表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/81

#一年間フレンズ

 最近、忙しい。

 入社から3年近く経つ訳だし、やる事もやらされる事も増えるからな。

 そんな世知辛い話をせにゃならんのは、何故かリアルだけではない。



 Viki

『兄者』

 無所属の非公式非公認非アカウントVTuber。巷では余りの出演頻度と存在感からP.S2.5期生として認知。

 P.S二期生、春風桜の実の兄。

 本人達曰く、兄妹仲は悪くないが良くもない。

 傍から見ればクソ仲良い。

 圧倒的なゲームセンスと金を取れるレベルの声真似が特徴。彼を一言で語るなら魔王。理不尽は許さず、逆らうものは容赦なく虐げるドSである。

 ゲーム配信に混ざることが主だったが、最近はゲームに限らず雑談や記念凸にも参加している。

 中には兄者が企画した配信も存在。



 何これ。

 いやほんとに。

 誰がVTuberやねん。

 なんか昔そんなことを言った気もするが、公式回答でも何でもねぇぞ。

 ネットって怖い。

 あと後半悪口じゃね?

 その他にも、情報サイトページには好物だの好きなゲームだのがビッシリと書かれている。

 どうして?どうしてこうなった?(幼女並感)


















【一周年記念(?)】兄者の兄者による兄者のための凸待ち【春風桜、兄者】


「ぎゃあああああああああ〜!!!」

「なんだこれはあぁん?」

「兄者、潰れる〜!頭、頭潰れるから〜!」


 コメント:草

 コメント:鼓膜ないなった

 コメント:開幕姫虐

 コメント:これはいい悲鳴

 コメント:初手DVで草


「言ったよな?次やったらアカウント消すってな?」

「待って兄者、ね、話し合お〜」

「貴様の命乞いに付き合うつもりはない」

「待ってって!ねぇ!待って!ほんとに!」

「俺は、お前の二周年半記念凸待ちとかいう企画だと聞いてんたんだが?」

「それもあるの〜!」

「ならこのタイトルはなんだ?」

「だって兄者、一周年じゃん?」

「よし消すぞ。リスナーの皆さん、今まで応援ありがとうございました」

「だ!か!ら〜!待ってって〜!」


 コメント:さよなら

 コメント:姫引退

 コメント:おかしい人をなくした

 コメント:初見です 引退するんですか?

 コメント:元気でな

 コメント:卒業配信見たかったな

 コメント:今日卒業式?

