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偵察編03

前回、東と西を間違える痛恨のミスをしていました。上空から見るとハゼル君たちは反時計回りに回っています。


資料集めが大変で執筆速度が失速してるぞぉ!

 二週目は当初の予定より魔王城から少し離れつつも、データは取れるだけ取っていく。付近の魔力量、大気の流れの変化、それらを一週目の影響がないか比較していく。もちろんこの記録は全て残されるが、現状で何か変化があるならば計画の変更をしなければならない。


『異常は……なさそうだな。計画続行だな』


『そうっすね。あ、でも西側からの侵入はもう少し距離を稼いだほうがいいみたいっすよ? 少し西からの風が強くなってきたみたいっす』


『うん? あー、確かに』


 衛星からの情報によると一週目よりも東向きの風が強くなっている。一週目で瞬時に考えた計画を少し変更せざるを得ない。現在地点は魔王城の北。ここから西に真っ直ぐ飛ぶことにした。二十キロメートルほど進んだ後でUターンして魔王城へと向かい、ヨーマの瓶を投げ込んだら急旋回して南へと離脱する予定だ。


『えーと、旋回は前よりもバンク(傾き)角が大きくなる。距離もそうだが高度も稼いでおくぞ』


『了解っす! 一週目で軽くなったから少しは上がれそうっすね』


 かなり急な旋回でバンク角は左に六十度、旋回時には飛行スピードも落とさなければならないので、もし何かの手違いで失速しても回復できるだけの十分な高度は稼いでおきたい。そうすれば位置エネルギーを運動エネルギーに変換できる。ここまで順調なので墜落は避けたい。エンジン出力を上げつつ昇降舵(エレベーター)で機首を上げつつ、そういった旋回時の打ち合せしていると、そろそろ旋回するポイントへと到達する時間になっていた。


『よーし、後少しで旋回を始めるぞ』


『まずは速度を落とすんすね?』


『ああ……エンジン出力を絞って……』


 旋回時は機体の姿勢指示器だけが頼りだ。徐々に速度が落ち、旋回に入るタイミングになった。


『じゃ、旋回始めるぞ。計器をモニターしててくれ。』


『バンク角と機首方向っすね! バッチリ見ておくっす!』


 垂直尾翼の方向舵(ラダー)と、主翼の外側についている補助翼(エルロン)を操り、バンク角をゆっくりと六十度まで傾けて旋回する。外は真っ暗でよくわからないのが幸いだ。前世の感覚なら、旅客機に乗っててなら左を見たら一面の海という状況は体験したくはないだろう。旋回するに従って追い風に乗る。そうすると対気速度が落ち、失速して機首が若干下がる。高度が落ちると今度は対気速度が上がっていく。かなり荒っぽい旋回だったので、途中から機体が風を切る音が聞こえていた。


『高度を上げておいて正解だったな』


『そうっすねぇ……えーと、もう少し旋回したら魔王城が正面に来るっすね』


『だなぁ。それじゃ、今度はエンジン出力を上げるぞ?』


『追い風っすからねぇ。了解っす』


 無事に旋回を終えて魔王城へと真っ直ぐに進んでいく。


『そういえばヨーマの瓶はアームに……ああ、きちんと固定されてるな』


拘束具(シートベルト)つける前に済ませたっすよ。割れてなきゃいいっすけど』


 仕事が早いアレックス。


『じゃ、魔王城の方向に放り込んだら、さっさと予定のコースに戻るだけだな。高度を上げてまた急旋回に備えるとするか。俺は操縦に専念するから投げるのは任せるぜ』


『確実に魔王城にぶち当ててやるっすよ!』


 いや、そんな変態(TASさん)じみたことは求めてないんだが……と心の中だけでツッコミを入れる。昇降舵(エレベーター)を操作して、機首を上げて高度を上げる。エンジンは上昇するための出力を上げている。


『そろそろ魔王城……のはずだ』


 もちろん真っ暗なので確証はない。


『今投下したっす!』


『え、もうしたのかよ? はえーな……まぁいいか。旋回だ』


 またバンク角六十度で旋回を始める。今度はさっきとは逆の右方向への旋回となる。追い風のために旋回すぐの制御が難しかったが問題はない。スムーズとは言い難い急旋回を終えて、二週目の終盤に差し掛かる。


