一話 転校生
人は、愛が故に束縛する。愛が故に子を生す。愛が故にどんなことでもすることができる。
愛はなぜそれほど人を動かし、人はなぜ愛に魅了されるのだろうか。
かの文豪、シェイクスピアの作品のほとんどにも愛に関することが語られている。シェイクスピアは愛が人間の本質だと知っていたのだろうか。そもそも人はどうしたら愛を知ることができるのだろうか。
愛とは何かを知らずに育ってきたからなのだろうか、いや愛はあったのだろうけれどもそれを認めていないだけか、それとも思春期が故の考えすぎなのかどうかもわからないけれども明確な答えは出せていないままに高校二年生を迎えた俺は迷っていた。
高校二年生に上がり、クラスが発表されてどのクラスなのかは分かるのだが、自分の教室のはずなのだがこの教室だけクラス札がなく入るのをためらっていた。
「教室ここなのか・・・?」
と、声に出して、入るかどうか迷ってるうちに聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
「翔依~!早く入れよ!そこで何してんの?早く入って来いよ」
手招きしながらそういう彼のところに、見知った人がいてほっとしながら歩いていった。
「このクラスで合ってるの?」
「おう、俺と翔依同じなのは知ってるだろ?んでよ、ほかに誰いるかなって思って中のぞいたらクラス分けの表に名前があったやつらがいて、この教室以外ものぞいたんだけど、ここしかありえなかったからここにいたんだわ、ちなみにクラス札は、去年の卒業式間近にある生徒が壊したらしくてこのクラスだけないんだわ。まあ今年も同じクラスでよろしくな」
ケラケラ笑いながら話す敬は、俺が高校入学した後初日の授業で仲良くなったやつで、休み時間に話したり休日に遊びに行く仲だ。
「同じクラスだったのか」
「はぁ~?まじか?!お前、自分の親友のクラスも把握してないのか?!」
「いや普通自分のクラスしか見なくないか?」
「なんて薄情な奴だ!普通自分のを確認したら愛するやつのクラスも見るだろ?!」
「俺はお前を愛してない。」
「嘘だ?!」
「嘘じゃない。第一、お前彼女いるだろうが!!」
「いるけどさ~クラス違うんだよ~まあ俺としては翔依と離れなければいいんだ」
「真顔のガチトーンやめろ。新年度早々疑われてるぞ。周り見てみろ」
そういって敬と周りを見てみると、去年同じクラスだった数人を除いて、何人かはちらちらこっちを見たり、女子のグループに限ってはひそひそしだしている。
「んまあでも、俺が翔依を愛してるのは本t、痛ってええええ」
言い終わる前に、デコピンをお見舞いしてやった。
敬が何か言ってるのを聞き流ししながら、クラスを見回した。
何人か去年と同じクラスメイトがいたり、多分去年クラスが一緒だったんだろう、グループが既にできているところもある。
「おい、翔依、話聞いてんのか」
「ああごめん聞いてなかった。なんて?」
「だから!転校生楽しみだな!男子二人に女子が一人だってよ、どんな奴かな」
「あれ、知ってるの?先生なんか言ってたっけ?」
「いや、職員室の前通った時に、見たことない人が職員室入ってくの見えたんよ。んで立ち聞きしてたらなんと!なんと!うちのクラスに転入してくるってよ、ついでにクラス札破壊されたのもその時に聞いた。」
「立ち聞きとか趣味悪いなお前」
「うへへ、いいんだよ、面白い情報だろ?」
「まあ、面白くはあるな」
「だろうよ、どんな子かな」
「かわいい子だといいな。」
「どっちでもいいや」
「出た、お前のどっちでもいいや精神。かわいい女の子だったら声かけて来いよ」
「何でおれが・・・」
そんな会話をしているとチャイムが鳴ると同時に先生が教室に入ってきた。
二年目の担当教員も去年と変わらず中田先生だ。
中田先生は、この学校の卒業生らしい、年齢は俺たちより一回り違ってる。
中田先生がクラスのやつに何年生まれ、干支はなにときかれ、俺たちと同じということが発覚して、先生は年老いたなと自分を落ち込んでいた。
その中田先生はいつもはチャイムが鳴ってから職員室を出て教室に来るのでいつも遅いのだが今日は、珍しく早い。やはり新年度の始まりくらいは張り切るのだろうか。
「みんなおはよう。今年度このクラスを担当する中田です。よろしく。私とみんなの自己紹介は初回の授業にしましょう、今日は始業式が始まるまで少し時間があるので先に転校生の紹介をします。陸奥さん入ってください。」
中田先生がそう言うと扉を開けて一人の女の子が入ってきた。
彼女が黒板の前に立つと俺は、小さくあっと言った。
中学の頃の一個上の学年でずっと一緒に遊んでいた子だからだ。
「おはようございます!皆さん初めまして陸奥紬です!漢字は黒板に書いてある通り、陸奥は大陸、陸地の陸に奥の細道の奥の漢字をつなげてむつで、紬は糸へんに理由の由です!
