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シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む  作者: ジルコ
第四章 シンデレラになった化け物は聖女と相対する
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第91話 レオンハルトの容体

 取り乱す寸前のクリスをなんとか宥め、急いで外出する準備をしてスカーレット城へと向かう。馬車に揺られるクリスは落ち着きがなく、その心中は察して余りあるものだった。


「クリス、お腹の子にさわるぞ」

「でも、シエラ」

「聖女候補のフロウラがレオンハルトの治療に当たっているんだ。これ以上頼もしい存在はいないだろう。それに、もしレオンハルトがクリスを置いて死ぬような腑抜けなら私が冥界から引きずってでも連れ戻してきてやるから安心しろ」

「ふふっ、そうね。レオンは私を残して死んだりしないわよね。ありがとう、シエラ」


 私の冗談に少しだけ笑顔を見せたクリスがふぅと大きく息を吐き、そしてお腹を撫でながら「ごめんね」と話しかけていた。顔色は相変わらず悪いままだが少しだけでも気持ちは落ち着いたみたいだ。


 しばらくしてスカーレット城へと着き、待っていた執事のあとについて見慣れた廊下を進んでいく。としてたどり着いた客室の扉を執事がノックし、そしてその扉が開かれた。

 客室の中には多くの人がいた。エクスハティオやメリッサもその中には含まれている。そしてその視線の先のベッドの上には、まるで眠っているかのように目を閉じて横たわったレオンハルトがいた。そしてそんなレオンハルトに手をかざしたままフロウラが必死の形相で汗を流していた。


「レオン!」


 駆けだしたクリスに慌ててついていき万が一にも転ばないように注意を払う。そしてクリスがベッドへと体を寄せ、レオンハルトの肩を何度も揺さぶった。


「ねえ、レオン。起きて、起きてレオン。ただ眠っているだけなんでしょう。ねえ、笑ってよ。すまない、ちょっと寝不足気味でねって、冗談なんだって笑ってよ。あの、いつもの、笑顔を……」


 何度揺さぶっても起きないレオンハルトの姿にクリスの表情が崩れていき、そしてその瞳から涙がぽたぽたと零れ落ちていった。クリスのそばへ、と思ったのだがエクスハティオたちがクリスへ駆け寄っていくのを見てやめる。そうだな、これは私の役目ではない。

 両親に抱かれるクリスから視線を外し、治療を続けていたフロウラを見る。


「フロウラ?」

「ごめん。私の力では治療は無理みたい。どうにかならないか頑張ってみたんだけど」

「そうか」


 疲労の色を隠せていないその姿を見ればそれ以上何も言うことは出来なかった。天の回廊で戦いその治癒魔法はかなり強力になったはずなのだが、それでも治療できないとなるとかなり厄介な状況だ。

 レオンハルトは本当に眠っているだけのように見える。顔色が悪いといったこともない。こんな症状に当てはまるような病気は……


「昔のお嬢様みたいだ」


 ぽつり、とアレックスが漏らした言葉が耳に届く。その言葉は大きな声ではなかったはずなのになぜか一瞬しんと静まり返っていた部屋に響いた。部屋の視線という視線が私とアレックスに集中する。

 アレックスが慌てて手を左右に振った。


「いえ、僕が言いたいのは……」

「気にするな。私自身もそう思っていたからな。レオンハルト様の症状は氷の(ひつぎ)に似ている。もちろん他の可能性がないわけではないが」

「シエラ、詳しく話してくれる?」


 クリスが赤く染まった瞳で私を見る。その瞳をじっと見返し、そして頷く。クリスの瞳には私を責めるような気配はない。疑われても当然の状況なのだがな。


「私は5歳から7歳までの間、同じように目を覚まさなかった。食事をしないのに死ぬことはなく、成長することもなかったことから考えて氷の柩と呼ばれる病気だったのだろう。この病についてクリスは知っているか?」

「本で読んだ程度だけれど。でも死ぬまで目を覚まさないと書かれていたような気がするわ」

「そうだな。だが理由はわからないが私はなぜか目覚めた。まあ見てのとおり成長はしなくなってしまったが。人にうつるような病気ではないはずなんだがな」

「もしうつるならお嬢様とずっと一緒にいた僕が真っ先にうつっているはずです」


 アレックスの援護もあり、私たちに向けられる視線が少し和らぐ。


「現状、症状が似ているというだけだ。逆に他の原因の場合の方が厄介かもしれない。氷の柩であれば食事をしなくても大丈夫だが、そうでなければ何かしら食事を……」

「急報! イムル聖国が宣戦布告してきました」

「なんだと! くそっ、こんな時に! すまない、後を頼む」


 エクスハティオが悪態をつきながら部屋から飛び出していく。そして部屋の中にいた人々も自分の仕事をこなすべく半数以上がその後を追うようにして部屋から出ていった。

 レオンハルトが倒れたその日に宣戦布告の知らせがやってくるなんて、偶然にしても出来すぎている。フロウラへと視線をやると神妙な顔をしながら小さくうなずいて返してきた。どうやら私と同じ考えのようだな。


 学園3年に起こるはずだった戦争が今起きようとしているのかもしれない。

この後書きは本編のイメージを壊す恐れがあります。そういう事が嫌いな方は飛ばして下さい。


【お嬢様と従者による華麗なる後書き】


(╹ω╹) 「あのー、お嬢様」

(●人●) 「じー」

(╹ω╹) 「えっと何をされているんですか」

(●人●) 「静かにしろ!」

(╹ω╹) 「うわっ、お嬢様こそ声が大きいですって。それより何をじっと見ていたんですか?」

(●人●) 「犬だ。バウではなくてパウだぞ。間違えるなよ」

(╹ω╹) 「えーっと……」

(●人●) 「俺の正義が騒○ぜ!」

(╹ω╹) 「なんでそうギリギリを狙うんですか」

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わりとゆるゆるな現代ダンジョンマスター物です。殺伐とはほぼ縁のないボケとツッコミのあるダンジョンの日常を描いています。

「攻略できない初心者ダンジョン」
https://ncode.syosetu.com/n4296fq/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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