殺意
暗闇の中、気配を探る。
あちらには俺の姿が見えているはずだ。
相手の正確な位置も分からぬまま突き進むのは愚の骨頂だと、分かっていた。
無防備にさらされた喉をめがけて、鈍い光が襲いかかってくる。
――ようやく姿を現したな。
月光に煌めく刀を素早く剣の腹で弾き上げ、ぽっかりと空いた相手の胸に、思いきり突きこんだ。
しかし剣先が肉に突き刺さる刹那、ぐい、と腕ごと受け流されていた。
伸びきった腕に、刀が大蛇のようにせまるのを見て、俺は後ろに跳びすさった。
刀の主は、白装束の若い男だ。
一拍おいて、刃が互いの喉をめがけて交差した……瞬間、半歩、前に出る。
それとともに首元で熱い痛みが爆発する。
それに構わず、勢いよく剣を振り上げた。
「が、ぼ」
白装束が顔から血を吹き出しながらよろける。
俺は、その腹に剣を深々と突き立てた。
肉塊となった体に足をかけ、剣を抜く。
「はぁ、はぁ」
自分の首元から、どくどくと血が溢れる。
痛みに視界が揺れ、思わず膝をつく。
「ーーぐ」
すぐに、女に治癒を――
痛みに焼かれる脳を無理やり働かせるが、体が思うように動かない。
と、喉元に奇妙な違和感を覚える。
業火のごとき痛みが和らいでいく――
女が治癒を発動していた。
ほぅ、と息が漏れる。
どちらのものかは分からない。