考察編02
妖怪ガチャドクロシステムでスケルトンが誕生し、魑魅魍魎たちは――。
「ブロースにしては左右対称で普通だな!」
「いつもの定期」
「そうそう、こういうのでいいんだよ。こういうので」
「フン、骨のあるヤツならいいが、どうだかな」
――などと謎のヤジを飛ばした後、そのまま解散となった。むしろスケルトンしか出ていないので最後のヤツは何を見ていたんだろうか? なお、新しいスケルトンはブロースに着いていった。その場に残ったのは、ここが現住所の俺としばらく俺を監督する役目を任されたマルホスだけだ。しかし先ほど明らかにされた、ここは墓地兼ガチャ現場という衝撃の事実……。この世界の住人は昼も夜も関係ない。前世では百鬼夜行は特定の日時に開催されていたが、この世界では常時百鬼夜行状態だ。残存魔力にさえ気を付けていれば死ぬ心配もないので無法地帯。いや、死ぬ心配がないから研究者にとってここは楽園なのか……? この先は哲学の領域になりそうだ。これ以上考えていてもドツボに嵌って極端な宗教問題になりそうなのでやめておこう。
「そういや、ここだけ地面が白いよな?」
少し気になったことを隣に座っているマルホスに向かって話す。
「ああ、そうだね。……ふむ、その様子だと気付いてしまったか」
それはつまり――。
「この地面の材質ってさっきのなのか?」
ザラザラしているが硬い地面をツンツンと指先で小突きながら聞く。本体と同じく黒い靄がかかった手だが感触はわかる。この世界の俺の中での七不思議の一つだ。なお、残りの六つの座は戦国時代の様相を呈するほどに苛烈な争いが繰り広げられている。
「ご名答。僕には何度も見てきた光景だからどれくらいかはわからないけど……相当長い間死骸化してきた地だからね」
「お、おう……そっか……やっぱりな」
そうするとここは墓地というより巨大で真っ平なスケルトンの上ということになる。つまり今の俺を前世で例えるならば、墓場でバーベキューしてそれを放置した上で野宿している……ということになる。精神衛生上きついものがある。しかし俺にはここしか居場所がない……いや、交渉してみる価値はあるか?
「なぁ、思ったんだが俺ってここ以外の場所で活動できないもんかね?」
「いや、誰もいない場所なら問題ないんじゃないか? 申請さえすれば……ああ、すまない。何も言ってなかったな。僕としたことがうっかり忘れていた」
ハハハ、と乾いた笑いを上げるマルホス。マルホス、貴様……重要なことをさらっと忘れるな。ここの住民たちはみんなうっかりさんなのか? しかし真面目な顔になったマルホスは続きを話す。
「……と言うわけじゃないんだ。ここの常識も知らずにどこかへ行かれても問題があるんだ」
そうだな、常識を知ることは重要。古事記どころか子供向けの絵本にすら書いてある。知らないで行動するヤツは周りをドン引きさせるチート主人公くらいだ。何が『俺、何かやっちゃいましたか?』だ。その言葉が出る時点でやらかしてるの承知の愉快犯だ。許されるのは泥沼の戦記モノで戦果がよくわからない状態での『俺、何かやちゃいましたか?』くらいだろう。
「そんな訳で僕がついてるんだけど、僕もこの魔導調査局からあまり離れるわけにはいかないからなぁ」
「じゃあ、やっぱりしばらくはダメなのか」
マルホスは公民館みたいな魔導調査局のほうへ向いて掻き消えるような低い声で答える。
「いや、方法はある。魔導情報システムへのアクセス権があれば問題ないだろう」
「なんだ、あるんじゃないか」
「いや、まぁ、その……えーとですね」
マルホスは少し言いにくそうにしどろもどろになりつつ、続きをポツリとこぼした。
「ゴホン、僕にとってもハゼルといると楽しいんだ……」
「お、おう……」
なんだよ、俺まで照れるじゃねぇか。さらに手をもじもじとさせて照れたように続けるマルホス。
「……こう、この世界でびっくりどっきりしてる姿をその場で見てるとどうしてもね……」
「マルホス、お前、俺の反応楽しんでるだけじゃねーか!」
