第47話 オーク防衛戦
昨日は投稿できず申し訳ありませんでした。
野営地の中央、ヴィンセントのテントへとクリスたちは駆けていく。言葉通りヴィンセントを守る為に戦うのだから当たり前だ。そんなクリスたちの背中を見送り私は音を立てながら地面を断続的に揺らしていく崖の方向へと走った。クリスの近くにはアレックスがいるし野営地の中央ならば人数も多いはずだから多少は安全だろうしな。
セルリアン領のテントが立ち並んだ場所を突き抜ける。そして目に入ってくるのは次々と崖の上から落ちてくるオークの姿。もちろん高さがあるため今のところ落ちたオークで生きている者は少ないし、その生き残った者も後から落ちてきたオークに踏み潰されたりして数を減らしている。
しかしそれでもいくらかのオークは這いながらこちらへと向かって進み始めていた。このまま放っておけば被害が出るのは時間の問題だ。
「オ、オークが……なんで!」
そんな声にちらりと視線をやるとセルリアン領の貴族の男子が呆然と這い寄ってくるオークを見つめていた。本当に動きが遅すぎる。
関わっている時間などないためそいつを無視してオークたちの首に向かってバトルアックスを振り下ろしていく。抵抗などできるはずもないオークたちは簡単に首を飛ばされ血を盛大に噴出させながら息絶えていった。
「ひっ!」
まるで他人事のような悲鳴にいらっとする。私が何もしなければこうなっていたのはお前かも知らないのに。
「中央へいけ。スカーレット領の者が守っているはずだ」
それだけ言い、どう反応したのかも確認せずオークの対処へと戻っていく。あのまま突っ立ったままでいたとしても知ったことではない。今はこの危機を乗り越えるのが先決だ。とにもかくにも数を減らさなければ。
オークたちが落ちてきているのはおよそ20メートルの範囲だ。そこまで広範囲に広がっているわけではないので今のところは問題ない。死体の山がどんどんと積み上がっていっている状況だ。しかしこの積み上がるというのが問題なのだ。
死体が積み上がれば積み上がるほど崖としての高さは低くなり、それに応じてオークの生存率も高くなっていくのだから。
「チッ、ハンドアックスも持ってくるべきだったか」
大勢の敵から逃げつつ戦うことを想定していたためハンドアックスはテントに置いてきてしまった。今この状況であればハンドアックスの方が早く処理できただろう。まあ今更言っても後の祭りだが。柄の長いバトルアックスは威力もリーチあるのだが、その分小回りが利かないからな。
しばらくそうしてオークたちを処理し続けた。この野営地を警備していた兵士たちもやってきてオークたちへと止めをさして行っているので多少は楽になったが五体満足なオークも増えてきた。そろそろこの戦い方も終わりだ。十分時間は稼いだしな。これだけの時間があればクリスなら……
ヒュゴっという音を立てながら兵士たちが戦っていたオークたちへと魔法が飛んでいく。危ないところまで迫っていたオークたちは多少は押し戻されたがそれでも倒れたオークを踏み越えて新しいオークが向かってきている。
さてそろそろ時間だな。
「ふんっ!」
思いっきり片足を地面に踏み込み半ば埋もれさせるようにしてから黒い魔力をその足裏に集中して地面へと固定させる。これで生半可なことではこの足が動くことはない。
「いくぞ!」
バトルアックスを円を描くように振り回し、オークたちを切り裂きながら次々と吹き飛ばしていく。固定した足でその衝撃を受け止めながら何度も、何度も振るってはオークたちを留める。
私がバトルアックスを使用するにあたって一番の問題は体の小ささだ。私の5歳の体は小さく体重も少ない。軽すぎる体重というのは戦いにおいて不利だ。相手に攻撃を加えただけのはずなのに下手をすれば自分が反対方向へと飛ばされてしまったりするしな。
一応そうならないようにソドスとの訓練で戦い方の研究をしたりしてはいるのだがこの大軍を抑えるとなると戦い方を選べる状況でもない。大振りの一撃で敵を吹き飛ばしつつ確実に殺していくにはこれが最適だ。
私が持っているバトルアックスはいつかの盗賊の頭が持っていた物だ。なかなかの業物のようでソドスも感心していたくらいだから生半可な使い方では壊れる心配はない。なんで持っていたのかは不明だが、転移翼まで持っているような大きな盗賊団だったからな。そういった貴重品を運んでいる商人か冒険者から奪ったのだろう。
バトルアックスの長さはおよそ1.8メートル。私の体と合せれば2メートル程度が攻撃範囲だ。あまりにも狭すぎる。だがこれ以上の範囲を1人でカバーすることなど出来るはずもない。今でさえ続々とやってくるオークたちを切り払っていくだけで精一杯なのだから。
