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闇の神、憑いてます  作者: むきむき
2/7

2話 


この後ろの奴について知るために僕は一時期神話についてかなり調べた。


まず、世界の始まりについて。6柱の神――地、水、火、風、そして光と闇。原初の世界に生まれた神々によって世界は形作られていった。

生物、昼夜、海、山…そして人間。そんな中、闇の神があるものを作った。魔物だ。

その魔物によって世界は荒れ果てた。それに怒った残りの神々は光神を筆頭に闇神と対立した。


光神は人間の中から加護を与える英雄を選び、闇神への尖兵とした。この英雄の子孫が我らが王国の王族だと言われている。

そしてその英雄は他の神からも力を受け取り、遂に闇神の封印に成功した。その体は72に分かれ各地に封印されたという。


しかし闇神封印の後も魔物は存在した。各封印を根城とし、勢力は弱まったものの、今でも人間の生活を脅かしている…そんな話だ。


そして、だ。僕のご先祖様はかつて最も勢力の大きかった魔物の根城を鎮圧した。ご先祖様は光魔法に優れ、とても信心深いお人だったという。その鎮圧した場所には闇神の核が封印されていた。

当時の王国の国王はその功績を非常に称え、貴族としての地位を授けてその地を守らせた。


わかるだろうか。僕が闇神を宿してしまったことに対する心労が。僕はこのローリック家の長男としてご先祖様に倣って光魔法の習得に励んでいた。そこにこの仕打ちだ。



「ほらー、レベル2になれなかったからってそんなに落ち込むものじゃないぞー?まだ3年弱あるんじゃから、まだまだ大丈夫じゃって」


「誰のせいだと思って…!」



いけない。人(神)のせいにしちゃダメだ。我がローリック家の家訓の一つに『人の所為にすることなかれ』とある。



「だーかーらー、2次魔法科なら光の方に進むとしてもまだマシだと言うに…聖魔法とかどうじゃ?

闇に対抗するための魔法じゃからむしろ狙いがわかりやすいぞ?」



…コイツが言っているのは、魔法の段階分類のことだ。

1次魔法にはいわゆる基本元素、火水地風光闇の最も原始的な属性を扱う魔法のことを指す。コレらの魔法は基本故に皆1年生の時に学ぶが、これを学んでいくよりもっと発展させたものを学ぶ方が便利と言われている。


それが2次魔法。基本的な属性を発展させた魔法である。代表的なのは今も言った光魔法を闇に対しての戦闘手段として特化させた聖魔法。水魔法の中でも限定的な部分を発展させていって水属性の枠を超えた氷魔法などだ。

この2次魔法には結局1次魔法が必要なので2次魔法科でも1次魔法については学ぶ。これが2次魔法の使い手の方が優秀とされ、人気がある理由だ。それに目的があって発展したものが多いので、2次魔法の方が使い勝手は良い。


そして一応3次魔法というのもある。これは1次魔法よりも更に人気が無いのだが、ちょっとわけが違う。単純に難しいのだ。

属性という枠にとらわれず、魔法という概念を発展させていく。この魔法を学ぶものは魔法学者になるつもりの者だ。

例をあげると属性に関係無い魔法陣、詠唱など。あとは一部の種族が使えるという精霊魔法というのもここに入る。


この説明だけでは1次魔法科に進むメリットが無いように思われるかもしれない。だが違う。



「いいか?聖魔法なんていう光神様のもたらしてくれたものから離れていった魔法とは違う。光魔法だからこそ意味があるんだよ。これが最も神に近づける魔法なんだ」


「ふーん…まあそんなら良いんじゃなーい?妾はもう寝る!」



何か拗ねてるな…まあコイツとの付き合いも長い。あとで機嫌を取ってやればすぐ直る。

それより…今日は月に1度の組織で行われるミサがある。勿論闇神の方だ。光神様の方なら喜んで向かうのだが…ハッキリ言って行きたくない。

暗い地下で大衆がこちらに向かって欠片の乱れもなく礼拝をし、崇めてくる。これほどの恐怖があろうか。

僕は毎回後ろでふんぞり返っている(皆には見えていない)闇神の言葉をそのまま垂れ流しているだけで良いのだが、とにかく怖い。いつ彼らが僕に襲い掛かってくるかわかったもんじゃない。

