ー 1話 始動 ー
十五年前… 奈落街
「〇〇! 逃げろ!! お前だけは助かってくれ!」悲痛な声を背に、一人の少年はただただ呆然と突っ立っていた。その少年の眼にはこの世の終わりかというほど無惨な姿になった街が映されていた。
(なんで、僕だけが生き残るの? みんな死んじゃったのに……)
ー 2100年12月21日第一次衝撃波来襲
奈落街生存者一名 ー
2115年、現在
「ふぁ~、よく寝た! ………っっっ! え?! もう九時じゃん!! ヤバいって、遅れるよ~」バタバタバタ……
「行ってきます!」
「あら、おはよう、奈緒ちゃん、ま~た遅刻~? いい加減にしないと怒られるよ?」突然後ろから声をかけられ、振り返ると、いつも話しかけてくれる近所の雑貨屋のお姉さんだった。「あ、おはようございます。大丈夫大丈夫、まだ間に合います~」と、言いながら急いで駆けようとする奈緒を見てお姉さんは、「最近何かと物騒だから気をつけてね、特に{ランページ}とかいう軍団には」と、言った。
絶対的強者の七人 それは、第一次衝撃波で生き残った全人類の0.01%未満である、能力を得た一二万人の内、破格の強さを持つ七人で構成された軍団である。七人全員が特異公安警察の指定する危険度ランクでSランク(一人で五つの連合軍団を倒せるレベル)以上ーであり、最近ニュースでよく聞く軍団だなと奈緒は思った。
「まあ、大丈夫ですよ。……そんな滅多に会いませんよ。じゃあ、急ぐんで~!」
スタスタスタ……
(ふふ、まだ間に合うんじゃなかったの?)とお姉さんは笑って見送った。
街を歩いていると電気屋の前に置いているテレビから緊急中継が流れていた。
ふと奈緒は立ち止まって見てみると、そこには黒いマントを羽織った三人の青年が映っていた。三人はカメラに気づくと間髪を入れずにレンズを割り、それ以降繋がらなくなった。「見ましたか! これが今話題の{ランページ}です!! 皆さん気をつけてください! 黒いマントを羽織って襟元に赤い七芒星のマークがあるエンブレムをつけているのが特徴です。見かけた際は直ぐに特異公安警察に!」と、ニュースキャスターが興奮した様子で話している。
(まーた、{ランページ}か。最近そればっかりだな、まあいいや、急ご!)とまた急いで駆けていく奈緒の背後には黒いマントを羽織った青年がいた。
会社に着くと、全員の顔が青ざめていた。
「皆、どうしたの?そんな顔して?」
「奈緒ちゃん、し、し、社長が……」
「え?……き、きゃっっ!社長?!!な、なんで??」
皆の視線の先を見ると、刃物で切られた痕がついてる社長が倒れていた。
「{ランページ}よ。あの{ランページ}が来たの! 私たちを守るために社長が……」
「そ、そんな……」
「顔を見たらたしかに{ランページ}第六位、ソウマだったの!」
そう、今のところ、{ランページ}の第三位から第七位までは顔が全世界に知れ渡っている。
「許せない! 絶対に許さない! 私ちょっと外行ってくる!」
「どこに行くの、奈緒!」
「その{ランページ}の人達に会いに行ってくる!」
「そんな簡単に会えるわけないじゃない! それに危険よ、やめなさい!!」
そんな忠告も全く聞かずに奈緒は飛び出して行った。