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帰還編01

登場人物増やそうとしたら、モデルの人物があまりにもひどすぎて話にできませんでした。

時間がかかった割に何も成果が得られませんでした!

詳しくはあとがきにて。

 前世では月面からの離陸というと、エンジン点火後に即フワーッと離陸して宇宙漂流で済むが、あれは月の大気がほぼなかったから成立した話で、大気がそこそこあるこの月では通用しない。魔導情報システム上の記録から一番いい方式のものを探し出す。……といっても、記録をざっと見る限りでは俺を除いて大体うっかりさん(ブロース)あのオッサン(ヘイルバル)の記録ばかりだ。そして俺のロケットエンジンといえば、低出力でしかも地上走行のみという実績の薄さ。



 俺は前世とは違い、大気のある月面で途方に暮れる。ちなみに、この月はいつも同じ方向を黄水球に向けている訳ではなく、ゆっくりとではあるが自転しているようだ。そんな月面で一人、呟く。


「何か……何か効率的で安定性のある方法はないものか?」


 探せば探すほど、ブロースとヘイルバルが今までに作り上げた、混沌としたゲテモノデザインの作品しか出てこない。しばらく途方に暮れていると、ヘイルバルから話があった。


『よぉ、おっさん(ハゼル)、月からこっちに帰ってくるんだろ? この方法はどうだ?』


『探した以外のものもあるのか……』


『ああ、思った以上に速度が出なくてな。少しだけ記録を取ったんだが……もう破棄した案だ』


 魔導情報システムを通じて設計図が送られてくる。設計図を見ることによって、この設計の真意を見抜く。なるほど……前方の空気取り入れ口と後方の排出口がある構造……多分ここまではジェットエンジンとしてなら普通だ。違いは空気を取り込んでから空気取り入れ口をシャッターで塞いだ後、中で爆発することで推進力を得る方法だということだ。しかし問題は二つある。



 一つははシャッターを閉じるタイミングと爆発を同期する機能だが、これはまさに俺向きの推進方法かもしれない。シャッターが閉じたら俺が一パーセントの魔力を開放し爆発する。そして、この月の大気圏を超え宇宙空間に上がる前に、シャッターは閉じたままにしてロケットエンジンへと切り替えることになるだろう。



 二つ目はシャッターを何度も閉じる必要があるため、継続的な推進力は得られないということだ。これはヘイルバルの試作機でも指摘されている。だからこそ速度が出なかったため、この設計は破棄されている。


『今回の場合で考えると、月の重力に打ち勝てればいいだけだからアリ……かな。少し実験してから考えてみるよ。そっちの……黄水球とはまた違う環境だからな』


 少し考えてそう結論付ける。


『ああ、おっさん(自分)には、いい解決方法も見つからなかったしなぁ』


 シンプルな構造だから、後は技術が追いつけばなんとかなりそうな感じもある。俺自体が推進剤というのもあって、もしかすると上手くいくかもしれない。まずは俺の爆発の衝撃に耐えれる素材の選定をする――。


「せっかくだから、俺はこのチタンを選ぶぜ!」


 まぁ、選定作業も即決でチタンにする。鉄は重いしアルミは強度がなぁ……一応、航空用だとジュラルミンなるものがあるだろうが、如何せん俺には何を混ぜ込んだらジュラルミンになるのかがわからない。チタンも単体がいいのか、それとも合金にしたらいいのかも見当がつかない。他にスペースシャトルなんかではセラミックが使われてたような気がするが、作り方がわからない。


『ハゼル、俺もあれから考えたんだよ。衝撃を吸収するような素材で覆って、その下で爆発させたら簡単じゃね?』


 そんな時にブロースからひどい発想の提案だ。黄水球より大気が薄いとはいえ、いくらなんでも強引すぎやしないだろうか? コイツ(ブロース)は実は脳が筋肉でできているんだろうか? いや……頭はあってもここの生命体に脳があるかは不明だ。もしかすると体そのものが脳かもしれない。


『そんなことできたらとっくにやってるよ……』


『いやいや、一度でも試してみてくれないか? なぁ? なっ?』


『ハァ、わかったよ……』


 怒涛の念押しに俺も根負けする。一基犠牲にしてやってみるかと思い、ふと気付く。


『衝撃を吸収するような素材ってどんなのだよ? まずはそこからとかって話じゃないよな?』


『フッ、もう考えてある。なぁに、この構造を見ればすぐにわかるさ……』


 ブロースから素材の設計図が送られてくる。月面の大気を魔力で包み込む形……前世で言えば梱包材のプチプチかな。そして魔力で作り上げるってことは、新生命体ということになる。やはりブロースは脳筋なんじゃなかろうか? 人工衛星打ち上げるための梱包材まで魔物とか、魔物を酷使しすぎではないだろうか?


