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月曜ロードショー

作者: 三田 元

多摩川に出ると野球の玉が飛び交っている。

応援に来ている女の子が四葉のクローバーを

見つけたらしい。


「願い事が一つ叶うんだって」そういうと、

女の子は目をつぶって

お祈りのようなポーズを始めた。

「そんなおまじない叶うわけないじゃん」

という兄らしい背丈の男をよそ目に、

女の子は祈り続けている。

何をお祈りしているのかはわからないが、

僕も四葉のクローバーを探してみる。

すぐには見つからないもんだな。

そう思った矢先、

少し形の悪い四葉のクローバーを見つけた。


迷った挙句、

「家に帰ったらマシュマロが買ってありますように」と目をつぶって拝みながら願ってみた。

「おじさん何してるの?」

驚いて目を開けると

さっきまで向かうにいた女の子が目の前にいる。

「四葉のクローバーにお祈りなんて、

女の子みたいだね」


たしかに。

言い返す言葉も思いつかずに、

顔を赤らめてた僕はしどろもどろで聞く。

「君は四葉のクローバーにお祈りしないの?」

「したよ、明日の給食が

セロリ料理になりますようにって」

じゃあね。


そう言っていなくなってしまった。



夕暮れも近いので僕も家に帰ることにした。

家のドアをくぐると

マシュマロを焼いている妻と娘がいた。

焼きマシュマロはうまい。

いや、

本当にマシュマロの願いが叶ったのかもしれない。

僕の分のマシュマロはもうなかったけれど。


「おかえり。ごめんねマシュマロもうないのよ」

「いや、でもなんでマシュマロを」

「冬だからね、

暖炉で食べるマシュマロは美味しいのよ」

そう言いながら

ガスコンロでマシュマロを温めている。


とても美味しそうだ。

マシュマロの香りを漂わせた家のソファで僕は

次の日の準備もせずに眠ってしまった。



新聞受けに朝刊が入る音に起こされ、

そのまま家を出る。


途中のコンビニでマシュマロを買って、

会社のデスクで食べる。

コーヒーとマシュマロは最高だ。


とにかくプログラミングの仕事を終わらせた。

今日は調子が良い。

マシュマロパワーのおかげだ。


仕事を済ませて家に帰る最中に昨日の多摩川に

やってきたが、

野球少年たちと女の子がいないだけで、

特に変わりはない。


もしかすると。

そう思って四葉のクローバーを探して

お祈りしてみることにした。


四葉のクローバーは群生することがあるので

昨日と同じ場所を探してみる。


「ほらあった。」


早速願い事をしてみる。

「家にランボーが来ますように」

もし本当に来たら困るが。


祈り終わって家路に向かう。

多摩川を挟んでかかっている橋の向こうと

こっちに家と職場がある。


橋を渡りながら見る夕日はなかなか見ものだ。

ランボーだったら、夕日に向かってマシンガンを

乱射しているだろう。


そんな妄想をしながら家の扉をくぐると、

妻が今日の給食の話をしてくれた、

「パセリが大量に届いて大変だった」らしい。

給食の調理師をしている妻は、

なんとかパセリを使うために、

一つの料理に5枚ずつパセリをさばいたという。

わざわざ使わなくても。


娘も学校でパセリを沢山食べたらしい。

「美容のため」という娘は、

きっと妻の口癖がうつったのだろう。


昨日の女の子が言っていた「セロリ」

料理ではなかったが、あらかた当たっている。

「リ」の部分が。


それでも使い切れなかったパセリを使った夕食を

僕たちは食べる。


テレビを回すと「ウオー」と叫ぶ男が目に入る。


ランボーがいた。

テレビの月曜ロードショーに。


すげえ。

四葉のクローバーすげえじゃん。


四葉のクローバーを見直した日だった。



終わり。

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