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シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む  作者: ジルコ
第三章 シンデレラになった化け物は新たな運命を歩む
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第75話 次代を継ぐ者たちの交流

 その日の朝からレオンハルトは苛ついていた。いや、元々機嫌が良かったわけではなかった。

 母親であるギネヴィアに足らないものがあると言われて連日ダンジョンを探索することになったと思ったら、いきなり現れたランディに状況を引っ掻き回されたのだから当たり前だ。そして今の状況もそれに拍車をかけていた。


「なあ、これに意味があるのか?」

「さあな?」


 スカーレット城の庭の芝の上に寝転がり、ランディと男2人でただ流れる雲の姿を眺めているのだ。レオンハルトが何を聞いてもランディは、はぐらかすばかりでちっとも答えようとはしなかった。それがさらにレオンハルトの神経を逆なでした。

 既にレオンハルトのランディに対する口調は相手を敬うものではなく、かなりぞんざいなものになっている。しかしランディとしてはその方が望ましかったのでそのことに対して特に何も言うことはなかった。


 言葉もなく、ただただ時間のみが過ぎていく。隣で気持ちよさそうに寝転がるランディへと憎々し気な視線を向けながらレオンハルトは大きく息を吐いた。そんなわざとらしい態度にランディがちらっと横目でレオンハルトを見つめる。


「なんだ?」

「だからこれに意味はあるのかと聞いているんだ?」

「意味ねぇ……逆にお前はなんだと思ってんだ?」


 聞き返されたレオンハルトはしばらく考えを巡らせ、そして首を横に振った。


「私にはわからない。ユーファ大森林では常識なのかもしれないが。すまないが私に教えてくれないか?」

「はぁ? お前、馬鹿じゃねえの。ただ寝転がっているだけだろうが」

「なっ!?」


 あまりと言えばあまりなそのランディの言葉にレオンハルトが言葉を失う。そしてふつふつと怒りがわいてきたのかその顔が徐々に赤く染まり始めた。


「では何か。私はただお前と寝転がっていただけだというのか?」

「それ以外に言いようがねえよな」

「ふざけるな!」


 レオンハルトがランディの胸倉を掴む。普段の冷静なレオンハルトであればそれがどのような危険をはらんでいるか理解し、我慢ができただろう。しかし今のレオンハルトはそのことに考えが回らないほどに苛立っていた。

 ランディが掴まれた胸辺りをチラッと見つめ、そして楽しそうにレオンハルトを見返すと服の裾を引っ張りあっさりとその手を外した。


「お前は本当に余裕がねえよな」

「なんだと!?」

「あー、言い方が悪いか。こういう時ってなんて言うんだったか」

「何を言っているんだお前は?」


 がしがしと頭を掻きながら困った顔をするランディの姿にレオンハルトも毒気が抜かれたように勢いを落とす。しばらく悩み続けるランディをレオンハルトが眺めると言う状態が続き、そして……


「あー、やっぱ俺はこういうの苦手だわ。とりあえず殴られとけ」

「かはっ!」


 いきなり殴り掛かってきたランディに反応することが出来ずレオンハルトが殴り飛ばされ地面を転がった。地面に倒れ伏すレオンハルトを眺めながらランディが自分の考えは間違っていなかったと満足げにうなずく。

 ごほっ、ごほっと咳き込みながらレオンハルトが立ち上がる。その目には明らかな敵意が浮かんでいた。


「おー、そんな目もするんだな」

「お前は何がしたいんだ?」

「んっ、気づかせてやろうと思ってな。とりあえず軽く殴りあうか」

「それはちょうど良い。私も少しお前を殴りたくなってきたところだったからな」


 2人が気勢をあげ、お互いに殴りあい始めた。もちろん身体能力で勝るランディが有利であることに変わりはないが、それでも堅実に防御し鋭いカウンターを決めるレオンハルトも負けてはいなかった。

 しばらくの間殴り合いは続き、そして2人の距離がいったん離れる。荒い息を吐くレオンハルトを見ながらランディが口から赤い唾を吐き捨てた。


「案外強いんだな」

「徒手での訓練も受けているからな」

「そうなんだよな。こうなれば強いんだがな」

「先ほどから何を言っているんだ」


 残念そうに見つめてくるランディの姿に意味のわからないレオンハルトがイライラとしながら問いかける。ランディが軽く頭を振り、そして話し始めた。


「クリスとクリスの護衛の2人、そしてお前。普通に戦えばおそらく大きな実力差は無い。まあ相性と時の運しだいってやつだ」

「まあ、そうだろうな」


 レオンハルト自身もこれまでの探索で3人の実力を測っていた。物理、魔法それぞれに特化したシエラとアレックス、そして両方バランスよく使えるクリス。レオンハルトより勝っている点もあるが、逆にレオンハルトの方が有利な点も少なくないと判断していた。

 勝負したとしても一方的な展開にはならないだろうと考えていたのだ。その点ではランディの判断と一致していた。


 しかしランディが次に続けた言葉はそんなレオンハルトの考えとはまったく違うものだった。


「ただ、お前たちの中で最も弱いのは確実にお前だ、レオンハルト」

この後書きは本編のイメージを壊す恐れがあります。そういう事が嫌いな方は飛ばして下さい。


【お嬢様と従者による華麗なる後書き】


(●人●) 「殴り合うことでしかわかりあえんとは、男と言うのは馬鹿な生き物だな」

(╹ω╹) 「常にバイオレンスを地で行っているお嬢様が言うと妙な説得力がありますね」

(●人●) 「なにを言っているんだ。私は常に話し合いでの解決を目指しているぞ」

(╹ω╹) 「ええー」

(●人●) 「文句があるのか? よし、話し合い(物理)するか」

(╹ω╹) 「全力でお断りします」

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わりとゆるゆるな現代ダンジョンマスター物です。殺伐とはほぼ縁のないボケとツッコミのあるダンジョンの日常を描いています。

「攻略できない初心者ダンジョン」
https://ncode.syosetu.com/n4296fq/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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