『うーん、この案はちょっとどうかと思うなぁ』


『どこがだよ⁉』


『魔力の隙間の空気で衝撃を吸収するのはわかったが、これって魔力で作るわけだから新型生命体だよなぁ? そんなポンポンと新しい生命体作って大丈夫なのか?』


『え? 大丈夫だろ? 俺はいつもそうやってきたぞ?』


『そ、そうだったのかー』


 なんだろ……この力技感。ブロースの脳は、やはりあのムキムキの右腕なんだろうか? すごく心配になってきたので、念のためマルホスに通報する。


『マルホス、ブロースのことなんだが……新しい生命体を勝手に作るのはどうなんだ?』


『あー、そのことか。他にもいるんだけど……特にブロースとヘイルバルは勝手に作って勝手に死なせるから、僕も手が付けられない状態なんだよね。何度も注意はしてるんだけど、話を聞いてくれなくてね』


『えぇ……』


『ホント、ここの住人の調整役である僕の身にもなってほしいよ……。一応、結果は出してるから誰も文句は言わないんだけどね。このまま増え続けたら……と思うと考えることが多くて大変だよ……』


『おう……がんばれよ』


 最後の方になるにしたがって、泣きごとのようになっていくマルホスの言葉。マルホスはこの世界では相当な苦労人のようだ。きっと前世だったらそのままハゲてただろう。この世界の調整役(管理職)は前世よりも……いや、こっちの世界の方が大雑把……もとい、大らかな性格のヤツばかりだからこっちの方が楽なのだろうか?


『で、月からこっちに来るのは問題なさそうかい? ハゼル?』


『今、ちょうどそのブロースとヘイルバルのコンビから脱出案が届いて吟味してたところだ。俺だけなら問題はないんだが、ブロースからついでのお願いを聞いてたら問題が発生した』


 正直なところ、人工衛星打ち上げなんてしなくてもよくね? と思い始めてきた。


『こういう事なんだが……』


 と、月に着いてからの記録をマルホスに送る。しばらくの沈黙の後、マルホスからの返答が来た。


『なるほど。確かにこの計画は重要そうだね。飛び去った魔王城を見つける手立てとしても理にかなっているように思える』


『じゃあ……』


『しかしブロースの発想は改善の余地があるね。そもそも素材なら、魔力のない物質でもいいかもしれない』


『そうだよなあ。俺もそう考えていた』


『衝撃を吸収するのは別の方法があったはず……少し待ってくれ。ヨーコが似たようなものを物質で作っていたはず……』


『おお、あのバ……ゲフン、ヨーコがか!』


 久々に聞いた名前だ。俺のこの世界のファーストコンタクトの相手だ。ヨーマもそうだが、ヨーコも物質に目をつけていたとは!


『あった。この方法なら上手く衝撃を和らげられるんじゃないかな?』


 マルホスから素材の作り方が送られてくる。細かい繊維を不規則に絡み合わせてその中に空気が入る隙間が入る構造。なるほど……ブロースの案のプチプチの魔物というよりはただのクッションのようなものか。思わず俺もニッコリになる。


『そうそう、こういうのでいいんだよ。こういうので』


『じゃ、素材はこれで決まりとして……後はどうやって月から脱出するかだね』


『そうだな……ブロースが悔しがるだろうが、他に方法があったってことで勘弁してもうらおう』


 今、目の前にある問題、どうやってこの月から黄水球に帰還するかの方法を、また考え直すことになった。

没案となりますが、ダン・クエールとスティーブ・バルマーを足したような宇宙人を入れようと前話から悪戦苦闘していましたが、これから終わりに収束させてく段階なのに風呂敷さらに広げてどうすんねん…と諦めました。肩書きはその名残です。


☆解説☆

・ダン・クエール

1989年~1993年の米国副大統領、1991年にイグノーベル賞受賞

肩書きは「時間の消費者にして空間の占有者、ついでに米国副大統領」

・スティーブ・バルマー

2000年~2014年にかけてマイクロソフトにて叫んで踊れるCEOに就任

2006年、BUSINESS 2.0誌で「重要でない10人」の中の1位に輝く

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