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シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む  作者: ジルコ
第ニ章 シンデレラになった化け物は戦争の悲劇を回避する
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第42話 オークのダンジョン

遅れました。すみません。

 ダンジョンのモンスターのスタンピード、これが起こる条件はある程度解明されている。

 ダンジョン内に誰も入らず一定期間を経過するとダンジョンから溢れてくるのだ。ただこの一定期間と言うのがダンジョンによって異なっており、クリスの読んだ本に書いてあった過去の研究者の研究では3日と言うところもあれば1か月というダンジョンもあるそうだ。

 とは言えなぜスタンピードが起こるのかと言う根本的な理由はわからずじまいだ。しかし今の私にとってはそんな理由などどうでも良い。要は出会った敵はすべて倒してしまえば良いんだからな。

 単純明快でトテモ、ワカリヤスイ。


「もろい、モロイ、もろい、モロイナァ」


 オークの豚づらに拳を叩きこみ、首のねじ折り、胴を蹴飛ばしていく。あぁ、なんてモロイんだろう。なんて弱いんだろう。

 戦術も、力もどちらも無く、あるのは勢いだけ。その巨体はただのマトなのか?


「遅い、オソイナァ!」


 こちらに棍棒を振り下ろそうとしてきたオークの頭を両手で掴み、勢いのまま地面に叩きつける。まだ動いていたので頭を蹴りつけ首が直角に曲がって動かなくなったのをチラッと確認し再び走り出す。

 少しは戦いになるかと思ったんだがな。これじゃあただの狩りだ。いやカリというより掃除のようなものか。


 その後もダンジョンの中を走り回り、そしてワタシは1つの大きな扉の前で立ち止まった。おそらくこの階層のボスがいる部屋だろう。少しは楽しませてくれると良いんだがな。

 扉を蹴りつけるとそれに反応して大きな扉がゆっくりしたスピードで開いていく。その速度の遅さにイライラする。なにモッタイブッテイルんだ。

 私が通れるほどの隙間が空いたのでそこを通り視線を部屋の中へと向ける。40メートル四方の特に変わったことのない普通の部屋だ。


「なんだ、お前か。ガッカリダ」


 視線に入ってきたモンスターの姿に肩を落とす。それはワタシが見たことのあるモンスターだった。

 その名前はオークリーダー。普通のオークたちを指揮する能力はあるし、各個の実力で言えば普通のオークよりは高い。しかし言ってしまえばそれだけだ。特筆すべきところのないただの雑魚だと言える。


 その部屋にはオークリーダー1体とそれを守るようにして矢じりの形に陣を組んでいるオーク10匹と言う編成のようだ。先頭が前衛の足止め、そして左右に広がったオークたちが後衛を襲うつもりだったのだろうか? 入って来たのが私1人だったことが意外だったのかオークリーダーの指示が出ず、オークたちも陣形を維持したまま止まっている。


「アホウどもめ」


 矢じりの先頭のオークを蹴り倒し、そのまま奥のオークリーダーへと接敵して足を刈る。そして地面へと倒れたオークリーダーの胸へとドス、ドス、ドスと拳を打ち下ろしていく。最初は抵抗を試みていたオークリーダーが次第に動きを止め、そして舌をだらんと垂れさせたまま白目をむいた。あぁ、やはりコノテイドカ。

 オークリーダーが溶けるように消えていくのを眺めつつ、残った残飯へと視線を向ける。オーク共はこちらへと棍棒を向けながら威嚇してきた。


 あぁ、ヨカッタ。タタカウキハ、アルヨウダ。


 向かってくるオーク共を殴り、蹴り、ねじって倒していく。ワタシの手も足も肘も膝も全てが致命傷を与えている。やはりザコか。つまらない、ツマラナイナ。

 しばらくしてその部屋に立っているものはワタシだけしかいなくなった。オークリーダーたちもドロップアイテムを残して消え失せる。眼前の壁がゆっくりと横へとスライドしていき下へと続く階段がその顔を覗かせた。


 アノ、サキニイケバ、モットツヨイヤツガイル。モット、モット……


 顔を歪ませながら階段に向けて歩いていく。渇きを癒したいという欲求の赴くままに脚を動かしていく。何がいるんだろうか。願わくば、強者であらんことを……


「うっ! ぐぅうぅ……」


 階段まであと一歩というところで襲ってきた激しい頭痛に両手で頭を抱えて膝をついて耐える。しかしそれでもその頭痛はしばらく治まることはなく、荒い息を吐いてじっとやりすごす。オークたちを相手にしていた時は全くかかなかった汗が全身から吹き出していく。

