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#通常配信が乱入配信でコラボ配信の兄者さんは好きですか?

「飯マズ属性って、いいよな」

「飯は美味いに限ると思うぞ倉元」

「違うんだよー!こう、得意じゃないけど喜んで欲しくて頑張る所に萌えるんだ」

「あそう」


 それ、正しくは燃えるだから。

 皆様は帰宅と同時に爆発音を聞いた経験はあるだろうか。

 俺はつい先日体験した。

 マジモンの地雷踏んだのかと思った。

 震源であるキッチンに行くと、カメラを回している愚妹と隣で目を回しているスミレさんがいたんだわ。

 そしてその奥では、レンジから海軍中将でも引くくらいモクモクと煙が上がっていた。

 とりあえず事情を聞いて説教した。

 冷凍肉まんを爆発させたらしい。

 うちのキッチンをマッドサイエンティストの研究所にしないでくれ。


「姫がさー、料理系のミニ動画出してんだけどさー、めっちゃ下手なんだよー」

「……なに?」

「この前とか明らかに鮭の切り身持ってきてマグロステーキ作るってー」

「冷蔵庫からなんの魚かも分からず取り出したんだろうな」

「多分なー。で、結局ダークマターになっててさー」

「……最近やけに多いのそれか」

「そうそう。最近増えてんだよミニ動画みたいなやつ」


 あいつ、たまに気分で料理するんだよな。

 その大体は黒棺を詠唱破棄で生み出しては捨ててるんだが。

 あれは本当に黒い炭素の棺だ……。


「それは、エグいな」

「あー、エグいわー。スパチャ投げるしかない」


 俺はタオルでも投げれば止まるだろうか。


「そういや、話変わるけどこの前なんかゲームの事ではしゃいでなかったか?」

「ん?あー、あれかー。実は大会選抜に選ばれてなー」

「へぇ、そりゃ凄い」

「つっても、なんか知名度で勝ち取った感もあるんだよなー。まー嬉しいけど」

「おめでとさん」


 趣味も全力投球だよなこいつ。

 金曜の帰りは、俺も疲れたなんて言ってられない。

 これから更に疲れるのだから。

 ……今日は、八重咲もいるんだっけか。
















【謝罪】兄者をデビューさせるには【春風桜、八重咲紅葉、兄者】


 コメント:謝罪!?

 コメント:説明はよ

 コメント:来たァ


「「ごめんなさい」」

「明日アドフィット耐久配信な。以上解散」


 コメント:ふぁ!?

 コメント:何が起きたwww

 コメント:終わり……だと?

 コメント:唐突に始まって終わったw


「あー、はい、ってことで、お前ら勝手に何しでかしてんの?」

「いや〜、このシリーズ好評だったんだよね〜」

「募集かけたらめっちゃメッセ届いたんですよ」

「既に3回やってるのが怖いわ」


 自己紹介もそこそこに、本題に入る。

 このよく分からんシリーズ配信。

 主犯は言うまでもなく愚妹だ。

 八重咲も共犯だけども。


 とあるコラボ配信の中で、俺の立ち位置が不明という話題が上がり、「ならもうデビューさせちゃお〜」というふざけたセリフから始まった企画らしい。

 で、八重咲とリスナーとグダグダ現実性皆無の話をしていた。

 までは良かったが、ここ最近はマジで俺をデビューさせようとする流れになって来ている。

 倉元から情報貰ってて良かったわ。


「『いっそ先にチャンネル作ってなし崩し的に配信させる』とかもはや詐欺だろ」

「先週辺りからなんかみんなが本気出してきてんだよね〜」

「落ち葉さん達のやる気凄いですよ?」

「それ指揮してんのお前じゃねぇだろうな」

「なんのことかさっぱり分からないですね」

「お前には愚妹の特製マグロステーキを食ってもらおう」

「ごめんなさいわたしが悪かったです」

「即行謝る理由が気になるんだけどっ!?」


 コメント:あれは食い物じゃない

 コメント:罰ゲームってより死刑

 コメント:兄者に話してなかったの草

 コメント:で、兄者のデビューまだ?