 コメント:寝るまで忘れないよ君のことは

 コメント:二年半ありがとう お疲れ様 ゆっくり休んで

 コメント:お別れは突然なんだ


 なんだこの無駄に統率の取れたコメ欄。

 こんな奴らに愛されてたのか。

 愚妹も幸せだな。

 グッバイ、サクラハルカゼ。


「しないから!!!」

「とりあえず言い訳を聞こうか」

「あのね、兄者が最初に配信に出ちゃってから一年経ったじゃん?」

「おん」

「でね、あの時アタシのデビューから一周年半だったんよ〜」

「おん」

「だから兄者の一周年はアタシの二周年半になる。お〜け〜?」

「そこまでは、まぁ良しとするわ」

「やった〜」

「で、このタイトル詐欺はなんだ?」

「アタシの二周年半記念より、兄者の一周年記念の方がおお〜ってなるじゃん」

「区切りがいいってことか」

「そゆこと〜」

「別れの言葉はそれでいいな」

「よくないけど〜!?」


 俺がデビュー、じゃないけども。

 乱入してしまったあの配信、実は愚妹のデビューから一周年半記念配信だったらしい。

 もう一年前とは……。

 愚妹が記念でス〇ブラ耐久を選んだ狂人ムーブはいつも通りだから置いといて。

 そんな偶然も相まって、昨日その記念日が来てしまったがために、今日ここでこういうことをしでかしたわけだ。

 どこに情状酌量の余地があるだろう。

 ないな。

 全俺が有罪判決を下した。


「めっちゃ準備したの〜!」

「人を騙す方面に努力したことをどうプラスに受けとりゃいいんだよ」

「ちゃんとTwitterとかの呼び掛けはアタシの二周年半だから〜。配信のタイトルだけこうしただけで〜!」

「つまりあれか、釣りだと」

「そういうこと」

「余計悪くね?」

「これくらいなら許してもらえる!……多分!」

「今からでも裁判配信にしてやろうかてめぇ」

「それにね、やることは変わんないから〜。ちゃんと凸くれる人とも話してるし〜」

「はぁ……まぁ、そうだな。ギリギリ、許容範囲か」

「ね、セーフ〜セーフ〜」

「お前のタイトル詐欺はゴリゴリにアウトだけどな」

「やること変わんないからセーフ〜」

「そのスタンスがもうアウトなんだよ」


 コメント:アウト

 コメント:ギルティ

 コメント:有罪判決

 コメント:裁判配信始めてもろて

 コメント:茶番が茶番にならないのがこの兄妹


 なし崩し的になるのは釈然としないが、仕方ない部分はあるか。

 企画の内容自体はほぼ同じだし、すでに巻き込めるだけの人間を巻き込んでるわけで。

 愚妹はあとでシバけばいいし、後日ちゃんとした手続きをした上で華々しく穏便に引退させよう。


「ちゃんとね、トークデッキもつくったんよ〜」

「ほう」


 トークデッキ

 ・兄者の嫌なところ

 ・桜が兄者に勝ってるところ

 ・その他ご希望


「……どっからツッコめばいい」

「ちゃんとしてない?」

「いや、なんでいきなり俺への罵倒から始まんの」

「なんか兄者、最近チヤホヤされてんじゃん〜」

「どんな嫉妬それ」

「それにね、アタシもバカじゃないんだよ」

「バカだけど」

「この一年でね、まともに兄者に勝てないのはわかったんだよ〜」

「10年以上一緒にいて分からなかったのか」

「だからもうね、勝ってるとこを見せてやるわけだよ〜」

「マウントのとり方強引すぎる。あと、最後のやつに至っては飽きて雑になってんじゃねぇか」

「飽きてないし〜。コラボしたいね〜とかそういう話もしたいじゃん」

「それセトリにするもんじゃねぇだろ。歌枠じゃねぇけども」

「はいじゃあ〜、凸待ち〜はじめるよ〜」


 コメント:兄者にゃ勝てん

 コメント:出てくるか怪しい

 コメント:かわいいしかなさそう

 コメント:はや!

 コメント:もう来たんか

 コメント:はえぇ

 コメント:出待ちされとるw

 コメント:開始とほぼ同時なのやばw

 コメント:これは監視されてますね


「めっちゃはや〜!?」

「怖いよ。……甘鳥か。納得した」

「あ〜、つばきち兄者のこと好きすぎるもんね〜。もう舎弟だもん舎弟」

「やめろ。その呼び名公式化しようとすんな。あと人聞きの悪さが極まってる」

『ウィーッス!、ツバキッスよ〜』

「いえ〜い、つばきちだ〜」

「お前、速ぇよ。羽生えたヒーローかよ」

『兄者先輩、オープニングトーク長いッスよ〜。めっちゃ待ったんッスから』

「知らねぇ」

「つばきち〜、いきなりだけどね〜、兄者の嫌いなとこある?」

『本当にいきなりッスね』

「これはやめてくれ〜ってとこでもいいからさ〜」

『あ〜、そうッスねー。……事務所の冷蔵庫をプリンで埋め尽くすのはやめて欲しいッス』

「まて、それは条件反射式限界オタクの仕業だ」

「え、兄者〜なんて?」

『サキサキ先輩、そんな二つ名あったんッスね』

「そして辿れば愚妹の愚行が原因だ」

「アタシ悪くなくない!?」

『あ!あと一個あるッス』

「何だよ」

『さっさとくっつけよ』

「死ね」

『罵倒が重くないッスか!?』

「どさくさ紛れで人を経験人数にカウントしようとした奴が言うなっての」


 コメント:さっさとくっつけよ

 コメント:もう結婚しろよ定期

 コメント:さっさとくっつけよ

 コメント:禿同

 コメント:つばきち前に兄者と付き合おうとしてなかったけ?