呼び方はお任せします!趣味は散歩すること、音楽を聴くこと、ディズニーにいくことです!以後お見知りおきを!」
テンポよく挨拶が終わった所で中田先生に
「じゃあ、一列目の一番後ろが開いてるのでそこに座ってください。ちなみに今度のホームルームで席替えするので、皆たのしみにしててね!」
中田先生のその一言でクラスはざわめき始めた。
席替えは、学生生活の中でうれしいイベントの類に入る。
席次第で、隣の人次第でその期間の気分、テンション、思い出が変わるのだ。好きな子が横なら横をのぞき見しているときに目が合って気まずくなるが、数年たてばそれも青春だ。その出来事からカップルのできるきっかけになるかもしれない。後ろの席ならばいつでもずっとその人を見続けていられるという幸せな席になるかもしれない。ラブコメディの漫画や小説、アニメでもよく見受けられるシーンだが、席替えはそれほど青春真っただ中の思春期の学生にとってはとても重要なものである。
「はいはい、静かに。じゃあ陸奥さん席にいってくださいね。」
「わかりました。」
そういいながら陸奥紬は、スクールバッグを胸元に抱き寄せて席と席、バッグとバッグが重なり合っている通路を超えてこちらにやってくる。目が合い、陸奥紬は、俺を見て、目を見開いた。
「とい」「はーい静かに!この後体育館で入学式だからね!みんな五分前にはきちんと整列して待つんだよ!それまで自由時間!静かにね!」
何か言いたげで口を動かしたが中田先生の一言にかき消された。
仕方なく陸奥紬は席に座り先生が言い終わると直ぐにクラスメイトの女子たちが陸奥紬の席を包囲した。そしてよく見る質問攻め状態だ。
男子も興味津々だったが、いくらコミュニケーション能力の高い男子でも女子の集団に割り込んで話をできる猛者はいない。男子はそれぞれ仲のいいグループ、仲のいい人と集まり春休みの各々のしたことについて話している。早く始業式が終わって帰りたいものだ
「翔依~春休み~なにした~」
「勉強とバイト」
「おい!俺とも遊んだじゃねえか!」
「言う必要なくないか…」
「いやいや、愛してても愛してるといわないと愛は伝わらないんだぜ。」
「さすが愛の彼女持ちは違うな」
「俺の愛は家族3、彼女4、翔依3の割合だからな」
「真顔で言うところキモイ。」
「そんな~つれないこと言うなよ~。てか、この後どこ行く、パラッパッパッパー行くか?」
「大手のハンバーガーチェーン店のその呼び方はじめて聞いたぞ。」
「関西や関東で言い方変わってしまうからそれなら新しい呼び方をした方がいいだ!喧嘩しなくて済むからな。」
「その議論は解決しないから定期的に出てきて楽しく論争するのがいいんだろう。山派か里派のちがいさ!」
「断然山」
「いやいくら翔依でも、それは同意できないな。里だ」
「山」
「里」
「や、ま」
「おい皆山と里どっち派閥だ!!断然里だろ!」
『断然山だろ?』『は~?里だろ!』『いやいや』
「おい!みんな白黒はっきりつけようぜ!多数決だ、民主的解決だ」
団子になって転校生に質問していた女子もちらほら話に入ってきてクラスは二大派閥の決着をつけることになった
「まず、里派手を挙げてくれ!!えーと⒕人だな」
「次に山派えーと こっちも⒕人か」
引き分けかぁとみんなが口々にする。しかし転校生を含めたクラスの人数は合計で29人のはず、それに気付き始めた人たちが、転校生の陸奥紬を見つめる。
「紬ちゃんは、どっち派?」
とある女子のその一言で、気づかなかった人ですら全員、陸奥紬の方を見た。
彼女は端から見ても驚き、困っている様子だったが、すぐに笑顔で
「私はどっちも好きだなー、気分によって食べ分けるよ!」
と、言った。
正直どっちもおいしいのは認める。現に俺が小さい時は里派だったのだが、中学硬軟になってなぜかキノコのほうがおいしいと思い山派にシフトした。
「そりゃあないぜ、むぎちゃんよ」
「私、お菓子あんまり食べないからよくわかんないんだよね。お母さんが小さい時から体に悪いって言って食べさせてくれなかったの。」
「え、じゃあカップ麺もあんまりたべないの?」
「えーっとコンビニに売ってる麺のことだよね?食べたことないんだよね。」
「「「はっ?!」」」
なんか変なところあったらおしえてください!!!!!!