 コメント:早くスパチャを投げさせろ

 コメント:姫より推すまである


「つか、今もかなりグレーな存在なんだけどな俺」

「ならいっそyou出ちゃいなよ〜」

「いや、出ちゃってるわけで」

「でもでも、兄者さんって適正高いと思いますよ?」

「どんなフォローだそれ」

「ゲーム上手いし、オタ知識すごいし、体力もあって声真似までできて、さらにアドリブ力の化け物ですし!」

「それだけ聞くと四天王の融合体もいいとこだな」

「アタシの成分なくない?」

「要らない」

「んなぁ!?」

「まぁ血縁ですし」

「だからフォローの方向おかしいでしょ」


 コメント:兄者のスペック化け物じゃん

 コメント:夜斗のゲームと八重咲のオタクとパイセンの体力持ってんの草

 コメント:セルかよ

 コメント:姫の成分が血だけw

 コメント:そういや兄者って常時アドリブなのか?


「そう!それを言いたかった!兄者さんってヤバいんですよ」

「なんでこの子興奮してんの?」

「また変なスイッチ押すコメント見つけたんじゃない?」

「兄者さんって今まで台本とかって一切貰ってないんですよ。一応なんの企画ーとかは伝えてますけど、そこからはずっと即興のその場で話してるんですよ。頭おかしいですよね?」

「褒めたいの?貶したいの?」

「というわけでわたしが台本を用意しました」

「え、知らない。その台本知らないしこの台本も知らない」

「兄者〜、とりあえず読んでみて〜」


「どうもー、P.S三期生、兄者でーす。ゲーム配信メインで、まー雑談とかもしながらやってきまーす。よろしく。んで、兄者ってのは春風桜の兄ってことで。一応愚妹のあとを追いかけてVTuberになったって感じか。名前は、名乗るほどのもんでもないし、兄者でいい。つーわけでめでたくデビューしましたー。いえーい、ぴーすぴーす……」


 コメント:棒読みw

 コメント:草

 コメント:めでたくデビューしたw

 コメント:待っていたぜこの時をよぉ!

 コメント:早く切り抜け

 コメント:拡散希望

 コメント:あとはチャンネルだけだな

 コメント:外堀から行くスタイル


「八重咲」

「はい……!」

「明日、うちにこい」

「嫌です」

「安心しろ、手は出さない」

「本当ですか?」

「蹴る」

「暴力反対っ!!!」

「うわ〜兄者こわ〜」

「お前も共犯だからな?」

「これに関してはアタシ無罪だと思うんだけどぉ!?」

「はぁ……つか、勝手に変な設定まで追加してんじゃねぇ」

「結構現実に則して作りましたけど」

「なんで俺がなりたくてなったみたいなニュアンスになってんの」

「まぁ所詮設定なんで」

「お前が言っていいのそういうこと」


 コメント:メタいメタいw

 コメント:こいつらに関してはしゃーなし

 コメント:設定ってより自己紹介なんだよな

 コメント:八重咲はほぼ偽りないし

 コメント:無理があるのは姫くらい

 コメント:あれこそ詐欺


「あ〜、紅葉ちゃんの紹介文おもしろいよね〜。アタシ元ネタ知らないけど」

「適当におもしろいとか言うなよ」

「あ、読みます?」


『八重咲紅葉

 どこにでも居るごく普通のJK。アニメが大好きで、ルル様は俺の嫁と言うほど。最終的に、私自身が二次元になることだ、と結論付けVTuberに』


「どうです?」

「カオス」

「兄者、意味理解できてるんだ〜」

「とりあえずル〇ーシュを性転換すんな」

「そこはほら、構文ですし」

「あとごく普通の女子高生は卍解しない」

「ああ!まずは始解ですか」

「そういうことじゃねぇよ」


 コメント:卍解!

