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開発編01

加筆修正完了です(8/28 22時頃)

 ブロースは電撃戦のように盛大に動き出し、その発想の奇抜さでは他の追随を許さない勢いだ。対抗馬のヘイルバルは現在も戦意喪失状態。奇抜さは抜きとして、俺たちもまともな偵察手段を考えようと思っている。今日も筏に乗りつつアレックスと作戦のコンセプトを考える。ブロースは海中からのアプローチ法なので、俺としては空からのアプローチ法を採用することにしたい。しかしアレックスは海に拘っている様子。


「ブロースニキを見てると……やっぱ海から行きたいっすねぇ」


「そうか? うーむ、魔王ロ……ゲフン、魔王城がある地点はなんとか確認できたが、行く方法となると難しいよな。特に距離が微妙に離れているのが問題だな」


「距離がそこまで問題になるんすかね?」


「ほら……ここから魔王城の距離だと、精神的に限界があるだろう? この前行けたのはブロースに負担がかかりすぎていただろう?」


「そこをなんとか楽にできないっすかね? 魔王城まで続く道を作る……いや、あるいはこの陸地が動いたらいいんすけどねー?」


「お前……陸地動かす気かよ」


 アレックスはこの世界でダイダラボッチにでもなる気なのだろうか? しかし、よく考えてみると確かに陸地が動いたら楽だ……実験もすぐできて効率がいい。動く陸地と航空機……前世の記憶から空母という発想はあるが、この世界で作っても意味がなさそうだ。勇者はミサイル(特攻兵器)がここの常識。効率的で、しかも運用方法が楽なミサイルキャリアが必要になる。そこまで考えた時、アレックスが不敵な笑みを浮かべ、徐に語り出した。


「フフフ……兄貴、いい方法思いついたっすよ!」


「お? なんだ?」


「兄貴、水の性質って他の物質と違う特性あるっすよね……?」


 かなりもったいぶった言い方でアレックスが語り始める。一体何を言い出す気だ……⁉


「氷って水に浮くじゃないっすか。最近は黄水球全体が急激に寒冷化し始めて海水温も下がったし、この手を使いましょうよ」


 そう言ってアレックスは筏の周りの海水を魔法で氷結させ、氷山にし始めたのだ……! うーむ、発想がかなり飛躍している気がするが、氷山を作って浮かべるか……手間的にどうなんだって気がするが選択肢を増やすことはいいことだと思う。しかし問題もある。


「なぁ、海水温が下がったからと言って、溶けることも考えないとイカンぞ? あと、浮かぶのはいいんだが、航行はどうする気だ?」


「大丈夫っす! そのへんもきちんと考えてるっすよ! 他にも凍らせる係を決めて……」


「お、おう……その係はどれだけ必要になることやら」


「で、航行は海流に任せるっす。ちょっと時間はかかると思うんすけど、多分そのうち近いところを通るはずっす! 完璧っすよね!」


 そう言ってアレックスはドヤ顔をする。ちょっと時間がかかるって尺度がかなり長い気がする。いつ辿り着くかわからない、流れに任せて漂流するという、気の遠くなるようなあてのない旅か……。あてのない旅自体にはそそられるが、今の状況を考えるとそれじゃイカン。


「なぁ、魔王城の近くまで氷山をずっと維持し続けるのか?」


「もちろんっす!」


「俺は遠慮するぞ……そんな計画」


「えぇー、なんでっすか⁉」


 そもそも、そんな辿り着く過程が運頼みというのにどれだけの賛同が得られるのだろうか?


「ハァ……時間かかりすぎるだろうが……。辿り着く確証もないし、海底が浅かったら座礁して動けなくなるぞ?」


「時間がかかるのは問題ないとして……あぁ、確かに座礁は問題っすね。うーん、完璧だと思ったんすけど……」


 そう言って遠い目をするアレックス。付き合いがそこそこ長くなったからわかる。アレックスは短絡的に動いてしまうところが短所だ。しかしその短所もよく考えれば新しい発想の元になることもあるという長所にもなり得る。いや……アレックスだけじゃなく、この世界の住人のほとんどに言える特徴だった。


「うーむ、俺としては気流が安定している高高度からの大型の航空機での侵入に賭けたいな。気流が乱れているのは一部だけなわけで、黄水球全体で見るとそうでもないからな」


 実際、気流が安定していないのは陸地の周囲と北極と南極の部分だけだったりする。他は風が強いがそこまで乱れているという訳ではなく、ほぼ一定の方向に吹いている。前世で言えばジェット気流ってやつだろうか?


