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シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む  作者: ジルコ
第三章 シンデレラになった化け物は新たな運命を歩む
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第78話 置いてけぼり

 3日ほどレオンハルトとランディがなにやら2人でやっていたのは知っている。特に興味はなかったので存分に邪魔者のいない日々を満喫させてもらっていたわけだが、ついにそんな日々も終わりを告げた。どうやら明日からまたダンジョンに行くそうだ。

 食事やその後の時間の親しげなやりとりを見る限り2人は友好的な関係を築いたようだ。今までのクリスとの人生においては知り合いではあるがそこまで親しいといった感じではなかったので友人のような間柄になるとは思ってもみなかったのだが。


 クリスが今までダンジョンに入りっぱなしで出来なかった勉強や習い事の復習などをこの3日忙しそうにしていたため、私とアレックスは自由に動くことを許されていた。まあ自由といってもいざという時は動くことが出来るように城の内部で鍛錬や学園に向けての勉強をしたりしていたわけだ。なぜかロザリーも一緒に。


 6度のクリスとの人生においてその家庭教師を務めただけのことはあり、ロザリーの知識は深く、そして広い。教え方も上手なのでアレックスも熱心に質問をしたりしていた。私はなんというか懐かしさを覚えた3日間だったな。


 そして翌日、さていよいよダンジョンへ行くかと思ったのだが……


「じゃあな、無理はするなよ」

「わかってる。自分のことはわきまえているつもりだ」

「それがわかってなかった奴が偉そうに」


 ランディとレオンハルトが親しげなやりとりをし、そしてレオンハルトが先頭になってダンジョンへと入っていく。ランディは今日はダンジョンへは行かないそうだ。別にコイツに関してはどちらでも構わないので良いのだが。


「なぜ私も残らされているのですか?」

「まあいいじゃねえか。王女とお前の主人からは許可はもらったしな」


 何でもないことのようにいうランディをじろりと睨む。しかしランディは飄々とした表情のままあっさりと私の視線を受け流した。

 そうなのだ。クリスがダンジョンへと行くのであれば護衛騎士である私が同行しないなんてことはありえない。ありえないのだが私は今クリスがダンジョンへと入っていくのを見送る立場だ。

 通い慣れたスカーレット城のダンジョンだ。そうそうトラブルなど起きないだろうし、いざという時はギネヴィアの護衛騎士のシルヴィアもいる。アレックスにも重々言い聞かせたし問題はないはずだ。問題は……


 ギリッと歯がなる。確かに問題はないかもしれない。だがそれとこれとは話が別だ。これがどうしようもない理由というのであればまだ納得はできる。しかし私が今回の残されたのはランディの相手をするためだ。まあ建前としてレオンハルト1人でどこまで出来るかを試してみるとなっているがその裏には別の理由があるはずだ。

 こんなところで2人が親しくなった弊害が出てくるとはな。


「おおぅ。怖いな」

「怖いならこんな女のそばから即刻離れてはどうでしょうか?」

「はっはっは」


 笑い飛ばすだけでそんな素振りを見せないランディの反応に息を吐いて心を落ち着ける。ギネヴィアとクリスの許可が出ているのは確かなのだ。それにこんな奴でもこの国にとっては重要人物には変わりはない。丁重に相手をしてやらないとな。


「それで何をされるおつもりなのですか?」

「いや、そりゃあ戦うに決まってんだろ」

「そうですか」


 当然のように言い放ったランディの腹へと手加減が薄めな拳を突き入れるとランディは木の葉のように飛んで地面を転がっていった。うむ、ちょうど良く気絶しているようだし午前中は相手をする必要もないだろう。


「ロザリー。私は適当にその辺りで鍛錬していますので、起きたら教えてください」


 唖然とした顔で転がっていったランディを見つめるロザリーにそう伝言を残し、私は自分の鍛錬をすべく歩み去った。





 ロザリーに呼ばれたのはそれから1時間ほどしてからだった。思いのほか早かったが、もしかしたらロザリーが調薬した何かを飲ませたのかもしれない。気付け薬くらいならば簡単に調薬できるしな。


「ずいぶんご機嫌な対応をしてくれたな」

「お気に召してもらって幸いです。自分から戦うと言っておいてあまりにも隙だらけでしたのでつい手が出てしまいまして」

「まあ良い。確かに俺に隙があったのは確かだしな。じゃあ改めて行くぞ」

「いつでもどうぞ」


 低い姿勢でこちらへと駆けてくるランディを冷静に見つめながら突き出されたその拳をいなしていく。私自身、魔力を纏うことで人並み外れた力を出すことが出来るが、体重差だけはいかんともしがたい。

 ソドスとの訓練においてもこの体重差を利用されて何度も良いように扱われてきた。単純な力比べであれば私のほうが圧倒的に強いのにも関わらずだ。だからこそソドスにはそれを意識した戦い方をしろと何度も教え込まれている。


 地面に足を埋めて強制的に動かないようにするという最終手段もあるのだが、今回に関してはまともに打ち合ったり、組み合わないことにした。もしそうしたとしてもダメージを負うことはないだろうが、体重差で押されたり体勢を崩される可能性はあるからな。


「ハッ!」


 ランディの拳は重く、そして早い。普段の私と遜色ない程度には強いだろう。だがそれではソドスには及ばない。獅子族特有のしなやかな動きには特筆すべき点があるがそれでも対処するだけなら十分に余裕が有る。

 幾多の攻撃をいなし、カウンターで蹴りを放つ。身長差的にちょうど股間の位置になってしまったが特にそういった意図はない。まあ別に潰れても回復させればなんとかなるだろうとは考えたが。

 ランディは手を突き出して私の蹴りを防いでみせた。その反動で私も若干後退する。もう少し軸足の角度を調整して地面に力をかけるべきだったかもしれないな。


「恐ろしいことを真顔でするな。潰れたらどうするつもりだったんだ?」

「きっと防ぐと信じておりましたので」

「心にもないことを」


 ランディの口の端がニヤリと上がっていく。もうしばらく付き合う必要がありそうだな。まあランディくらいの実力があれば普通に1人で自己鍛錬しているよりも良い経験になるだろうから問題はない。

 構えるランディに向けてこちらも腕を前に出して攻撃に備える。そんな私にランディは楽しそうに笑った。


「ちょっと本気を見せてやる」

「どうぞ、見せられるものなら」


 次の瞬間、動き出したランディのその速度は明らかに今までとは一線を画す速さになっていた。

この後書きは本編のイメージを壊す恐れがあります。そういう事が嫌いな方は飛ばして下さい。


【お嬢様と従者による華麗なる後書き】


(●人●) 「では、前回に引き続いて今回はれおんはるとの専属メイドの……」

(╹ω╹) 「やめてください!」

(●人●) 「では、叔父の息子のその又従兄弟の友人の……」

(╹ω╹) 「それはもはや他人ですよね」

(●人●) 「その親友の娘の嫁が……」

(╹ω╹) 「娘の嫁ってどういうことですか!?」

(●人●) 「好きになったら男も女もないらしいぞ」

(╹ω╹) 「複雑! いろんな意味で複雑すぎますって」

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わりとゆるゆるな現代ダンジョンマスター物です。殺伐とはほぼ縁のないボケとツッコミのあるダンジョンの日常を描いています。

「攻略できない初心者ダンジョン」
https://ncode.syosetu.com/n4296fq/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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