表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

俺、貴族に指名手配されました! 1

 あれからさらに一週間が経ち、学園都市エクストラから少し離れ、今はだだっ広い荒野にいる善弥は、野宿の準備をしていると、商人が一人通りかかった。


「おや、こんな所で野宿ですかい?」


「えぇ、なにせ道も分からないもので、この先も道があるとなると厳しいのでね」


「おや、なら幸運と言ってもいいですね。この先、あと二キロぐらい進んだところに、帝都バレールがありすよ」


「本当ですか! なら、そこへ向かうとします!」


「私も向かう所なので、ご一緒にどうですか?」


「それならば是非!」


 そうして、その商人と、帝都バレールへ向かうこととなった。


「えーっと、商人さんは貴族か何かですか?」


「レンって呼んでくさい。私は貴族ではありませんよ。ただのしがない商人です……第一、貴族が商人なんかしませんよ」


「それもそうですね……変なことを聞きました、すいません」


「いえいえ、謝らなくても良いですよ! ……でも、その事を知らないとは、引きこもりかなにかで?」


「いえ、あの、それは……」


 異世界から来ましたー! なんて言えねぇし、かと言って本当に何も知らないとなるとなぁ……。


『なら、記憶喪失になった事にしておけばいい』


 おぉ、ナイスアイデア!


「自分、ココ最近で記憶喪失になってしまいまして……それも、かなり深刻でしてねぇ……」


「そ、それは言いづらい事ですね……記憶、戻るといいですね」


「はい、ありがとうございます! お優しいんですね」


「よしてください! そんな綺麗な心なんて持ってませんよ。ただの貴族に顎で使われるような下民ですから」


「貴族……」


「いいんです。こうして仕事できているだけありがたいです。他の人では、仕事にすらつかせてもらえず、強制地下労働がほとんとです。今から向かう場所でも

 、それはかなり見られます」


「そうですか……その、レンさんはご家族とかは……」


「両親は他界しました。病気でね……。それと、妻がいました」


「いました?」


「ええ。貴族がかっさらって行きましたよ。だけど、我々下民は力がない。抗えず、無抵抗なままなぶられましたよ……」


「それは、どこの町ですか?」


「そうですねぇ、ここから、約三十キロくらいの場所にある、第二帝都ミドルです」


「第二帝都? そんなのがあるんですか?」


「ここら辺では有名です。何でも、所有権を持つ貴族が、ご兄弟らしく、繋がりもかなり深い場所なんです」


「だから第二か……」


「おっと、そんな話をしていたら見えてきましたよ。あれが帝都バレールです」


「あれが……かなりデカいですね」


「はい。ほぼ貴族しか住んでませんが、所々で下民の方も見えます。ですが、ここでは無視してください」


「なぜ?」


「……ここのルールです。下民は口を開くな。許可された場合のみ喋れ。前に一度、そのルールを破ったものがおり、真っ先に処刑されてました……それを見て、仲間の方が決闘を挑んだのですが……」


「そうですか……」


「そう言えば、あなたは貴族なのですか? 見たところ、下民ってわけでも無さそうなのですが……」


「そうですねぇ……平民かな?」


「平民? そんなもの、この世界では無いのですが……」


「ま、そこは置いといて。着きましたね、バレール」


「ええ。ここから先は私語厳禁です。通るのは簡単ですが、通った後が大変ですから」


「わかりました。ありがとうございました。ここまで」


「いえいえ。ご武運を」


 その後、レンとは別れ、宿を探すことに決めた善弥は、帝都を回ることにした。


 にしてもでっけぇ……つか、宿なんかあるのかなぁ? 見たところご立派なお城があちらこちらにあるばかりで、民家なんて見当たんないぞ?


 一人ぐらいはまともな貴族がいないものか。そう思っていた矢先、とても懐かしさを感じさせる建物を見つける。


 おお、あれはまさにザ、民家! 行ってみよぉー!


 中に入ると、これまた懐かしの光景が目に入る。


 これだよこれぇ! この感じ、これこそ平民である俺にとっての休息の地だ!


 そんなことで浮かれていると、受付の奥の方から、女性の声が聞こえてくる。


「あら、お客かい? こんなボロっちい宿屋へようこそ〜。私は貴族だけど、あんまり気にしないでね! この宿の中でなら自由に喋っていいわよ!」


「こ、こんばんわ」


「あらあら、イケメンじゃない! こんな汚い宿で良ければ泊まってって!」


「はい! ここで一泊させてもらいます!」


「はいね〜! じゃ、一階の一号室を使って頂戴!」


「はい、親切にありがとうございます」


「いえいえ、ゆっくりしてってね〜」


 随分と変わった貴族だなぁ……ま、いいか。あとでゆっくり話してみよーかな!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