 コメント:ゲームに勝つためならなんでもする

 コメント:兄者の教え


「あとね〜、つばきち。アタシが兄者に勝ってるとこってどこだと思う〜?」

『無いんじゃないッスかね』

「ひっど!?」

「じゃ最後になんか、要望とかあるか?」

『さっさとく──』

「はいお疲れ」

「ぶち消しだ〜」

「やると思ってたからな」


 凸待ちの出待ちって奇行を平然とやってのけるやつだし。

 あと行動原理が舎弟(仮)すぎんだよ。

 ディスコードを切ってすぐ、次の相手が呼び出しをかけてくる。

 はっはー、人気だねぇ。

 誰が?


『わたしが来た!』

「お前配信見てるだろ」

『いやいや、たまたまですよ。あ、どうもー、八重咲紅葉です』

「紅葉ちゃんだ〜いえ〜い」

『いえーい』

「なんか、俺の嫌いなところを聞いてるんだわ」

『嫌いなところ……。最近、声真似しないところですね』

「いや、せんだろ普通に」

『なんでですか!楽しみにしてる層がいるんですよ!ここに!』

「俺、芸人じゃないし。てか私情じゃねぇか」


 コメント:ここにもおるぞ

 コメント:兄者の声真似ゲーム配信まだ?

 コメント:そろそろチャンネルつくってくれ

 コメント:もうなんでもいいからスパチャさせろ

 コメント:受け取るのも責任

 コメント:いつまでも待つぜ

 コメント:俺が死ぬまでに頼む


 ダメだ。

 リスナーの調教され具合が尋常じゃねぇ。

 どこの軍隊だよ。


「あぁ、あと、愚妹が俺に勝ってる部分ってどこだって話なんだが」

『うーん、チャンネル登録者数』

「いえ〜い、超勝ってる〜。……てか兄者のチャンネルないじゃん」

「じゃあ、ノーカンじゃね?」

「勝ってるのは間違ってないからいい〜」

「なんっにも悔しくねぇマウント取られてんだが」

『いい加減、兄者さんもチャンネルつくりましょうよ』

「意地でもデビューさせようとすんなや」


 コメント:10000円 たりる?

