理不尽冒険の始まり始まり!? 4
時間になり、試験会場へと向かう善弥は、案内人に連れられ、試験会場へ入場する。そこには、善弥と同じ年齢の者しかおらず、全員冒険者になるための技術と経験を積むためにここにいる。およその数はざっと二百人程度。この中から、三十名が選ばれる仕組みだ。
この試験の監督は、ヘルメンド=ワン本人だ。その本人が、壇上へ登壇し、マイクの前まで来ると、ザワついていた会場が静まる。
「ようこそ諸君! 私はこの学校の創設者であり試験監督のヘルメンド=ワンだ! まず初めに、ここに来ようと思った自分の腕に自身がある諸君に言いたい! この学校は、言わば冒険者育成機関だ。君たちは、この先冒険者になり、外へ出て、数々の強敵と戦うのだ! その覚悟が君達にはあるのか?」
その問いかけに、当たり前だとでも言いたそうな顔をし、不敵に笑っている。
なんだよ、執事連れたボンボンどもめが。俺なんて一人で、それもかなりダサい服装でここにいるんだぞ!? 周りからちょくちょく言われるし、俺恥ずかしい!
「良し、その顔なら大丈夫だな!」
ヘルメンドは、壇上から二百人もの受験者は見回し、善弥もそれを見ていると、なぜかヘルメンドと目が合い、善弥を見て止まった。
「そこの君!」
善弥はキョロキョロした後、俺? と言いたげな顔をして、自分に指を指す。
「そう、今自分に指を指している君だ! その格好、貴族とは思えないし、ましてや強そうでもない。顔が少し良いぐらいの君が、なぜ受験しようと思った?」
うわうっざ! なんだよ、貴族じゃなきゃ受けちゃいけないの!? そんな事言ってなかったよね!?
「いや、なんでって言われても、俺は強くなる為にここに来たんだ。それ以外に理由なんかあるのか?」
ヘルメンドは、善弥の言ったことに、笑いを堪えるが、耐えきれなくなったのか大きな声で笑いだし、周りの貴族も笑い出した。
「いやいや、失敬。あまりにも下民的な考えで面白くてな! ここにいるのは、実力のある貴族。下民が受けてはならないと言う決まりはないが、そもそも下民は入学出来るほどの金なんて無い! お前はあるのか?」
再び笑いが起こる。いやいや、お金があるからここにいるんだけどなぁ……つか、なんか言ってること意味わかんねぇし?
「まぁ良い。うだうだ話しても仕方ない! 試験の組み合わせは、くじ引きで決める! 決まるまで待機していてくれ!」
この試験は、勝ったものだけが残り、負けたものは去る。と言うルールで、三十名まで絞るらしい。その最初の相手が、デブで金髪で執事連れた、いかにも貴族らしい奴だった。
「あ、君は下民君か! いや〜、君のような弱そうな人が相手で良かったよ! それに、君武器持ってないだろ? この試験、殺しちゃダメなんてルールは無いから、君を殺しちゃってもいいよね?」
執事が持っていた、少し長めの剣を受け取り、両手で持ち、構えている。確かに実力はありそうな姿だったが、何故か負ける気がしなかった。
「では試験を始める! 戦闘開始!」
かなり広いドーム状のその会場で、それぞれよ組がその合図により、一斉に戦いを始めた。善弥の相手も、合図と共に、地面を蹴る。かなりのスピードだ。
「しねぇぇぇえ! 糞下民野郎ぉおお!!」
「早いな」
善弥は、その突進を横に躱し、前のめりになったおデブちゃんの脇腹を、地面を蹴った勢いを乗せて殴りつける。すると、そのおデブちゃんは、突進よりも速いスピードで飛んで行き、隣で戦っていた組にぶつかる。
「あれ? 俺全然力込めて無いんだけど……どして?」
戦いを壇上から見ていたヘルメンドと、周りの貴族達は、その圧倒的なまでの勝利に、顎が外れそうな勢いで口を開く。
飛んでいったおデブちゃんは気絶し、ぶつかった組の貴族も気絶している。
「お、お坊ちゃまァァァ!!!」
執事が全速力で駆け寄り、おデブちゃんを担ぎ、その場から去っていってしまった。
「……ま、俺が強かったって事で、何も悪くないと」
その後、一次試験が終わり、残り百名程度となった。そして、次の試験は、この百人で戦う、バトルロワイヤル形式での試験だ。
ヘルメンドが説明をしている中、善弥は周りの貴族達から、とても痛い視線を送られていた。
なんか、みんな俺を見ている……もしかして、俺が強すぎてかっこよく見えちゃったの!? いやん、恥ずかしい!
『お前一旦死んだ方がいいな。重度の自意識過剰だからな』
そして、長々とした説明が終わり、その十分後、二次試験が開始された。