気分が重い…僕も寝よう。


















「カイニック様。お迎えに上がりました」



その言葉に目を開けると組織の一員の女性がぼくを迎えに馬車を連れて来ていた。



「ああ…てか、いつも思うんだけどよくバレないね」


「ハッ。これも闇神様のお力なれば…」



皆この調子だ。



「フハハハハハ!毎月この時は気分が良いのう!昔を思い出す!皆が妾を崇め、称える!のう、カイニック。妾をもっと称えて良いのじゃぞ?」


「はいはい。すごいすごい」


「むー。心がこもっておらん!」


そんな事を言ってると闇神と会話しているとわかったのだろう。迎えの人が感激した表情でこちらを見ている。


「さすが依代様…!」


「あー、その。えーと、ラーニャさん、でしたっけ?早く行きましょうよ」



思い出した。なんか拳術のレベルが8あるらしいラーニャさんだ。8はヤベェ。地味に高い地位にいた筈だ。何で迎えなんかに来ているんだろうか…。



「ああっ依代様が私の名前を記憶してくださるなんて…!」



もう先に馬車に乗っとくか…。
















なんかメッチャ高そうな馬車の中の更に特別席っぽいところで座っていること十数分。目的地に着いたらしい。

ぼくが思うに絶対魔法かなんかで本来着けない場所に着いてる。



「それでは依代様…あちらの教会の壇上へお願いします…」



そう言って案内されたのは1つだけポツンと置かれた超おどろおどろしい装飾が施された玉座だ。

いつものように座る。教会は完全な静寂を保っている。しかし、この行事はいつまで経っても慣れない。未だに緊張する。



「ほれほれ、リラックスするのじゃー」


「やめろっ、脇をつつくな!お前の信者の前だぞ」



小声で闇神とやり取りをしていると、照明が一度消されてまた付く。これが合図だ。僕も佇まいを直す。



「それでは一同、祈りを捧げなさい」



司会の人――デルニックさんだったか――の言葉と共に規律正しく列となっていた信者たちが同時に床に跪く。そして頭を下げ手を祈るように合わせ上に掲げる。


その光景を闇神は非常に満足そうに眺めている。



「うむうむ。この祈りが伝わってくる瞬間はたまらんのじゃ…」



ぼくは恐怖しか感じない。



「それでは、依代様より闇神様のお言葉を頂きます」



来た。僕の出番だ。



「えー。『妾の封印体も遂に二十四という数が集まった。だが、全然足りぬ。本当に妾に仕える気があるならばとっとと残りも集めて来い。でなければ妾が滅ぼす』…だそうです」



何もやって無いくせに偉過ぎだ。



「すみませぬ…!我ら信者一同、粉骨砕身の思いでこれよりこの身を捧げます…!!」


「あ、いや…」



ものすごい申し訳ない。てか正直言ってその封印体を集めるという行為は光神教からするとものすごい敵対行為だから止めて欲しいんだが。

しかし止めようとすると、闇神に体を支配されてもっとひどいことになる。僕は過去から学ぶ男なのだ。




その後、宗教的な行為をいくつか行ってこの行事はお開きとなった。

精神的にものすごく疲れて馬車の中で休んでいたところ、ラーニャさんがぼくの所にやって来た。



「すみません、依代様…一つご報告があります」


「報告?」



良い予感がしない。



「ええ。依代様の生活をサポートするために学院に構成員を送りました。覚えていらっしゃいますでしょうか。エリゼです。彼女も七十二柱の上位八柱の一角。依代様の邪魔にはならないかと思われます。もう手続きは全て済ませました。明日からサポートさせていただきます」


「…はい?」



事後報告は、よくないと思う。















帰って来ると、一人の女の子が待っていた。僕はこの子をよく知っている。



「七十二柱が第五位、エリゼ・フォルン。明日よりカイニック様のお世話をさせて頂きます」



エリゼ…彼女はフォルン家というローリック家よりは下だがそこそこの名家の生まれだ。何故闇の道へと行ってしまったのか…。

フォン家は火魔法を好む一族であり、こういうのもなんだがかなり気性が荒いことで有名だ。しかし目の前にいる彼女もどうだろうか。闇魔法と火魔法の組み合わせを得意とすることは知っているが気性が荒い…?三つ指をついて僕を迎え入れる彼女を見て疑念を抱く。



「ばいんばいんじゃのお…」



…うるさい。光神様に仕えるものはそういった邪な感情を抱いてはいけないのだ。


しかし、明日からの生活が不安である。



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