 コメント:20000円 設立費用

 コメント:12000円 使ってくれ

 コメント:50000円 こういうことだな


「うん違ぇな。赤スパをやめろ」

『ここまで望まれる人も珍しいですよ』

「どう見ても悪ノリだろ。あとノリに万札を使うな」

「紅葉ちゃん〜。あとね、なんかして欲しいこととかある〜?」

『範囲が広い!』

「今の話以外でなんか適当に、あるか?」

『あー、えっと、じゃあ、またコラボしましょう!』

「え」

『え……あの、え、傷付くんですけれど』

「ああ悪い。あまりにも普通過ぎてビビった」

『わたしそんなにおかしいこといつも言ってますかね!?』

「言ってると思う〜」

『桜ちゃんにだけは言われたくないけどね!』


 まぁ、どっちもどっちだろ。

 頭がおかしいオタクと頭がわるいオバカだし。

 あと最近、兄者デビュー化計画が影で進んでるとか聞いたんだよな。

 サイコな鳥が出てきちまったせいで、陰キャと陽キャが騒いでるんだと。

 仲が良いのはいいが、変なシナジー生むなよ。


 しばらくの雑談タイムの後、順当にじゃねぇけど、スミレさんからも凸が来た。


『兄者くん、一周年おめでとう!』

「……いや、なんの?」

『え?あ、デビュー……じゃないね。何記念って言えばいいのかな?』

「知らんがな」

「兄者の出演一周年〜でいいんじゃない?」

「あれ出演てか乱入だろ。完全に放送事故だし」

『じゃあ、乱入一周年記念?』

「ツッコミ所多すぎてスルーしてたけど、なんだそら」

『でも、兄者くんが配信に出るようになってもう一年なんだね』

「まぁそうですね」

「でねでね、パイセン〜。兄者のヤなところある〜?」

『嫌なところ……?う〜ん、いじわるなところ?』

「だから、なんで俺に対する評価ってみんなそんな感じなんだよ」

「日頃の行いじゃない〜?」

「喧嘩売ってんのか我」

「ほらそゆとこ〜」

「よーし、歯食いしばれ」

『暴力はやめよ?兄者くん』

「大丈夫ですスミレさん。教育的指導なので」

「体罰だ〜」

『兄者くんストップね!やめようね!』


 コメント:教育方針でもめる夫婦

 コメント:なんだてぇてぇか

 コメント:兄者のドSがいじわるで片付くの草

 コメント:ドSは本能

 コメント:治るもんじゃない

 コメント:不治の病

 コメント:やめらんねぇよな姫虐は

 コメント:止まるんじゃねぇぞ

 コメント:なんて声出しやがる姫

 コメント:いいぞもっとやれ


「まぁまぁ。それは後にするとして」

『後にするんだ』

「愚妹が俺に勝ってる部分を聞きたいそうで」

『勝ってるところ?お友達が多いとか』

「なんで俺ディスられてんの」

『違うからね!兄者くんが少ないってことじゃなくて』

「いやまぁ、リア友の数なら確かにそうだとは思うが」

「いえ〜い、兄者ぼっち〜」

「お前は先輩のフォローを聞いてなかったのか」

「ほら〜、パイセンやさしいから〜」

『お世辞じゃないよ!?』

「でも兄者友達少ないじゃん」

「友達百人も山の上のおにぎりも要らんし」


 コメント:涙拭けよ

 コメント:ハンカチ

 コメント:兄者にとれる唯一のマウント

 コメント:兄者自身が気にしてない問題

 コメント:やめてやれよ

 コメント:兄者も俺達とかわらないんやで


 そら一般人だからな。

 この配信で一般人卒業一周年とか言われてる気がせんでもないが。


「んじゃ最後に、なんか要望を」

『何でもいいの?』

「聞くだけならタダなんで」

「ちゃんと聞くから〜」

「叶えるとは言ってないだけで」

『酷い詐欺みたいだよそれ』

「まぁまぁ。んで、なんかあります?」

『今度こそ、オフで飲みたいかな』

「はい、じゃあ聞いたんで。お疲れ様でした」

『だからいじわるだって言ってるんだよ!』

「パイセンばいば〜い。またね〜」


 コメント:晩酌オフコラボはよ

 コメント:10000円 俺からも頼む

 コメント:2000円 募金

 コメント:夫婦配信待ってる


 やらんて。

 倫理的にも常識的にもできんし。

 あと、この人のペースに合わせてたら倒れる自信がある。

 まして注ぐ器を用意すんのは、ねぇ?


 その後も何人か、知らんやつからも連絡が来た。

 Vって意外と多いんだな。

 なんで俺は知らんやつにディスられるんだよ。

 まぁ、ほとんど絡みのない方々からは特になしだったわけだが。

 毎回配信見てますじゃねぇよ。

 俺の立場、いよいよ分かんなくなって来たな。































 夜斗のターン。


『よう、兄者、桜!一周年と二周年半、おめでとう!』

「さんきゅ。じゃ」

「じゃ」

『え、ちょおい──』


 切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
姫が兄者に勝ってる所……それは若さ!!!
[良い点] 相変わらずヤトヤトしてる 魔王様(自称)がこの扱いですか 一応精神年齢200歳らしいのに
[良い点] そっか もう一周年か 時間ははやいなあ(よそ見 [気になる点] S.Pの一期二期三期のまだ名前出てない人たちが凸したかな? それとも同業他社や個人から? [一言] 夜斗wwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