第57話 ある人々の来訪
長らくお待たせしました。更新再開します。
カラトリア王国、スカーレット領の中で若干南に位置する領都コーラルは領都の名にふさわしくカラトリア王国の中でも指折りの栄えた街だ。疫病騒ぎのせいで一時期は衰退してしまうかに見えたがそれから4年経った現在では当時が嘘だったかのように人々の顔は明るく、笑い声が飛び交っている。
今までの6度のクリスとの人生においてはさすがにここまで復興は進んでいなかった。死者が今回と比べ物にならないほど多く、その中には復興を指揮すべき立場の者たちも多く含まれていたしな。
領の頭脳となるコーラルがかなりの期間麻痺したことで領内の治安も悪化し、疫病にコーラル熱などと言う名がついたことで尾ひれのついた悪評が流れ、そのせいで商人が寄り付かなくなって財政的な立て直しも遅々として進んでいなかった。
そんなスカーレット領のために奔走する父親たちの姿を見ていたからこそクリスはあそこまで自分を追い込み、そして学園と言うぬるま湯の中で無為に過ごす者たちを見下してしまったのだから。
そんなコーラルであるが、今日はいつもとは様子が違っている。私と同様の騎士服を着た者たちが姿勢を正したまま整然と立ち並び、そしてその周囲をさらに兵士たちが囲んでいる。
ビリビリとした緊張感が辺りを支配する中、若干顔をこわばらせたクリスがじっと門を見つめていた。まあこわばらせると言っても私がかろうじて気づく程度ではあるので他の者には凛として立っているように見えるだろうがな。
クリスはこの日のために仕立てた赤をベースにした上で白色を使ってバラの花を模したドレスを着こんでいる。騎士や兵士に囲まれつつ凛々しくに咲くその姿は自然と遠巻きに見る住人の目を惹きつけていた。
本当は声をかけて少しでも緊張をほぐしてやりたいところではあるが流石にこの状況では難しいな。動くなと厳命されているし。
多少やきもきしながら姿勢を正して待機していると門越しに見える街道の先に護衛に囲まれた馬車の一団が現れ、そしてその姿が徐々に大きくなっていく。
「総員、気をつけ!」
騎士団長の号令に空気がピンと張り詰める。そんな私たちの前に門で取り調べられることも全くなかった馬車が止まった。白銀の鎧を身にまとった護衛の騎士が馬車へと近づき扉を開くと、そこから1人の女と、男子が降りてくる。
赤髪の妙齢の女はゆっくりと辺りを見回し、少し懐かしそうに微笑んでいた。そしてそんな2人のもとへとクリスが近づいて行き、綺麗なカーテシーで出迎えた。そして私たち騎士もそれに合わせて膝をつく。
「遠路はるばるようこそおいでくださいました。王妃様、レオンハルト殿下」
「出迎え感謝します。久しぶりですね、クリスティ。元気だったかしら」
「はい。王妃様と殿下も御健勝のこととお慶び申し上げます」
「ふふっ、固いわね」
挨拶を交わすクリスを眺めながらギネヴィアが微笑む。その柔らかい笑みはクリスのそれとよく似ていた。まあ親族なのだから当たり前か。
私の位置からはクリスの背中しか見えないのでクリスがどんな顔をしているのかはわからないが言葉に詰まったところを見ると困惑しているのだろう。こういった挨拶は儀礼的なものだからな。ギネヴィアの対応の方が例外なのだ。
「では早速ですがスカーレット城へとご案内させていただきます。馬車へとお乗りください」
「歩いて行くから大丈夫よ」
「えっ?」
「レオン、クリスティ行くわよ」
「はい、王妃様。行こうクリス」
ずんずんと歩き出すギネヴィアに対応するために私を含めた騎士たちが即座に動き出す。ギネヴィアが歩いている手前、用意してあった馬に乗るわけにもいかないので当然徒歩だ。
困惑を隠せていないクリスの手を取りレオンハルトもその後を追って歩き出す。3人を護衛するために周囲を騎士たちが囲い、私と騎士団長が3人のそばを歩いていく。
ギネヴィアは楽しげにコーラルの街並みを眺めながら歩き、そのすぐ後を若干の困惑を残したままのクリスとレオンハルトが会話を交わしながら歩いている。予定を無視した行動に騎士たちの表情は固いのだが、その中でも古株と言われる者たちには心なしか笑みが浮かんでいるようにも見えた。
「ギネヴィア様ー」
突然、そんな声がかかり視線を向けると、ぴょんぴょんと跳ねながら大きく手を振る40手前ほどの女性の姿が見えた。ギネヴィアの笑みが深まり、そしてその女性に向かって手を振り返した。
それが契機となったのだろう。いたるところからギネヴィアの名を呼ぶ声があがりはじめ、そしてそれに律儀に手を振り返していく。王族としての振る舞いとも考えられたが、その笑みはとても自然で本当に嬉しく思っているのだと私にもわかるほどだった。
「懐かしいな」
「何がですか?」
周囲を警戒している騎士団長が漏らした言葉に質問を重ねる。自分のつぶやきが私に聞こえていたとは思っていなかったのか多少バツの悪そうな顔をしつつ騎士団長が鼻を軽く掻いた。
「こうしてギネヴィア様のわがままに振り回されることがだ」
「そうなのですか?」
「ああ。お前のように若い騎士たちには知らない者もいるだろうがな。ギネヴィア様は昔な……」
騎士団長が視線を一瞬ギネヴィアに向ける。そして口角を上げて小さな声で私にそっと伝えた。
「スカーレット家のおてんば姫と呼ばれていたんだ」
この後書きは本編のイメージを壊す恐れがあります。そういう事が嫌いな方は飛ばして下さい。
【お嬢様と従者による華麗なる後書き】
_(。_°/ 「………」
(●人●) 「愚か者のせいで長らく待たせたな」
(╹ω╹) 「お久しぶりです」
(●人●) 「なんか色々とあって小説が書ける状態ではなかったと言い訳していたがとりあえずプチッとしたら静かになったな」
(╹ω╹) 「感想とかメッセージも少しずつお返ししていくそうです」
(●人●) 「こんなののために感想、メッセージ、誤字修正してくれてありがとう」
_(。_°/ 「………感謝しています」
パシュン、パシュン
_(。_°/ 「………これからは2日に1度更新しま……」
パシュン、パシュン、パシュン
_(。_°/ 「………」