 そして大きく息を吐いたその時、それまでの痛みが嘘だったかのように頭痛はなくなり、頭もかなりすっきりとしていた。


「ふぅ、何だったんだ?」


 自問自答しながら頭を振るが痛みが再び襲って来るようなことはなかった。立ち上がり土のついてしまった膝を軽く払う。


「ふむ」


 部屋を見回して一人うなずく。

 この階層にいたオークたちはほぼ全て倒したはずだし、この部屋に居たボスも倒した。文献通りであれば1か月程度はスタンピードは起こらないはずだ。私たちが戦争を体験するためにここに留まるのは10日。少なくともこれで悲劇は回避できるだろう。

 その後のこのダンジョンの扱いについては少し迷うところだが、オークのいるダンジョンは肉も取れるし、上位のオークともなればドロップアイテムもそれなりのものが出てくるはずだ。誰かに発見させたほうが良いが方法がな……


 くぅー


 私の腹の虫が抗議の声を上げた。落ち着いて考え事をし始めたせいか今までは気にならなかったのだが改めて空腹感が襲ってくる。それを自覚するとさらにお腹の虫が盛大に声を上げ始めた。


「帰るか。んっ?」


 お腹をさすり、苦笑いしながら歩き出そうとして部屋の中央にドロップアイテムと共に木で出来た四角い箱がいつの間にかあることに気づく。


「宝箱……か。運が良いんだか悪いんだが」


 宝箱を目の前に少し悩む。ボスを倒したからといって確実に宝箱が出るわけではない。むしろ出ないことの方が多いと言えるだろう。宝箱の中には希少なアイテムや武器防具などが入っていることもあるので出たことは幸運と言えるのだが、罠が仕掛けられていることもあるのだ。物理的な罠であれば大抵問題なく対処できるとは思うが、毒霧などが噴射されるのは今の状態ではまずいからな。

 しかし中身は確かめておきたい。


「よし、開けるか」


 そう決めたが普通に宝箱の元へと歩み寄ることはせず、オークとオークリーダーのドロップアイテムである魔石を拾っていく。そして宝箱から少し離れた位置に立ち、宝箱目掛けて拾った魔石を投擲していく。当たることは当たるのだがなかなか思ったようにはならず少し焦れるが、残りの魔石が少なくなってきたところでうまい具合に箱の上部へと当たりその蓋が勢いよく開いた。

 しばらく静止して待つが何かが出てきたりすることもなかった。どうやら罠のない宝箱だったようだな。

 一応慎重に近づいていくとその箱の中に鎮座していたのは10センチほどの長さの蓋をされたガラス管に入った見覚えのある薄黄色の液体だった。


「ハイポーションか。微妙だな。まあ割れなかったことを喜ぶべきか」


 宝箱に入ったハイポーションを取り出し、もう用のなくなった部屋から出ていく。

 ダンジョン産のハイポーションは大怪我であっても治療できる便利な薬ではあるのだが、ダンジョンからよく出てくる物でもある。普通に市場で買うこともできるのだから宝箱から出てくるものとしてはハズレの部類である。まあこんなに浅い場所で良いアイテムが出ることのほうがまれなんだがな。


 そんなことを考えていると再びお腹がくぅーっと鳴った。体はもう我慢が出来ないようだ。確かにだんだんと思考が鈍くなっているような気がするし、だるさも感じる。早く帰ったほうが良さそうだな。

 私は足を早め、そしてダンジョンを脱出した。外はまだ暗く、天には星が輝いているのがよく見えた。

この後書きは本編のイメージを壊す恐れがあります。そういう事が嫌いな方は飛ばして下さい。


【お嬢様と従者による華麗なる後書き】


(●人●) 「キラッ」

(╹ω╹) 「お、お嬢様どうしたんですか。なにか悪いものでも……まさか拾い食いですか!?」

(●人●) 「しえらぱーんち」

(╹ω╹) 「くぼぁ」

(●人●) 「なぜそうなる?」

(╹ω╹) 「だって食事は僕が用意していますし、残るは拾い食いくらいしか………すみませんでした」

(●人●) 「まあいい。さっきのは女としての魅力を引き出す仕草だ。お前と同じ緑の髪の女が教えてくれたんだぞ。どうだ?」

(╹ω╹) 「どうだと言われても……かわいいです。拳を振り上げているところなんて特に!」

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わりとゆるゆるな現代ダンジョンマスター物です。殺伐とはほぼ縁のないボケとツッコミのあるダンジョンの日常を描いています。

「攻略できない初心者ダンジョン」
https://ncode.syosetu.com/n4296fq/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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