第103話 アレックスの決意
【2019.10.23のお知らせ】
「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」について申し訳ありませんが今週平日の投稿が難しい状況です。
何とかなるかとしばらく前から頑張っていたのですが、やっぱり無理でしたので仕事の休みが確実にある今週土曜日から投稿再開させていただきます。
読んでいただいている方には申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
赤い騎士服を着たシエラの体を粗雑にバジーレ兵が引きずっていく。引きずられていながらピクリとも動かないシエラへ兵士の視線は向けられない。その頭の中にあるのはただ王子妃の命令に従わなければという使命感だけだった。
そして兵士は最前線へとたどり着く。一度は抵抗も止み防壁の門までその前線は押し上げられたのだが、今引きずられているシエラが飛び降りた後攻撃が再開され、再びその距離は門から30メートルほどの位置にまで離れていた。
そしてシエラを引きずった兵士はその前線を抜ける。その先に広がっているのはおびただしい数の兵士の死体だった。あたかもその前線を抜ければ殺すと主張するかのように明確に生と死が分けられるその線を何のためらいもなく越えていく。
防壁の上に恐るべき速度で魔法陣が形成される。カラトリア王国の陣式魔法の欠点である発動速度の遅さをものともしない速さで。そして魔法が発動するかと思われたその瞬間、兵士が引きずっていたシエラの体を目の前に放り投げた。
魔法陣が霧散する。
「王子妃のご命令によりこの者をこれから犯しつくす。死ぬまで、いや死んでからもというご命令だ」
「「「はっ!」」」
「見せつけろ、我らが主に刃を向けた愚か者の最後を!」
「「「御命のままに!」」」
「やめろー!!」
シエラへと殺到していく兵士たちをいくつもの風の刃が切り裂いていく。その刃によって腕を落とされ、足を切断されながらも兵士たちはシエラへと群がるのをやめない。兵士たちが流す血によってその身を赤く染めながら、シエラの騎士服は乱暴に破られていき、そしてついにその身につけていた物全てを剥ぎ取られてしまった。
白い肌を赤い血に染めたシエラの裸身が衆目にさらされる。
「あぁぁあー!!」
防壁から半ば身を乗り出し、片手をそちらへと向けながらアレックスが次々と魔法を放っていく。シエラを犯そうとその下半身を晒そうとした者の首をはね、その肌に触れようとする者の腕ごと胴を切り裂いた。
無論バジーレ軍もやられてばかりではない。身をさらしたアレックスに向けて矢や魔法で対抗していた。その攻撃によりアレックスの額からはだらだらと血が流れ、そして伸ばした手にはすでに小指がなかった。しかしそれでもアレックスは自分に攻撃してくる者ではなくシエラに群がろうとしている者たちへと魔法を放ち続けていた。
兵士たちの死体が山のように積み重なっていく。敵前に晒すという命令のままにシエラの体はその上に乗せられ、まるで邪悪な儀式の生贄の如き様相を呈していた。だがそれでも群がる兵士が減ることはなく、そして……
「ぐっ」
アレックスの右耳をかするようにして一本の矢がその首筋に突き刺さった。構築していた魔法陣が消えて行き、そしてアレックスの手が力なく垂れる。自らの中の何かが消えていくのを感じつつもアレックスは必死で視線を上げた。今まさにシエラの目の前で一人の兵士がその下半身を晒そうとしているところだった。
「シエラ……ごめん。僕がもっと……」
アレックスの目の前に魔法陣が現れる。それは今まで放ったどの魔法陣より精密で巨大なものだった。10個もの緑に輝く魔法球を使って描かれるそれはまるで一枚の絵画のように美しく、そしてそれを描くアレックスの顔はどんどんと青く、そして白くなっていった。
「僕も大好きだったよ。ずっとずっと小さい時から」
アレックスの目から涙が溢れ出る。再び魔法陣が現れたことによりアレックスへの攻撃が再開されたが、それがアレックスを捉える前にその魔法陣は完成した。
魔法陣の目の前に現れたのは直径50メートルはあろうかと言う球状の竜巻だった。それはアレックスへと向かっていた攻撃を吸い込み、巻き込みながらバジーレ軍へ、今まさに犯されようとしているシエラへと向かっていった。
アレックスにはわかっていた。もしシエラに意識があったのだとしたら自分に何をしろと言うのかが。最初からわかっていたのにも関わらずアレックスは最後の最後までその方法をとることが出来なかったのだ。
球状の竜巻の向かう先にいるのはシエラや兵士だけではない。明らかに質の違う騎士たちに守られた男と女の姿をアレックスは認めていた。それが自分たちに致命的な魔法を放ってきた相手であり、そして自分の通常の魔法を防いでしまった相手だった。
シエラならば言うだろう。私に構わず全力であの王子妃を倒せ、と。しかしアレックスに全力を出せと言うことはシエラを巻き込むことに他ならなかった。
自分の手で愛する人を殺す、愛する人の望みを叶えるために。その決断を死の間際でアレックスは下したのだ。
「すぐに迎えに行くから先に待っていて。絶対に追いつくから」
そしてアレックスの放った球状の竜巻は王子妃への元へと到達し、凄まじい音とともに周囲の全てを巻き上げていった。
この後書きは本編のイメージを壊す恐れがあります。そういう事が嫌いな方は飛ばして下さい。
【お嬢様と従者による華麗なる後書き’】
(●人●) 「そしてあれっくすの最終兵器ロリコーンが発動……」
(╹ω╹) 「いやいやいや、そんな技ありませんって!」
(●人●) 「なんだと! これが通常だとでも言うのか?」
(╹ω╹) 「いえ、そもそもロリコンじゃありませんし」
(●人●) 「そうだな。私はわかっているぞ」
(╹ω╹) 「お嬢様……」
(●人●) 「私は合法ロリらしいからな。つまりお前は合法ロリコーンという訳だ!」
(╹ω╹) 「お嬢様に期待した僕が馬鹿でした」