上げてから急降下爆撃で焦土化させていくスタイルやめろ。マルホスはサド説が濃厚になった。
「ハァー……、じゃあどうすればいいんだよ? いや、さっさとアクセス権くれよ」
「まぁ、十分楽しませてもらったし追い追い機会はある……か。なら、早速だけど肩書きを決めてくれないか? 適当でいいから」
「は? 肩書き?」
「決まったらこの記録証に念じるだけさ」
マルホスはこれ以上はお手上げという態度で、いつか見たカード状のものを渡してくる。流れとしては魔導なんたらシステムへのアクセス権の……前世で例えるならばネットでゲームをするときに使うユーザー名的な感じだろうか? 手渡されたカードを目の前に、何がいいか思案する。俺の今の能力は自爆しかない……詰んだ。
「……と、特攻野ろ――」
「――研究者になるのもいいよ? ごめん、何か言いかけてたかな?」
イカン、しばらく沈黙が続いたので発言が被ってしまった。幸い念じてなかったのでセーフだ。研究者……そういうのもあるのか! 今回は念じる。
「じゃあ『爆発研究部長』で」
もちろん部下はいない。
「なんだか、かなり体を張った研究になりそうだね? さすがに危険だから、少し離れてるけど空いてる広めの場所はある……と思う。なかったら……オススメはしないけど海の上に作るのも手かな?」
歯切れの悪いマルホス。しかし、海という単語に思いを馳せる。この世界の海か……オレンジ色の空、暗い色の大地ときて果たして海とはどんな色をしているのだろうか? でもマグマの海というオチだけは勘弁な。
「魔導情報システムにアクセスしてから場所を決めに行こう。その方が後々楽ができる。記録証を装着してくれ」
「は? 装着? どうやって?」
「こんな感じ。よく見ててくれ」
マルホスが実演してくれるようだ。様子を見ているとローブからカラフルなネクタイをおもむろに出してきた。その派手なネクタイの裏側にはカードがペタリとくっついている。それを外すとまた付ける。最後に派手なオーラを放つネクタイを白っぽい地味なローブに隠す。
「ね? 簡単でしょう? 要は本体に付けるだけさ」
「え、あ、う、うん? そうだな?」
正直、派手なネクタイしか見ていなかった。本体に付けるだけという発言により、マルホスの本体は派手なネクタイ説が確定した瞬間だった。同時に七不思議の一つが消えた。果たして俺の本体はどうなっているんだろうか? しばし悩んだ後、黒い球体の靄の中にカードを差し込む。途端に周りにマルホス以外は誰もいないにも関わらず、この場に全員いるような変な感覚になる。これがこの世界のユビキタスネットワークなんだろうか。
『どうだろうか?』
マルホスの声がそのネットワーク内から聞こえる。慌ててマルホスを見上げ、魔導情報システム上で反応する。
『おう?』
「お、その様子なら無事成功したみたいだね」
わかる、わかるぞ! 知りたい情報を検索するとスッと出てくる。異世界版インターネットがここにはあった。そして前世のインターネット上の実に九割がどうでもいい情報だという話はこの異世界も同じだった。『年別 ヨーコ先生の先進的ファッション』、『魔法の無駄遣い方法 第十三章』、『スケルトンを磨きすぎて粉にしてみてから完全再現してみた』、『魔王城へのちょっかいの出し方 俺流マナー』……等々、やっぱりコイツらはろくでもない存在だと思える情報がある。
「さて、そろそろ暗くなる。夜が明けたら場所を探そう。それまでは申し訳ないけど、ここで我慢してくれ。僕は魔力を補ってくるとしよう」
「そうだな。情報も整理したいし仕方ないな。……俺も魔力を補おう」
前世の連れション並みの感覚で魔力を補う。この世界に来て二日目となるマルホスとの夜が幕を開ける。いや、今回はマルホスに構ってばかりはいられない。夜が明ける前にこの世界のことを整理しよう。俺の異世界生活はまだ始まったばかりだ!
グレッ〇・フェイス氏のネクタイはなんであんなに派手なんでしょうかね?(メーデー民感)
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