プロローグ
この世界は、理不尽だ。
イジメられてる奴を庇えば偽善者扱い。それを見て見ぬ振りをする者もいれば、イジメに加担する奴もいる。
大人に言ったところで、信じてくれるのは両親くらい。だが、俺にその両親はいない。
先生にも相談するが、話だけ聞いて対応はしようとしない。きっと、問題を大きくしたくないのだろう。
いつからだろう。俺がイジメの対象になったのは。
それは、三ヶ月くらい前の事だ。
ある日、俺こと、柴崎善弥は、クラスでいじめられている加藤という奴を助けた。
前々からイジメられていたのだが、最初の頃は、何かのじゃれ合いか何かだと思った。が、次第にエスカレートして行き、見てられるものでは無くなった。
周りの皆も笑い、「やれやれ!」だの、「うっわ加藤キモ」などの罵声を浴びせていた。俺は耐えられなかった。
「おい加藤。お前、ここから飛び降りろよ? 生きてたらもうイジメないでいてやるよ?」
「ほ、本当……?」
「あぁ、本当だとも!」
加藤は立ち上がる。俺も同時に、見てられなくなり、立ち上がる。
「おい、その辺にしとけ。加藤も、ここ四階だぞ?」
「あぁ? 何お前、俺に文句あんの?」
こいつは……名前は言いたくねぇ。まぁ、金髪の俗に言うヤンキーだ。で、その周りにも、金髪のお仲間が五人ほど。
「流石にそれはやりすぎだろ? 死んだらどうする?」
「はぁ? 加藤が勝手に落ちるだけだろ? 俺らは関係ねぇよ?」
お仲間さんも、そうだそうだと笑う。
「はぁ……話にならん。おい加藤、やめとけ。とりあえず、こっちに……」
「ありがとう、柴崎くん……でも、いいんだ」
「馬鹿か。死ぬかもしれないんだ。そいつらの言いなりにはなるな」
「お前、偽善者ぶってんの? キモくね? 黙っとけば、お前の高校生活は楽しめたのにな?」
「目の前で人が死ぬのを黙って見てるのが、楽しい高校生活な訳ねぇだろ?」
俺は睨みつける。
「あぁ? 何睨んでんの? おい、お前ら、アイツを抑えてろ。俺が半殺しにしてやんよ」
良し。こっちに意識が移った。加藤は……良し、席に座って泣いてるな。それでいい。
両腕を抑えられ、目の前には、俺より少し小さいヤンキーのリーダー。拳を作り、大きく振りかぶる。
「死ね」
その言葉と共に、善弥に拳が飛んでいく、が、それは阻止される。
善弥は、そいつの顔を蹴り上げ、右腕を掴んでる奴を振り払い、蹴り上げた奴の顔面に顔面をぶつける。
「てめぇ!」
左腕を掴んでる奴が、殴り掛かる。が、避けてカウンターを顎に一発。撃沈。
残りの仲間が襲いかかるが、側にある机で殴りつけ、撃沈させる。ヤンキー達は伸びている。
「ふぅ……とりあえず、正当防衛ってやつだな」
顔を上げると、周りの視線は、善弥に向き、それは、お世辞にも暖かいものとは言えない。
先生が駆けつけ、倒れてる生徒に声をかける。俺は事情聴取をされ、事を説明すると、俺が怒られる。
その日を境に、俺は孤立した。仲の良かった奴も俺を毛嫌いし、周りの奴も俺を避け、いつの間にかイジメへと発展した。
唯一、助けた加藤は、人のいない所で気を使って助けてくれた。好きなアニメの話もした。ありがてぇ。
ある日、俺が家へ帰ってる最中、消防車が俺の横を走り去って行く。この方向は……まさか!?
その嫌な予感は的中。俺の家が燃えていた。
「父さん、母さん!」
善弥は、今まで大事にしていた両親の仏壇と、遺品を何とか退避させようと、消防隊員を掻い潜って家へと入る。
「早くしねぇと、父さんと母さんの宝物が!!」
家中を走り回り、宝物を掴んでは、外へと放り投げ、また探す。
あぁ、あちぃなぁ……消防隊員が声を掛けてるのか? でも、まだ家の中に……父さんと、母さんの、宝物が……やっべ、体の中が痛てぇ、喉も焼けて、息を吸うたび痛みが走る。
最後の宝物を放り投げ、体中火傷だらけになった俺は、家の中で気を失い、俺は死んだ。はぁ……やっぱり、この世の中は、理不尽だ……。
『なら、その理不尽を、お前の手で壊して見せろ』
その声が聞こえた時だった。俺は、ポツンと真っ暗闇の中に立っていた。
『お前は強い。イジメにも耐え、挫けず、そして強い。なら、お前のその手で、理不尽をぶち壊してみろ』
「はぁ? 何を言って……」
『お前は死んだ。だが、お前にはやってもらわないとならない事がある』
「俺に?」
『あぁ、お前にだ。説明している時間は無い。一つだけ、願いを聞いてやる。言え』
「話が掴めん。どういう事なんだ?」
『つまりだな、お前が好きなアニメ的展開が起きてるんだよ。わかりやすく言うとな』
「ほう? それはいいねぇ……さっき、一つだけ願いを聞くって言ったなぁ?」
『あぁ、ただし、一つだけだぞ?』
「そうかい……その前に、一つだけ訊きたい。その世界では、成長とかできるのか?」
『あぁ。まぁゲームで言うRPG見たいな感じだ。ただ、天井は無い。鍛えたぶんだけ強くなる』
「なら、これか無い。俺は、何をされても死なないようにしてくれ。それでいい」
『わかった』
そう頼んだ直後、体が白く光り、思わず目を瞑ってしまう。そして、意識が段々と薄れる中、声が聞こえる。
『頼むぞ。その世界でも、困ってる人を救ってやってくれ……』
そして俺は、意識を完全に失った。
『冒険者は最強職ですよ?』が終わりに近づいてきましたので、ここで新作投稿してみました!
更新頻度は、まだ低いですが、今書いている物が終わったら、更新頻度は上がりますので、よろしくお願いします。