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脱出
燃え盛る白い建物から抜け出せたのは、それから5分ほど経った後だった。
冷ややかな夜の森の空気が肌を刺す。
「熱っつ」
火の粉やら何やらが頭に降り注ぐ中でとっさに犠牲にした左腕が、ぎりぎりと痛む。
「おいお前――」
が、言うより早く少女の手から暖かな光が溢れ、癒しの力が発揮されていた。
”首輪”の効果か、それとも元々従順な性格なのか。
――あるいは、ここの連中に酷い目に合わされたか。
すぐに腕の痛みは引き、火傷部分はすっかり綺麗な皮膚に成り代わっている。
端的に言って――、
「最高だ」
便利、即効、そのうえ完璧。
これ以上の医療がこの世にあるだろうか。
治ったばかりの左腕を顔の上に掲げ、月明かりに照らす。
「こいつがいれば、いくらでも――」
その時。
腕のむこう、森の暗闇のなかで、わずかな煌き。
反射的に身をひねった瞬間、細い刃が、こめかみをかすめた。
にやり、と口元を歪める。
「――無茶ができるな」
片手剣を抜き、躊躇なく暗闇に飛びこんだ。