『そういやブロースの取り付けたあの装置、起動してなかったな』


『あー、そんなのもあったっすねぇ』


『後はぐるぐるする周回作業だしな。三週目で使ってみるか』


『どれくらいの性能がある気になるっすね!』


 三週目がそろそろ始まる。ブロースが取り付けた装置――空中魔力供給機器とでも名付ければしっくりするだろうか――を起動する。途端に俺の近くの魔力密度が高くなる。


『これ、かなり効率的に魔力が吸収できるな。……というか効率的すぎる!』


『そうなんすか? あー、こりゃすごいっすねぇ』


『俺の方に燃料(精製魔水)がいらないくらいだ! ちょっとこのままだとヤバイから燃料(精製魔水)の供給は止める!』


 慌てて供給を止める。まさかこれ程とは思わなかった。三週目以降ではこれまでに取れたデータとの変化の他にブロースの空中魔力供給機器のデータも取っていく。その結果、飛行スピードが速いほど魔力の吸収効率が高いことが分かった。これはスピードが速くなると、それだけ空気取り込み口に入る空気の量が多くなるからだろうと予想ができる。無論、間違っているかもしれないので戻ってからの解析待ちだ。



 その後も淡々と魔王城の周りを周回し、データ収集をする。今の俺たちは、まるでソシャゲの周回作業を延々とする機械(BOT)だ。


『えーと、これで十週目になるか』


『そうなるっすね』


 正直な話、データ収集の作業もそろそろ飽きてきた。なぜなら魔王城の周りの変化がないからだ。


『変化もないしそろそろ帰るとするか。燃料(精製魔水)が予想外に余ってるから後十週はできるけど、さすがにもういいだろ……』


『確かに』


 アレックスも同意する。魔導情報システム上での住人(科学者)たちの様子を垣間見ると、魔力ステルス技術の方法で議論していてもはや俺たちのことは眼中にないって感じだ。そんな訳で帰還することにしたのだった。


『戻るのはアレックスに任せる。今回の経験でなんとかなるだろ?』


『もちろんっすよ!』


 帰還の飛行はアレックスに任せ、俺はアレックスの操作で制御されるエンジンに成り果てる。


『じゃ、一刻も早く戻るっすよ!』


 アレックスはそう言ってエンジンの出力を上げ、機体の限界ギリギリのスピードを出す。まぁ、別に問題があるわけではないしいいかと考え、出力を上げる。スピードを限界まで上げると効率は悪くなるが、燃料(精製魔水)は有り余るくらいある。しかし、俺たちの故郷(百鬼夜行の地)の近くまで来て、気を抜いていた俺は一瞬にして機体から分離していた。


『は⁉』


 当然、俺は戸惑う。記憶を逆再生して何があったかを悟る。ブロースの取り付けた装置の部分から亀裂が入って尾翼が俺ごと吹き飛んだ。大体は接合部の強度を低くしたブロースのせいだ。事故原因の究明すら簡単なこの世界に乾杯! しかし俺はこのままだといつものように墜落!


『あ、兄貴ぃー! どうしたらいいっすか⁉ とりあえず飛んではいるんすけど!』


 アレックスも混乱しつつ、なんとか飛行している。まるで曲芸飛行だ。垂直尾翼が完全にないため、エンジン出力と補助翼(エルロン)昇降舵(エレベーター)等、使えるもの全てを上手く制御した飛行をしている。


『とりあえず……速度を落とさないようにするのとバンクさせないように……後は……あー、何だろ?』


 俺自身も未知の領域なので対処法がわからない。飛行を安定化させるためのもの(尾翼)がないため、厳しい状況なのは明らかだ。なお、俺は今も落下中で陸地から少し離れた海に墜落予定だ。


『まぁ、俺よりはマシだろ? 墜落するにしても俺よりも陸までの距離が近いし』


 そう言ってすぐに俺は尾翼のパーツごと海に墜落。西から東への海流に乗って陸地へと戻る予定だ。


『そ、そうっすね! なんとかしてみるっす!』


 アレックスはその後、言葉通りになんとかして飛行していた。制御も完璧(変態的)で無事に滑走路まで辿り着き、離陸時には無駄に作ったと思っていた滑走路をギリギリまで使って着陸していた。これには魔力ステルス技術のことを考えていた者たちも、着陸して完全に制止するその瞬間まで色々な方法を議論し、協力していたのが大きい。全員の考える力を全て出し切った結果だ。



 結局、俺が戻ったのは墜落から一日経ってからのことであった。もちろん俺のことを心配していた者はアレックス以外誰もいない。俺が戻った頃には皆、思い思いに作っている試作機が大量に滑走路の端を占拠している。唯一俺の帰還を気にしていたアレックスも「あ、兄貴やっと戻ってきたんすね」と言って魔王城周回作業のデータの比較をしていた。なんだろ……このもにょっとした感じ……。

一応、旅客機の最大許容バンク角は60度で設計されているようです。

35度で警報が鳴るようです。

今回のモデルの航空機、DC-10で短時間ながら140度までやったパイロットもいるのでなんとかできる場合もあります。

DC-10をモデルにしたら何もないはずがないじゃないですか!

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