 コメント:散れ春風桜

 コメント:その散れは違う意味w

 コメント:改めて見るとカオスだな

 コメント:ガ〇ダム乗って卍解するごく普通のVTuber

 コメント:普通ってなんだっけ


「他の人のも見てみる〜?」

「他のって、俺あと二人くらいしか知らないんだけど」

「じゃあパイセンの〜」


『吹雪菫

 心の温かい雪女。自分が妖怪という自覚は薄く、人間と仲良くなりたい考えからVTuberになる。人里離れた雪山から来ているためコミュ障気味。妖怪に年齢はない』


「ほぼスミレさんじゃん」

「いやパイセンだけど」

「あの人優しさだけステ振りしすぎて人超えちゃったみたいなとこあるし」

「兄者さん、褒めてるのか馬鹿にしてるのか分かんないです」

「褒めてる。あとコミュ障の理由がマジっぽい」

「流石にそんなことないと思いますけど」

「パイセンって人見知りはげしーもんね〜」

「夜斗さんとの最初のコラボも結構テンパってたって言ってたし」


 コメント:褒めてるのか

 コメント:兄者とのコラボはあんま緊張してるイメージない

 コメント:純粋な慣れじゃね?

 コメント:もしくは相性

 コメント:もしかして運命?


 つか、お前ら妖怪と夫婦にしようとしてんのかよ。


 そういや夜斗が前に燃えたって話。

 どうやらスミレさんとの初コラボでいきなりファーストネームを呼び捨てにしたらしい。

 まぁキャラ的にするわな。魔王だし。

 で、馴れ馴れしいとガチ恋雪精から色々言われたと。

 ただそこからが伝説らしい(倉元談)。

 炎上した夜斗にスミレさんが自らコンタクトをとり、ほぼ毎週コラボ配信をしたという。

 最初は夜斗も引き気味だったようだが、炎上騒ぎが無くなるまでスミレさんはコラボすると間接的に宣言し、騒ぎが収まった。

 というか収めるしかなかったんだろうな、アンチ諸君……。

 あとこれ、天然でやってるとかあの人マジか。


「あとは夜斗くんだね〜」

「別に見んでもいいんだけど。てかなんで人の紹介文見てんの俺ら」


『サイサリス・夜斗・グランツ

 記憶を持ったまま現世に転生した異世界の魔王。精神年齢は200歳で今の体は成人男性。人間の生活を楽しみたいとゲームを始め、そこからVTuberという職に興味を持って今に至る』


「へー」

「反応うっす!」

「いや、なんかもう、誰よ」

「夜斗さんですけど」

「俺の知ってる夜斗って、厨二凶運ポンコツゲーマーなんだが」

「それはみんな思ってるから大丈夫〜」


 コメント:強運じゃなくて凶運なの草

 コメント:魔王は倒されるもの

 コメント:勇者より先に裏ボスに潰されてるんだよな

 コメント:現世の魔王にボコられてんの笑う

 コメント:解釈一致


 つーか、よくよく考えたらこんなのを半年も続けてるわけで。

 事務所側から文句が来ないのが逆に怖い。

 そろそろちゃんと話をつけるべきなのだろうか……。


 変な期待を持たせるのも酷ってことで、このコーナーは俺が自ら闇に葬った。

 そして企画者二人も闇のゲームに葬った。

 次回八重咲死す。デュエルスタンバイ。


 後日。

 二人が2時間の耐久配信を終えた事を確認した。

 八重咲は後半ザ・ビーストのテンションで乗り切るという荒業を見せたらしい。

 愚妹は産まれたての子鹿どころか瀕死の馬鹿みたいになってた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 兄者かわ…えっと、素敵…無敵?です [気になる点] なんだかんだでやりきる桜ちゃんも結構凄いですよね、 潜在能力は高いのでは? と思う事もしばしば まぁ、うん、アレですけど [一言] 流石…
[良い点] 瀕死の馬鹿がツボったwww
[一言] > 瀕死の馬鹿 んん?それって「みたい」なんです?そのままでは?
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