:頑張れ姉御
コメント:兄者が当然のように2対1
コメント:安心して見てられる
コメント:相手ワンチャン別箱のV説
コメント:まさかwww
コメント:相手さんうまいな
「くぅっ、っかぁ!?マジかぁ、スマン、ダウンしたわ!」
「でも相手もダウンしてるッスよ!相打ちッス」
「そんなことあるねんな」
「相打ちはナイス」
「でもそっち二人やろ」
「いやもう一人……あ、勝ったわ」
「え……」
「マジかい……」
「なんで引かれてんの」
「なんで普通に勝ってるんッスか」
「相手結構上手かったやろ?」
「途中変にモタついてたし、ちょっとテンパったんだろうな」
「姉御の相打ちでビビったんッスかね」
「もしくは姉御の圧にビビったか」
「遠隔で圧感じるか!てかそもそもかけてへんわ!」
「現在進行形でかけてるし感じてるんだが」
コメント:逃げるか攻めるか迷ってそうだった
コメント:兄者お前……
コメント:姉御ドンマイ!
コメント:当然のように勝つな
コメント:圧出てますよ
コメント:殺気漏れてる
コメント:最初から圧出してたら勝ってたな
コメント:キレてる姉御に勝てるやつはいねぇw
時間の関係で甘鳥の蘇生は間に合わなかった。
決してめんどくさくてやってないとか、シンプルに生き返らせたくないとかそういうことはない。
多分。
姉御を起こして後半も残り数チームの所まで行ったが、乱戦は流石にキツい。
チャンピオンとまではいかなかった。
あそこまでいくと位置関係とか建物の構造など運も関わってくるからな。
人数有利でも負けることはある。
姉御はかなり悔しそうだった。
くそがぁ!とか言ってたし。
あれだけ清々しく悔しがれるなら、そら強くなるわ。
この人のスペックの高さは、センスというよりも性格ゆえの努力から来てるんだろうな。
これはしばらく時間が経ってからの話になる。
具体的には、P.S初のアルバムが発売された辺りのこと。
三年以上活動して来てようやくかなんて印象を受けるやつもいるかもしれないが、ヤバすぎて案件すらつかなかった連中だからな。
むしろよく出せたと思う。
春風桜
『ちなみにアタシを描いたのは兄者だよ〜』
CD発売当日、そんなふざけたツイートがなされた。
リプライは大いに盛り上がっていた。
だからそこまで上手いもんでも価値があるもんでもないんだぞ。
そんな騒ぐな。
特に理由はないが、愚妹のスマホの壁紙をホラー画像にしておいた。
愚妹は大いに盛り上がっていた。