「ブロースニキが海中からだし、うちは空からってことっすね」


「そういうことだ。それと今回は観測に特化しておきたい。挑戦する前に、まずデータをしっかりと取ってからにしたいんだよな。魔法弾も前とは違っていたしな……」


「そうっすねぇ。あんなのどうやって回避したらいいんすかねぇ?」


 アレックスと共に、データを取るための機材を大量に積むというコンセプトで航空機を考えていく。前世で言えば輸送機か、あるいは旅客機に近い。機体の大まかな形状を考えた後はエンジンの位置をどこにするかで悩む。


「アレックス、エンジンの位置なんだがどこにするか悩むよなぁ?」


「むむ? 機首じゃだめなんすか?」


「えっと……それはなんでだ?」


「いや、月から兄貴が脱出してきた時は兄貴は機首(先端)にいたじゃないっすか。また兄貴をそこに搭載して、兄貴が操縦するって感じで……って、それじゃダメなんすか?」


 四つの手で目を覆う。そういやそんなこともあった……。我ながらあの時は無理をしたと思っている。一度出来たことはまたできると思ってしまうのも無理はない。前世でも似たようなことが繰り返されていたという話はネットでちらっと見たことがある。前世では怖いなーと他人事だったが、こうして現実で起こることになろうとは、世の中どう転がるかわからない。そして今は俺が主体となって計画を練っている。俺がパイロット兼エンジンという考えに至るのも納得だ。


「いや、イカンでしょ。まず条件が違うだろう。それに、あれはたまたま上手くいっただけで、しかも垂直に飛ばすための構造だっただけだぞ。機材を積む関係で不可能だろう……」


「そうなんすか……」


 そう言ってアレックスはしょんぼりとした。なんだか悪いことをしたような感じになってしまった。罪悪感が残る。こんなどうしようもない世界の思想に染まりつつあるが、俺にだって良心はあるんだ。


「じゃあ、後部に兄貴を配置して、兄貴が操縦ってことになるんすね!」


「おい、なんでそうなる⁉ 機体が邪魔で前が見えないだろ⁉」


 さらっと罪悪感を忘れさせる発言が飛び出す。俺がパイロット兼エンジンという発想はそのままに、新しい視点を提供してくれるアレックス。


「え、だってエンジン出力の調整は兄貴が一番上手いじゃないっすか。兄貴は実質、エンジンな訳っすから」


「それなんだけど俺以外でも出来るようにしてほしいものなんだがなぁ……。アレックスも今回は補助で操縦してくれよ」


「おー、兄貴のテクを見て学べばいいんすね!」


 冗長性を考えてアレックスも操縦に巻き込む。意外と乗り気なアレックス。



 その後もアレックスと話し合い、機体の形状自体は前世の旅客機に似た形状になったが、胴体には前方にデータを取るための観測システムを搭載し、後部は魔王城に近付いて観測する(ちょっかいを出す)装置を搭載。そして空いた部分は大体精製魔水(燃料)の区画とした。エンジンの位置は結局、主翼の下に前方に少しぶら下げる形で左右一基ずつと、尾翼と一体型になった俺が搭載されるエンジンのが一基という三発機になった。長時間飛行するための精製魔水(燃料)が大量に必要で、非常に重いため苦肉の策だ。アレックスは最前列……つまり、操縦室だ。


「よし、こんな感じでいいか。いや……しかし設計するとなると時間かかるなぁ。ブロースやヘイルバルは、その場の雰囲気でさらっと作ってそうだから恐ろしいな」


「そうっすね……兄貴みたいに上手くエンジン制御できるように頑張るっすよ!」


 今回の計画のメインパイロットは俺だが、経験を積ませるためにアレックスを最前列に配置している。俺が搭載されるエンジン以外も俺が操作するが、その操作手順を覚えるのが目的だ。さて、設計図が出来上がったので機体そのものを作ることにした。機体は全長も全幅も五十メートルくらいの物体だ。空を飛ぶものとしては、この世界で過去に例がないほど一番デカイ。アレックスとあーでもない、こーでもないと言い合いながら設計したため時間がかかった。もちろんその図体のために製造にもかなり時間がかかるこの航空(調査)機。果たしてどれくらいのデータが取れるか……俺はワクワクしながら大きめのプラモが楽に思える製造を、アレックスと一緒に進めていくのであった。

修正してたら整合性が合わなくなって時間がかかりました。

ひょっとすると全部書き直した方が早かったかもしれません。

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