「邪魔だ!」
雄たけびをあげながら向かってくるオークを切り払う。次々と崖の上から落ちてくるオークたちが途切れる様子はない。報告書に書かれていた千を超えるオークと言う記述は間違っていないのかもしれない。
私に出来るのはただ私の目の前のオークたちを一歩も後ろへと進ませない。それだけだ。残りは……
「左前方、突出している部分を狙え!」
「討ち漏らしは近接で対応しなさい。魔法は戦線の維持に!」
ヴィンセントとクリスの指揮する声を聞きながら魔法がオークたちを飲み込んでいくのを横目で確認する。ふふっ、ごっそりと風の刃で削っていくのはアレックスだろう。2人の指揮がまともに機能しているうちは何とかなるはずだ。幸いにも補給物資はそれなりにあるし、個人的に保有している物もあるはずだからな。
「さて、私も負けてはいられんな。こい豚ども。格の違いというものを教えてやろう」
ニヤリと笑ってオークを挑発する。迫ってくるオークの面へとバトルアックスを叩きつけつつ、まあ私の格は全く上がっていないんだがなと関係の無い事を思い出してふっと息を吐いた。
振るう、ただ振るう。
既になんどこの行為を繰り返したのか。
私の全身はオークの返り血にまみれており、辺りは血と死の匂いで満たされている。クリスたちが下がるのに合わせて私も後退していたのだが既に私はオークの群れの中に飲まれた。クリスの声は未だに聞こえているが姿は見えない。
未だ尽きることのないオークへとバトルアックスを振るいつつ自問する。やはり選択を誤ったかもしれない。今までに落ちてきたオークの数からして千など既に超えている。報告書などというものは過大に書かれている物だと思っていたが逆だったとは予想外だ。
「くそっ、鈍い!」
バトルアックスもオークの血や油がこびりつき、とうの昔に切れ味など失っている。それを無理やり振るっているのだが少しずつ倒す速度は落ちていた。微妙な差ではあるのだが集団に囲まれた今の状況ではその差が致命的だった。
バトルアックスを振るい終わった一瞬の隙を突かれオークの拳が私の胸をすくい上げるようにしてへと突き刺さる。
「ぐっ!」
大したダメージではない。だが私の軽い体は地面から浮き上がってしまいそのまま別のオークの突進を受けて宙へと跳ね飛ばされた。
「シエラ!」
その声にちらりと視線を向ければクリスが私へと向かって必死に手を伸ばしているのが見えた。半円を描くように陣取り、兵士たちに守られながら魔法を放っているクリスたちの背後にはたくさんの怪我人が倒れていた。
限界。その言葉が頭の中を駆け巡る。
このままではクリスまで殺されてしまう。それはダメだ。アッテハナラナイコトダ。
自分が化け物だとクリスには知られたくない。だがシンデハ、イミガナイ。バケモノだと知られてもマモラなくては。クリスだけは守らないと。
「ガァアアア!」
全身を黒く覆っていく。クロク、ソマッテイク。思考が低下し意識が研ぎ澄まされていく。オークどもの動きを、魔力の流れを、視線をホンノウでリカイする。
あぁ、何て無駄の多いヤツラナンダ。ウツクシクナイ。
その時、刺すような視線を感じそちらへと目を向ける。崖の上だ。目には見えないが感じる。アレハ、アレハキライナヤツダ。アレハコロサナクテハ。
「イケ」
ちょうど真下にあったオークの後頭部を踏みつぶしそのまま高く飛び上がる。そして思いっきりバトルアックスを振りかぶって投げ飛ばした。音を立て回転しながら飛んでいくバトルアックスを追いかけ……
「お嬢様!」
「シエラ!」
その声に動きを止める。そうだ。今はこいつらを倒すのが先決だ。
近くに落ちていたテントの残骸を振り回してオークたちを蹴散す。バトルアックスが無くなってしまったのは痛いが仕方がない。まあ素手でも問題はない。
さあバケモノ同士クイアオウ。
この後書きは本編のイメージを壊す恐れがあります。そういう事が嫌いな方は飛ばして下さい。
【お嬢様と従者による華麗なる後書き】
(●人●) 「ワレワレハ ウチュウジンダ」
(╹ω╹) 「えーっと……」
(●人●) 「ワレワレハ……」
(╹ω╹) 「すみませんでした。ちゃんと突っ込みます。それでどうしたんですか、突然?」
(●人●) 「最近ここに電波が飛んでくるのだ」
(╹ω╹) 「えっと、前髪にですか?」
(●人●) 「そうなのだ、おっ、早速お便りが来たようだな」
(╹ω╹) 「お便り?」
(●人●) 「なぜ人を好きになるとこんなにも苦しいのでしょう? ふむふむ……知るか!」
(╹ω╹) 「身も蓋もありませんね」




