4話
何故だろうか。
「なんでやろなー」
「真面目にやって来たんですよっ!?」
僕は光魔法の授業を受け持っているアールロイド先生のところへ相談に来ている。
彼は見た目こそちゃらんぽらんで威厳が無いが、28歳という若さにして光魔法レベル7に至るという凄腕である。
まああの組織の連中と比べるとそうでもないような気はするが…アレは気にしちゃいけない。
「せやかてお前、これはもう才能が無いとしか言えへんわ。そのアホみたいな努力をちょっと別の所に注いでみ?えらい変わるでお前」
「で、す、か、らっ!僕は光魔法じゃないとダメなんです!」
この先生の腕は知っているためよくこうやって相談に来るのだ。今はこの前できなかったレベル2への昇格試験の話である。
「いやお前、ワイも人やからな?採点甘くしたろー思うて実技試験やらせたらお前一つもクリアできへんってどういうことやねん」
「いやっ、2個目のやつ、惜しかったじゃないですか…!」
「それあれやでお前。キャベツをレタスゆうて惜しいゆうとるもん…あれ?それ割と惜しいな」
「と、に、か、く!今日こそは成し遂げるんで練習付き合ってください!」
「いやまあええけどな?ワイは仕事やりながら適当に口出しとるだけやし…」
「よおおし!今日こそはクリアしてあげようじゃないですか!」
「何か前にもそれ聞いたなー」
当然の如く失敗に終わった僕は更なる知識をが必要だと町の書店に魔法に関する本を買いに来た。
「1次魔法の棚は…うわっ、狭。ここの店主はどういう考えしているんだ…」
「ほれ、おぬし!ここに妾の活躍について書かれた本があるぞ!」
「絶対お前こき下ろされてるよ」
そして少ない本の中から良い感じの本を2冊程買って町を歩いていると、声をかけられた。
「あっ、その!昨日はありがとうございました!」
「…?ああ、ひったくりのことか。昨日も言ったがあれは貴族の責務であって…」
「それで、ウチ、果物屋なんです!お礼にどうぞ、えーと、コレとコレとコレと…はい、どうぞ!」
ずいぶんと押しが強い少女だ。袋に山積みになった果物を渡される。
「……すまない。ありがたく受け取ろう」
「あっ、はい!あの、それで…お名前を、教えて頂けませんか?私は、サナって言うんですけど…」
「……カイニック・ローリックだ」
「…!あの、ローリック家の…!本当に、ありがとうございました!」
…別に、感謝されるのは悪い気分じゃない。ただ、助けたのが闇の力によるものだというのが心苦しいばかりだ。
「ひゅー。モテモテじゃのー。ほれ、これも闇魔法のおかげじゃぞー?コッチの道に来んかー?」
特にこういうヤツが僕のすぐそばにいるから嫌な気分になる。
帰り道を少し歩いていると、また声をかけられた。
衛兵のようだ。
「すみません、昨日この辺りで起きたひったくりについてなんですが…何かご存じありませんか?
どうもあなたのような貴族の方が捕らえたようで…」
「このカイニック・ローリックに何か?」
「…!あのローリック家の…!いえ、すみません。アナタとは縁が遠い話というか真逆のお人でした。
…実はですね、そのひったくりの現場から闇の魔力が検知されたらしいのですよ。それでここら辺の人に対して調査を行っていまして…」
「そうか。頑張ってくれ」
「はい!それでは!」
そしてまた衛兵が去っていった。
「あぶねええええええええええ…」
思わず声が出てしまう。闇神のことがバレるかと思った。
「ふむ…あの触媒によって微妙に反応が起きてしまった故に、じゃろうな…僅かに魔力が残ったのであろうよ。しかし魔力を検知できる人材となると中々おらんが…運が悪かったのう」
「いいか?もしお前のことがバレたらローリック家の名前が地に堕ちるからな?絶対にバレちゃいけないんだ。これからはもっと気を付けないとな…」
でも、僕はまだまだ覚悟が足りなかったことを後で後悔するんだ。